スピマスは何故アクリル風防？ サファイアvsプラどちらが好み？

【学ぶぞ、本格時計】パーツで分けて、すべてを理解しよう！

なんとなくは分かっているけど、人には説明できない……。そんな時計の専門用語を一度しっかりマスターすれば、本格時計の真の価値が見えてくるはずだ！

［ケース・外装編］
ぷっくりした膨らみで美しいケースをサポート【カーブ風防】

ヴィンテージ感だけでなく強度と視認性も高める

ダイアルを保護し、かつ視認性を得るために風防には透明な素材が使われてきた。まずミネラルガラスが用いられ、1930年代に入るとプラスチック（アクリル）風防が登場する。アクリルは柔軟性に富み、衝撃を受けると自ら歪んで受け流し、ほぼ割れることはない。第二次世界大戦時には軍用時計の風防に重用され、終戦後に一気に普及した。当時の風防にドーム型が多いのは、平面より強度が高まるからだ。

アクリル風防は丈夫であるとともに、加工が容易で安価に量産できるのが大きなメリットだ。しかし柔らかいため、傷が付きやすいのが欠点だった。

対して1970年代に登場したサファイアクリスタル風防は、極めて硬く傷がほぼ付かない。ゆえに加工が極めて難しいが、やはり技術の進歩でアクリル風防のようなドーム型や、三次元曲面までかなえられるようになった。そして復刻時計、ヴィンテージスタイルが人気になったことに伴い、ドーム型やカーブしたサファイアクリスタル風防が数多く登場するに至った。

一方、オメガの「スピードマスター プロフェッショナル」が、アクリル風防を堅持しているのは、サファイアクリスタルより割れにくいから。これはＮＡＳＡによる要望の１つだ。またナオヤヒダ＆Ｃｏ．は、カーブした四角いボックス型という複雑な形状を得るため、アクリルを用いた。

素材は違ってもカーブ風防はレトロフューチャーなだけでなく、より頑強になり、また風防越しの視野を広げ、視認性を高めることにも貢献する。

レトロな“プラ”
《アクリル風防》

透明度が高いアクリルを加工した風防。プレキシガラスとも呼ばれ、オメガが用いるヘサライトは強化アクリルを指す。傷つきやすいが、すり傷程度は研磨剤で消せる。

PANERAI（パネライ）
ラジオミール ブロンゾ

自分色に染まるケース
1930年代に生まれた初代ラジオミールの姿とサイズをブロンズで再現。風防も当時と同じアクリル製のドーム型とした。ダイアルのグリーンは、ブロンズが浮かべる緑青に似る。３日巻きのCal.P.3000を搭載。手巻き。径47mm。ブロンズケース。カーフストラップ。281万6000円。

問い合わせ：オフィチーネ パネライ
パネライ公式サイト

NAOYA HIDA&Co.（ナオヤヒダ＆Co.）
NH TYPE 5A-1

味わい深い風防越しの歪み
昨年登場した角型の新装。サファイアの２ピース構造だった風防をアクリル一体成形に改めた。プゾー7001を自社で改良したムーブメントも見応え十分。手巻き。ケース33×26mm。SSケース。カーフストラップ。完売。

問い合わせ：ナオヤヒダ＆Co.
ナオヤヒダ＆Co.公式サイト

OMEGA（オメガ）
スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル

超高耐磁に進化
月に至った唯一無二のムーンウォッチの後継機は、超高耐磁のマスター クロノメーターを取得。外観は、最初の月面着陸に同行した第４世代をモチーフとし、ヘサライト風防も受け継ぐ。手巻き。径42mm。SSケース＆ブレスレット。111万1000円。

問い合わせ：オメガ
オメガ公式サイト

硬さの“サファイア”
《サファイアクリスタル風防》

天然サファイアと同じ二酸化アルミニウムから作られる透明な人工サファイアで、硬度はダイヤモンドに次ぐ。大きな塊をカットし、研磨加工で風防に成形する。

FRANCK MULLER（フランク ミュラー）
トノウ カーベックス

麗しき曲線美
ケースとダイアルのみならず、風防も一切平面を持たない。この三次元カーブをサファイアクリスタルで高精度に作り上げるのは極めて困難。高度な技術が優美なカーブを支える。自動巻き。ケース45×32mm。18KPGケース。クロコダイルストラップ。341万円。

問い合わせ：フランク ミュラー ウォッチランド東京
フランク ミュラー公式サイト

[時計Begin 2025 AUTUMNの記事を再構成]

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