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2024.03.08
LVMH WATCH WEEK 2024 新作特集 ルイ・ヴィトン
2024年のLVMH WATCH WEEKは、1月末にアメリカのマイアミで開催。W&W 2024を間近にしながらも、数多くの新作が発表された。やはりLVMHグループの勢い、そして開発する力は、もの凄い。時計ファンなら誰もが気になる人気ブランドの新作を順次紹介する。
伝説の2ブランド「ジェラルド・ジェンタ」と「ダニエル・ロート」が復活
LVMH WATCH WEEKの期間中、時計ファンにとっては馴染みのある「ジェラルド・ジェンタ」そして「ダニエル・ロート」という2つの伝説的ブランドが復活を果たした。この復活プロジェクトの背景にあるのは、ルイ・ヴィトンのウォッチメイキングアトリエ「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」である。
ではまず、「ジェラルド・ジェンタ」の新作を見ていこう。現在「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」を牽引するのは、ミシェル・ナバス氏とエンリコ・バルバシーニ氏という2人の熟練時計師だ。実はこの2人、1980年代にジェラルド・ジェンタ氏とともに彼の奇想天外なアイデアを実現させてきた主要メンバー。ミシェル・ナバス氏は、ジェラルド・ジェンタ ブランドの3つの柱を「八角形のフォルム、チャイム音、ハイウォッチメイキングの複雑機構」と振り返るが、新たに復活した新作時計にも、これらの要素が存分に発揮されている。
新作「ジェラルド・ジェンタ ミニッツリピーター ジャンピングアワー レトログラードミニッツーオンリーウォッチ2023エディション」©️ディズニーは、ジェラルド・ジェンタの代名詞であるディズニーのキャラクターウォッチ。キャラクターの右手がレトログラード分針の役割を果たしフライバックするジャンピングアワーに、やはりジェンタ氏がお気に入りの複雑機構だったミニッツリピーターが組み合わされている。可愛らしいキャラクターからは想像できない、超複雑時計である。
もうひとつ復活を遂げたブランドが「ダニエル・ロート」だ。ブレゲ復興の立役者として知られる孤高の天才時計師は、やはりミシェル・ナバス氏とエンリコ・バルバシーニ氏の長き友人。「独立系時計メーカーとしてのダニエルのパイオニア精神を常に尊敬しています。彼のウォッチメイキングの哲学を再解釈できるのは光栄なこと」(ミシェル・ナバス氏)。「ダニエルの時計には、それらを特別なものにする独特な魅力と洗練された美しさがある。私たちは新たなクリエーションにおいても、彼のビジョンに忠実であり続けます」(エンリコ・バルバシーニ氏)。2人の言葉からも、特別な関係であることがよく理解できる。
メゾン復活の第一弾に選ばれたのは、ダニエル・ロートが1989年に製作した初期のトゥールビヨンだ。このモデルは、自身のブランドを立ち上げた1988年に製作したダブルフェイスのトゥールビヨンモデルを、翌年に「REF.2187/C187」として生産したモデル。トゥールビヨンという複雑機構を腕時計に初めて搭載したモデルのひとつとして知られている。オリジナルはロンドンの宝飾リテイラーを通して最初の25本が販売され、その後イタリア市場向けに20本限定のSSケースモデルも製作された。
ダイアルの下半分を陣取る巨大なトゥールビヨンが、時計の主役であることは間違いないが、この時計を唯一無二の存在にしているのが、個性的なケース形状だ。丸と四角を混ぜ合わせたような樽型のケースは「ダブルエリプスケース」と呼ばれ、この時計がダニエル・ロートのものであることを認識できる。この初代トゥールビヨンモデル「REF.2187/C187」にオマージュを捧げて新たに製作されたのが、ダニエル・ロート復活の第一弾モデル「トゥールビヨン スースクリプションDR0011YG-01」である。
オリジナルに忠実でありながらも、ダイアルのデザインやケースサイズに、わずかな改良が加えられている。ストライプ状だったダイヤルのギョーシェ装飾は、ソリッドゴールド製のクル・ド・パリのギョーシェ装飾に。また搭載するトゥールビヨンの手巻きムーブメント「キャリバーDR001」は、初代オリジナルより2㎜薄い、厚さ4.6㎜を実現している。これにともない、ダブルエリプスケースも、オリジナルより薄い、厚さ9.2㎜に仕上げられている。
2024年1月のLVMH WATCH WEEKで初お披露目となった新生ダニエル・ロートの第一弾は、本年度中に20本が製作され、その全てが納品されるという。カリスマ時計師によるトゥールビヨンの伝説が、また始まろうとしている。
お問い合わせ:ジェラルド・ジェンタ公式サイト ダニエル・ロート公式サイト
文・構成/市塚忠義