2023.06.22

マーベルとのコラボ第二弾! ロイヤル オーク コンセプトの「限定スパイダーマン」

ドバイお披露目に行ってきた!

オークション開始前に商品説明をする複雑時計部門トップのアンヌ-ガエル・キネ女史。左はフランソワ-アンリ・ベナミアスCEO。

20万ドルでスタートしたオークションは、次々と入札が入り、あっという間に300万ドルに到達した。ここはドバイの中心地にそびえ立つセントラル・パーク・タワーの最上階。壁や天井、床が粗いコンクリ―トがむき出しになった空間は、まるでコミックに登場する悪の組織のアジトのようだ。しかしオークションにかけられているのは、決して怪しい品ではなく、オーデマ ピゲのユニークピース。去る5月25日、ここには世界各国の重要顧客とメディア関係者、インフルエンサーの計約140名が集められ、マーベルとのコラボモデル第2弾、オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン “スパイダーマン”」が初披露された。そして2021年の“ブラックパンサー”と同じく、市販モデルとは異なるユニークピースが製作され、そのオークションが開催されたのだ。

オークションに出品されたユニークピース。ケースにセラミック系畜光材をはめ込んだ後、磨いてレーザーでエングレービングを施した。

前回はコロナ禍のためオンライン開催だったが、今回は念願のオフライン開催。その場所にドバイが選ばれたのは、フランソワ-アンリ・ベナミアスCEO曰く「超高層ビル都市ドバイは、スパイダーマンの世界観と強く共鳴するから」。そしてCEOに続いて、複雑時計部門トップのアンヌ-ガエル・キネ女史が登壇しユニークピースがスクリーンに大写しされると、参加者からは大歓声が上がった。それに先駆け披露された250本限定の市販モデルとは明らかに姿が違っていたからだ。

インデックスと針、ブラックスパイダーマンの目やボディも暗闇でグリーンの光を放つ。

市販モデルのモニュメントがレッド×ブルーのスパイダーマンであったのに対し、ユニークピースではブラックスパイダーマンがモチーフ。そしてホワイトゴールドケースには、セラミック系の畜光材がはめ込まれ、暗闇で光を放つ様子が怪しげであり、カッコいい。事前に行われたプレスセッションでの説明によれば、ケースに使われたセラミック系畜光材は、他社がインデックスや針で用いるものとは異なる新素材で、ケースに使うに十分な硬さと強度が備わっているとか。この素材が時計に使われるのは、世界初。またケース全体は、レーザーで蜘蛛の巣の形がエングレービングされている。その際、レーザーの熱でホワイトゴールドに含まれる銀が黒く変色するが、それをそのまま生かして黒い外観が創出された。

「ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン “スパイダーマン”」。限定250本。手巻き。径42mm。チタンケース。ラバーストラップ。価格要問い合わせ。

前回のブラックパンサーの落札価格は520万ドル。それを果たして超えられるか……そんな心配は、杞憂であった。日本からの参加者が「40ミリオン(400万ドル)」と声を上げるも、すぐに420万ドルの入札が入る。会場以外にもオンラインと電話での参加者も居て、そこからも次々と入札が続き、500万ドル、そして前回を上回る550万ドルの入札が、オンラインで入った。目標達成である。しかしオークショニアとベナミアスCEOは会場やオンライン・電話参加者をあおりまくる。すると、別のオンラインで600万ドルの入札が入り、それに続いてすぐに会場から620万ドルとの声が挙がった。そこからさらにオークショニアは、入札を促したが、声は上がらずハンマープラスとなった。ブラックパンサーを100万ドルも超える落札価格は、十分すぎる成果だろう。

スケルトンムーブメントのフレームに腕を掛けるスパイダーマンは、裏側の靴底パターンまで彫金されている。

またユニークピース以外にも、映画監督デビッド・マンデルのサインが入ったマーベルのヴィンテージコミック3冊と、来年発表予定の「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」限定モデルのシリアルナンバー1の優先購入に今年8月にオープンする「APハウス ロサンゼルス」のオープニングイベント参加権もオークションにかけられ、3点合わせた落札価格は、850万ドルに達した。この売り上げは、2つの非営利団体、ファーストブックとアショカに寄付され、ブラジル、英国、ナイジェリア、カナダ、インドネシアなど世界各地の恵まれない家庭の若者たちに均等な教育の機会を与えることに使われる。マーベルとコラボでユニークピースを製作し、オークションにかけているのは、オーデマ ピゲによる社会貢献の一環なのだ。そしてマーベルのコラボを実現したベナミアスCEOの今年いっぱいでの勇退が発表されていたが、2025年にも新たなキャラクターでのコラボモデルの登場を、力強く宣言した。

ドローン技術を駆使してドバイの夜空に巨大な時計が出現。

オークション後には、ドバイの3ツ星シェフによるディナーがふるまわれた。そして会場を後にして宿泊先のホテルに戻ると、2階のカフェテラスに参加者は集められた。興奮冷めやらぬ参加者たちは、モヒートなど冷たいカクテルを手に歓談が続く。そしてブーンと音が空から聞こえてくると、夜空に光のドットで蜘蛛の巣の形が浮かびあがった。オークションを締めくくるドローンショーの開幕である。続いてドローンの光はオーデマ ピゲ最初のアトリエの姿に変わり、スパイダーマンのマスク、今回のコラボモデルのムーブメント、そして市販限定モデルへと次々と形を変え、その度に参加者から歓声が上がった。ベナミアスCEOにとって、これが最後の大仕事。参加者1人1人と乾杯し、握手して回る姿は、明け方近くまで続いた。

お問い合わせ:オーデマ ピゲ公式サイト

取材・文/髙木教雄