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2022.10.04
セイコー プロスペックス マリーンマスター プロフェッショナル シリーズの歴史とは?【ロングセラー変遷記】vol.3
バルブなしで飽和潜水に挑む
超気密構造のプロダイバーズ
SEIKO PROSPEX セイコー プロスペックス
【マリーンマスター プロフェッショナル】
40年以上不変の個性的かつタフスタイルで人気のセイコー プロスペックス「マリーンマスター プロフェッショナル」。特許を取得した独自構造は職業ダイバーの要望から生まれた!
Original Model オリジナルモデル
1975年
画期的ケース構造をもつ初の飽和潜水仕様
世界で初めてチタン素材をケースに取り入れた飽和潜水仕様モデル。表面硬化処理を施したチタン製プロテクターをケース本体の外側に備え、最高峰の耐衝撃性とともにアイコニックなルックスも獲得。その外観から”深海の黒い顔”と呼ばれた。外装のみで当時20以上もの特許を取得。
独創的ケース構造とともに素材使いでも先進性を発揮
セイコーダイバーズの歴史は1965年に発表した国産初の150m防水モデルに始まるが、よりハイスペックでケーススタイルも独特な「マリーンマスター プロフェッショナル」のルーツは’75年に遡る。この年誕生した初代モデルは、当初から画期的な600m防水の飽和潜水仕様だった。通常こうしたプロダイバーズには、船上での加圧時に時計内に侵入したヘリウムガスを大気へ戻す減圧時に放出するエスケープバルブが備わるのだが、本作にはそれがない。そもそもヘリウムガスを侵入させないという発想から、独自の超気密構造が生み出された。ケース素材にチタンを取り入れたのも注目に値する。
1978年にはシリーズ初のクオーツモデルが登場。’80年代に入り、アラームやクロノなどの多機能を搭載したデジ・アナタイプに発展した。これらが植村直己氏を筆頭に数々の冒険家や登山隊に使用されたことで、同シリーズの信頼性は確実なものとなる。そして’86年、裏蓋一体型のケース構造と特殊パッキンにより、ついにその防水性は1000mに向上。本作では外胴プロテクターに、いち早く先進素材のセラミックを使った。さらに、2013年のスプリングドライブモデル、’15年登場した最新モデルにいたるまで、独自のプロテクター構造を受け継ぎつつ、誕生から半世紀近く経た現在も着実に進化し続けている。
2014年に海洋研究開発機構が実施した調査では、同シリーズの1000m防水モデルが、水深3000mを超えても問題なく作動することが確認された(※)。その開発者が、わが国の時計メーカーであることを誇りに思いたい。
(※)すべての製品で同様の結果が得られることを保証するものではありません。
【1978年】シリーズ初のクオーツを採用した飽和潜水用600m防水ダイバーズ。1978年に日本大学隊および、冒険家の植村直己氏が北極探検時に使用。さらに1983年、海洋科学技術センター(現・海洋研究開発機構)の潜水調査船「しんかい2000」で水深1062mまで潜航し、無事帰還を果たすなど、多方面で高い信頼性が証明されている。生産終了。【変更点】機械式モデルと同じ太い針を動かすため、トルクの大きいクオーツムーブメントを初搭載。また、3時位置がデイデイト表示となり、ベゼルの一部やリューズにゴールド色の硬化処理が施された。
【1982年】アラーム、クロノグラフ、2カ国表示などを搭載した1982年発表のクオーツモデル。アナログとデジタルのハイブリッドスタイルで話題になった。'88年の日中ネパール共同隊によるエベレスト登頂などに活用された。生産終了。
【1986年】セラミック製プロテクター装備の飽和潜水用1000m防水モデル。シリーズの特徴となる外胴プロテクターに、世界で初めてセラミック素材を採用した。またケース本体には軽量かつ耐食性に優れたチタン素材のワンピース構造を継続採用。これにより当時としては画期的な1000m防水を実現している。生産終了。【変更点】プロテクターの素材がチタンからセラミックに変更。基本デザインは変わらないが、全体がより力強いスタイルになった。また、ワンピース構造にすることで、防水性を600mから1000mへと向上させた。今でこそ1000m防水の腕時計は珍しくないが、セイコーではすでに1980年代にこれを達成していた。それを支えるのが、独自開発のL字形ガラスパッキンと裏蓋のないワンピースケース構造だった。
【2013年】2005年、すでにスプリングドライブ機構のダイバーズは発表されていたが、この年、外胴プロテクターシリーズにも同機構搭載の「SBDB008」(完売)が登場。伝統的な外胴プロテクター構造を受け継ぎながら、深海や宇宙といった温度変化の激しい環境でも確実に駆動する独自システムにより、さらなる進化を果たした。生産終了。【変更点】セイコー独自のスプリングドライブを採用。外胴プロテクター、ケース本体ともブライトチタン製で、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)と呼ばれる表面硬化処理を施すとともに、ブラック×ゴールドの伝統のカラーリングも踏襲している。
スプリングドライブ機構を守るのは、やはりシリーズの肝である外胴プロテクター構造。硬質なブライトチタン製ケースをDLC加工の外胴プロテクターで覆い、さらにL字形ガラスパッキン、スクリューバックなどを採用することで600m防水を確保。
【2015年】「マリーンマスター プロフェッショナル SBDX014」。飽和潜水用のプロ仕様ながら、随所にPGカラーが施されタウンユースにも合わせやすい。自動巻き。ケース53.5×53.4㎜。チタンケース。シリコンストラップ。1000m防水。生産終了。【変更点】PGカラー×ブラックの組み合わせは、このシリーズでは初。また新開発のルミブライトの採用で、針やインデックスなどの発光時間が、それまでの1.6倍になった。
【2020年~】その特徴的な外観と防水性能を今に受け継ぐのが、「セイコー プロスペックス マリーンマスター プロフェッショナル SBDX038」だ。セラミック製の外胴による優れた耐衝撃性能と耐傷性は、深海での作業に心強い。さらにケースにはチタン、逆回転防止ベゼルには独自のエバーブリリアントスティールを用い、耐食性にも秀でる。自動巻き。ケース53.5×53.4㎜。チタンケース。シリコンストラップ。1000m防水。44万円。