2023.07.31

タグ・ホイヤーが海のアイコン「スキッパー」を復刻!

40年ぶりに戻ってきた伝説のセーリングウォッチ

「タグ・ホイヤー カレラ スキッパー」。自動巻き。径39㎜。SSケース。ブルーファブリックストラップ。100m防水。84万7000円。

タグ・ホイヤーといえば、クロノグラフのパイオニア。カレラ、モナコ、オータヴィアなど、時計ファンなら誰もが知っている数々の傑作クロノグラフをこの世に送り出した。これらはいずれも、モータースポーツと深く結びついているが、クルマ(陸)だけではなく、ヨット(海)とも関わりの深い伝説のクロノグラフがあることを、ご存知だろうか。

それが1968年に誕生したセーリングウォッチ「スキッパー」だ。初期モデルはカレラのケース、後期モデルはオータヴィアのケースを採用していたが、初期モデルは生産数がわずか300本程度と少なく、マニアの間では非常に人気が高い。1968年のオリジナルに関してはオークションで8万ドルの値がつけられたことからも、その希少性が分かるだろう。

左のモデルが、1968年に誕生したオリジナルのスキッパー。復刻版同様、カレラのケースがベースになっていた。

今回のニュースは、そのオリジナル「スキッパー」が、さらに進化して復活を遂げたこと。ベースのデザインに選ばれたのは、新生カレラとして今年デビューした「グラフボックス」。ぷっくりとレトロな膨らみを持つ風防にピタリとカーブを合わせた文字盤のフリンジが、なんとも新感覚な印象を与える次世代のクロノグラフだ。

スキッパーの忠実な復刻モデルであることは、インダイヤルの個性的な配色が証明している。本来は30分計である3時位置のインダイヤルは、15分計に変更。これはレガッタレースでスタートラインを通過するまでの15分をカウントダウンするため。さらに5分単位でカラーを3分割することで、スタートまでの残り時間をより明確に表示する。グリーン、ライトグリーン、オレンジの配色も、オリジナルモデルを規範とする。

9時位置のインダイヤルには「SKIPPER」のモデル名が入る。

9時位置のインダイヤルは、12時間計だ。このインダイヤルが美しいライトグリーンである理由については、タグ・ホイヤーとアメリカズカップとの関わりを知る必要がある。タグ・ホイヤーは1940年代、ラグジュアリーなスポーツグッズを販売していたアバクロンビー&フィッチの腕時計を手がけていた。この時に誕生したのが、潮の満ち引きを知ることができる潮位付き腕時計「ソルナール」だった。ソルナールはその後、レガッタ競技用のカウントダウン機能を追加した「シーファラー」へと進化。

このレガッタウォッチがきっかけとなり、タグ・ホイヤーはアメリカズカップに出場するヨット「イントレピッド号」の公式計時機器を提供することに。イントレピッド号は全長12メートルのアメリカ製ヨットで、デッキは綺麗なライトグリーンに染まっていた。1967年のアメリカズカップで、イントレピッド号は圧倒的な強さで優勝。この優勝を記念して1968年に誕生したのが「スキッパー」である。クロノグラフのインダイヤルは、デッキの色であるライトグリーンを取り入れた。

ライトグリーンやライトブルーは近年人気のダイヤルカラーだが、タグ・ホイヤーは1960年代にすでに取り入れていた。全面ではなくインダイヤルだけ、というのが程よい。

復刻されたスキッパー「タグ・ホイヤー カレラ スキッパー」では、3分割レガッタカウンターやイントレピッド号カラーの12時間計を忠実に再現しつつも、自社製キャリバーであるホイヤー 02をさらに進化させた最新ムーブメント「TH20-00」を搭載。双方向巻き上げ式ローターを装備し、パワーリザーブは約80時間に向上している。

1968年から1983年まで生産され、多くのヨットマンを魅了した「スキッパー」が40年ぶりにカムバック。海を愛する人はもちろん、タグ・ホイヤー長年のファン、そしてクロノグラフのコレクターにとっても見逃せない存在となるだろう。

横から見ると、グラスボックスの官能的な曲線美がよくわかる。

お問い合わせ:タグ・ホイヤー公式サイト

文・構成/市塚忠義