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2023.07.25
ルイ・ヴィトン「タンブール」新時代の幕開け
よりスリムに、よりエレガントに
ルイ・ヴィトンの不動のアイコンウォッチ「タンブール」。誕生から20周年を迎えた昨年は、かつての多彩なアーカイブピースがフューチャーされ注目を集めたが、ついに新時代のタンブールが発表された。
タンブールを愛用する人はきっと、あの愛らしいドラム型のケースが気になって手に入れたのではないかと思う。ケース裏蓋に向かって大きくなる、他にはない大胆なフォルム。たっぷりとした厚みも、このケースの個性でもあったが、新しいタンブールは、見るからにすっきりとしたスリムケースとなって生まれ変わった。
元々のタンブールのボリューミーなケースも、その厚さとは相反するフィット感の高さを持っていた。インターチェンジャブル式のケースラグに加えて、このラグがケースのかなり下部に取り付けられているため、抜群のフィット感を実現していたのだ。
新生タンブールでは、インターチェンジャブル式のラグは採用されず、ブレスレットはケースにダイレクトに接続されている。この専用設計のブレスレットは、ルイ・ヴィトンでは初めての試み。バックルはブレスレットの内側で折れ曲がるようになっており、外側からは全くつなぎ目がわからないのも、エレガントの極みといえよう。
注目すべきは、外装ばかりではない。中に搭載されているムーブメントも、この新生タンブールの「薄型化」に大きく貢献している。なんと完全新設計のマイクロローター式の薄型ムーブメントが採用されているのだ。これは自社のウォッチメイキングアトリエ「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」によるオリジナル。
業界では有名なマスターウォッチメーカー、ミシェル・ナバス氏とエンリコ・バルバシーニ氏が、その多彩な才能を存分に発揮する「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」。これまでは主に、少量だけ生産する複雑機構のスペシャルウォッチを手がけることで知られてきたが、シンプルな自動巻きムーブメントは、ルイ・ヴィトンとしても初。ムーブメントの専用メーカー、ル・セルクル・デ・オルロジェ社と協力し、ルイ・ヴィトンが設計した初の3針自社製ムーブメントが、新生タンブールに搭載されている。
この「キャリバーLFT023」は、見た目の印象も非常に美しく、ルイ・ヴィトンらしい装飾が随所にいかされている。香箱カバーには、モノグラム・フラワーを想わせるオープンワークが施され、22Kゴールド製のマイクロローターにはLVモチーフを様式化。その下には伝統的なサーキュラーグレイン装飾が顔を覗かせている。
サンドブラスト仕上げのブリッジには、エッジ部分にはポリッシュを施すことでメリハリを。また、これまでに見たことのないモダンなムーブメントと感じるのは、赤い人口ルビーが存在しないから。その代わりに無色透明なサファイヤが採用されているが、これらはルイ・ヴィトンが考える新時代へのアプローチであり、今後は高級ムーブメントのスタンダード仕様として定着しそうな予感もする。
キャリバーLFT023は、精度面においても、抜かりない。マイクロローターは効率的な巻き上げを実現するペリフェラルギアと組み合わされ、パワーリザーブは50時間。日差は−4秒から+6秒におさまり、ジュネーブのクロノメーター検定機関によるクロノメーター認定を受けている。ムーブメントの厚さは、わずか4.2㎜。この薄型キャリバーの開発によって、新生タンブールは、ケースの厚さを8.3㎜に抑えることができたのである。
ここまで読めば理解していただけると思うが、新しいタンブールはケース、ムーブメント、ダイヤルなど、あらゆる角度からうるさく分析したとしても、かなりの時計ヲタク(時計上級者)にもぶっ刺さる内容となっている。ルイ・ヴィトンがどれだけ時計に本気であるかは、自社アトリエ「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」の仕事ぶりから十分に理解していたが、その技術力がいよいよ定番コレクションで発揮されたことは、時計ファンには嬉しい限りである。
お問い合わせ:ルイ・ヴィトン公式サイト
文・構成/市塚忠義