2020.10.14

<気になるあの人は、どんな時計?>約12万フォロワー!のメンズファッション界のカリスマが選ぶ時計とは?

男性が身に着けるアイテムのなかでも、高額かつ種類も星の数ほどある本格時計。それだけに時計選びは難しいと言われています。ではセンスが良いと評判のあの人は、一体どんな時計に行き着いたのでしょうか? 出会いのきっかけから目の付け所、実際の着けこなし方など、気になるポイントをうかがいました。

「アンティーク時計の投入で、クラシックな装いは一層引き立ちます」

西口修平さん
ビームスF ディレクター

西口修平/1977年、大阪府生まれ。学生時代のアルバイトを経て、大阪のビームスに就職。その後現地にて10年の販売経験を積んだ後、東京オフィスに勤務するアシスタントバイヤーへ。2014年からバイヤーとなり現職へ。インスタグラム等のSNSでもその装い術が話題となっている、ファッション界きってのインフルエンサー。インスタグラムアカウント:shuhei_nishiguchi

「クラシック映画などを観てアンティークの虜に」

日本のファッションシーンをリードするセレクトショップとして知られるビームス。西口修平さんは同社におけるメンズドレス部門である、ビームスFのディレクターを務める人物です。企画や買い付けのスキルもさることながら、西口さんへの注目ポイントとして見逃せないのが華麗な着こなしテクニック。クラシックスタイルをベースに、モダンかつ個性的な洒落感を加えるその手腕は、インスタなどでもつとに有名で、そのフォロワー数はなんと約12万人! 多くのファッショニスタからその一挙手一投足が注目されている人物です。そんな美装の達人は、いったいどんな時計を愛用しているのでしょう?

クラシックスタイルをこよなく愛する西口さん。その彼がお洒落の道に目覚めたのはなんと大学生の頃。クラシックな服を探すのと並行して、アンティークウォッチを求めるようになったと言います。
「クラシックスタイルが好きな人は、必ずといって良いほど1940~1960年代などを舞台とした古い映画を観るもの。僕もご多分に漏れずそのクチで、ケーリー・グラントやフレッド・アステアなどの、いわゆる銀幕スターの作品を色々と観賞し、そのスタイルに憧れを持っていたんです。そういった映画をじっくり観ていくと、彼等の着けている時計は非常に小振りであることが分かります。当時の僕も真似して小振りの時計をアチコチ探したのですが、当時は2000年代であり市場の中心はデカ厚時計。“これは違うな”と考え、まずアンティークショップを探すところから始めたのです」

「あくまで時計は装いを引き立てるアクセサリーです」

アンティークウォッチと言っても種類はさまざま。西口さんが好むデザインなどはあるのでしょうか?

「“特にこのデザイン”というのはありませんが、しいて言えば機械式時計が華やかだった1940~1960年代のものを中心に選んでいます。先ほど述べた“小振り型”は、単に当時の銀幕スターが着けていたモノということもありますが、装いを全体で見たときに、ちょうど良いサイズ感であるのもポイントです。昨今は時計ばかりが目立ってしまう、大きなケースのモデルが世界的に人気の様子。しかし、僕にとっては少しトゥーマッチ。また、アンティークであっても話題ばかりが先行しているようなプレミアモデルも避けています。あくまで時計は着こなしを引き立てるアクセサリーとして考えているので、ひとつのモノばかりが目立ってしまう装いは、逆に野暮だと考えています」

「パリの香りが装いをエレガントに演出します」

そう語る西口さんがこの日、見せてくれた愛用品が1970年代製とおぼしきカルティエのタンク。
「これは行きつけのアンティークショップである江口時計店にて購入しました。以前からリクエストを入れていたモデルがようやく入荷したと連絡をいただいて。選びのポイントは独特のエレガンスにあります。スイスのアンティーク時計というと、どちらかというとエッジの目立たないデザインが多いように感じています。IWCやロレックスがそうであるように、万人に似合うフラットなデザインがそのメイン。もちろん例外も多々ありますが、このタンクは伝統あるフレンチジュエラーの傑作であり、ダイヤルにParisの文字があるように、フランス的な粋が匂い立つモデルだと思っています」

