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2024.02.22
【CEOインタビュー】レイモンド・ウェイル「ミレジム」がGPHGを受賞
その魅力をエリー・ベルンハイムCEOに直撃!
2023年末に開催されたGPHG(Le Grand Prix d’Horlogerie de Genève/ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ)のチェレンジ賞を制したのは、レイモンド・ウェイルの「ミレジム」だった。来日した同メゾンのトップ、エリー・ベルンハイムCEO氏に、その時計の魅力について、聞いてきました!
編集部 ようやく、と言いますか我々にとっても念願のインタビューです!
エリー氏 と、言いますと?
編集部 スイスのバーゼルワールドは、残念ながらもうなくなってしまいましたが、かつて1階のメインフロアに出展していたブランドで、日本に正式展開していなかったブランドは、チューダーとカール F. ブヘラとレイモンド・ウェイルぐらい。その後、チューダーとブヘラは日本導入されたので、最後まで謎多きブランドだったのが、レイモンド・ウェイルでした。よくショーケースのガラス越しに時計をチェックしていたんですよ。
エリー氏 なるほど、そういうことでしたか。我々にとっても日本でビジネスをできることは、光栄なことです。とても大きなマーケットですからね。
編集部 エリーさんは、レイモンド・ウェイルの3代目。今、時計業界でファミリー企業のブランドは、とても少ないですよね。
エリー氏 はい、ファミリー企業で、しかも完全に独立しているブランドとなれば、数えるほどしかありません。ジュネーブに本社を置くブランドだと、パテック フィリップとショパールぐらいでしょうか。
編集部 少ないですね〜。大きな波に立ち向かうのは、大変だと思いますが、それでも昨年、GPHGのチャレンジ賞を受賞しました。
エリー氏 我々にとっても全く予想していなかったので、ほんとに年末のサプライズでした。チャレンジ賞というのは時計の小売価格が決まっていて、2,000スイスフラン(約35万円)以下の時計だけがエントリーできます。レイモンド・ウェイルは、その価格帯の時計にこだわって時計作りをしているので、努力が報われた感じですね。
編集部 いま、30万円前後の秀逸な機械式時計って、ほんとに、ない!
エリー氏 100万円以上の時計を販売するのも大変ですが、30万円ゾーンで成功するのは、もっと大変です。まずサプライヤーと友好な関係を時間をかけて築く必要がありますし、数とクオリティのバランスを見極めることが重要です。
編集部 ではさっそく、チャレンジ賞を受賞した新作「ミレジム」のことを、聞いてもいいですか。
エリー氏 この腕時計がイメージしているのは、1930年代の腕時計です。特徴としてはセクターダイヤルが、その年代の意匠ですね。
編集部 セクターダイアル?
エリー氏 ダイアルの真ん中を見てください。中央にクロスする線がありますよね。これがセクターダイアル。
編集部 なるほど。クロスのラインもダイアルのアクセントになっていますが、何よりこのダイアル、シンプルなのに奥深いと言いますか……。
エリー氏 内側と外側のサークルで色のトーンを変えていますが、同系色でまとめているので、スッキリと見えるはずです。でもよく見てださい。仕上げも変えているんですよ。真ん中は縦筋のヘアライン、外周のリングは、同心円の模様が入っています。
編集部 本当だ、芸が細かい。しかもちょっと膨らんでいる?
エリー氏 そうです。ボンベダイアルになっています。横から覗いてみてください。分針もその曲線に沿って曲げています。
編集部 エリーさん、なかなかの時計オタクですね。オタクといえば、ミレジムは同じコレクションでスモールセコンドとセンターセコンドの2種を用意していますよね。デイト表示の「アリ・ナシ」はよく聞きますけど、秒針を2種類ってなかなかマニアック。
エリー氏 時計好きの人は、秒針のスタイルには、こだわりのある人が多いのではないでしょうか。ダイアルで唯一、目に見えて動いているパーツですし。
編集部 ダイアルも綺麗ですが、そのダイアルカラーとマッチしたストラップもお見事。
エリー氏 質の良いカーフ素材ですが、ステッチにも注目してください。これもやはりヴィンテージウォッチを意識していますが、ラグの下の部分と、それから剣先部分にも“Weil”のWを表現したステッチが入っています。こうした細かいこだわりを限られたコストの中で達成していくことが、実はとても大変なんです。
編集部 大きすぎず、小さすぎず、サイズ感も日本人のジャストサイズ。
エリー氏 スイスでも今、トレンドは「小さい時計」です。ミレジムは直径39.5㎜ですが、あまり小さくしすぎると、ただのレトロな時計になってしまうので、クラシックな路線を守りながらも、しっかりと現代の時計に見えるサイズにしています。フィット感も抜群ですよ。
編集部 ムーブメントは、セリタ製ですか?
エリー氏 はい、セリタ製のムーブメントです。品質、精度、安定性、あらゆる面で、ともて満足しています。長い付き合いなので、供給に関する不安は、ないですね。
編集部 最近は、時計入門者に自信を持ってお勧めできるエントリー時計がめっきりなくなってしまいましたが、ミレジムのクオリティの高さと、こなれた価格は、人生1本目の高級時計にお勧めしたくなります。
エリー氏 そう言っていただけると光栄です。
新作「ミレジム」のバリエーション
2930-STC-60001。34万1000円。
2925-STC-60001。28万6000円。
2925-PC5-65001。30万8000円。
編集部 話は変わりますが、エリーさんのプロフィール写真には、チェロが写っていますが、エリーさんは、チェリストなんですか?
エリー氏 はい、クラシック音楽が大好きで。ただチェロは1日でも練習をサボると指の感覚を取り戻せなくなってしまうため続けるのが難しく、得意なのはピアノです。
編集部 レイモンド・ウェイルは、音楽業界とのコラボレーションも意欲的ですよね。
エリー氏 時計メゾンとのコラボといえば、モータースポーツなどが多いようですが、ウチの時計の場合は、クラシック音楽やジャズとの相性が良いと感じています。1980年代に先代が残した「アマデウス」などは、クラシック音楽を表現した名作です。私がクラシック好きなのも、家系なのかもしれません。誰もが知っているアンバサダーや、国際的なスポーツ大会のような派手さはありませんが、情熱や感性なら音楽業界も負けていません!
編集部 エリーさんの熱い情熱はミレジムに存分に現れていますよ。本日は、ありがとうございました。
お問い合わせ:レイモンド・ウェイル公式サイト
文・構成/市塚忠義