この日の西口さんの装いはダークブラウンのダブルブレステッドスーツ。インにブラックのニットを着込んだコーディネイトは、シンプルながらダンディズムが漂う装いです。
「今回のスーツはナポリ製ですが、僕はイタリアを中心にイギリス、そして時にはアメリカのウェアにも袖を通します。そんな自分がフレンチの粋を備えた時計を身に着けることで、装いに奥行きが備わるように感じています。少しだけ艶っぽさを演出したいときなど、このタンクはまさにうってつけです」

「インスタが繋いでくれた思い出に残る一本です」

どちらかというとドレス寄りの装いに合わせることが多いというカルティエのタンク。今回はカジュアルなコーディネイトに合わせる時計も別途見せていただきました。

「このタイメックスはインスタグラムで知りあった、国外の人から贈られたもの。その方はインスタにアップしている僕の投稿を見て、カジュアルスタイルに関しダイレクトメールで質問をくれた人なんです。色々と相談に乗ってあげた後、“住所を教えて”と知らせが届き、連絡したところこのタイメックスが送られてきたのです。ミリタリーテイスト漂う1970年代製のモデルは、黒文字盤も相まって男らしいところが気に入っています。調べてみたところ、この時代のタイメックスはイギリス製造のものも多く、メンズスタイルの原点でもある“英国調”にリンクする部分もちょっとしたポイントです(笑)。ミリタリーパンツはもちろん、ジーンズやチノといった土臭いパンツを軸としたカジュアルスタイル全般にマッチするモデルです。“インスタが繋いでくれた時計”ということで、僕にとって非常に思い出深い一本となっています(笑)」

構成・文/長谷川 剛(zeroyon)、写真/多田 悟

 

 

アクセサリーを両腕に着けるスタイルが西口さん流。この日の右手はエルメスのバングル“トゥアレグ”とバニーの英国製リングが目を引くコーディネイト。

1970年代のカルティエ「タンク」はゴールドモデル。文字盤6時位置の下部に小さく「Paris」の文字が入っている、いわゆる“パリ・ダイヤル”。西口さんはゴールド系ブレスレットとの重ね付けにより、洒脱な腕元を構築。少しだけ捲った袖口もさり気ない“こなし技”の一部です。

アルフォンソ・シリカのスーツはリネン製。取材日はお盆シーズンだったこともあり、薄手のニットを着込み素足にスリッポンという軽装スタイルです。しかし引き締まった色使いにより、寛ぎつつも非常にスタイリッシュ。

インスタグラムの知り合いから送られたというタイメックス。シンプルなアラビア数字のインデックスに24時間表示、小振りのケースがミリタリーの雰囲気を引き立てます。カーキのNATOバンドも絶妙なチョイスです。

アクセサリーを両腕に着けるスタイルが西口さん流。この日の右手はエルメスのバングル“トゥアレグ”とバニーの英国製リングが目を引くコーディネイト。
1970年代のカルティエ「タンク」はゴールドモデル。文字盤6時位置の下部に小さく「Paris」の文字が入っている、いわゆる“パリ・ダイヤル”。西口さんはゴールド系ブレスレットとの重ね付けにより、洒脱な腕元を構築。少しだけ捲った袖口もさり気ない“こなし技”の一部です。
アルフォンソ・シリカのスーツはリネン製。取材日はお盆シーズンだったこともあり、薄手のニットを着込み素足にスリッポンという軽装スタイルです。しかし引き締まった色使いにより、寛ぎつつも非常にスタイリッシュ。
インスタグラムの知り合いから送られたというタイメックス。シンプルなアラビア数字のインデックスに24時間表示、小振りのケースがミリタリーの雰囲気を引き立てます。カーキのNATOバンドも絶妙なチョイスです。