2023.08.23

「イチバン時計物語vol.4」歴史を変えた1番最初の時計”初リューズ””初耐磁””初デジタル表示”

この発明がなければ今の時計はなかったかも!? その2

初めて〇△▢をした時計ブランドといえば……

機械式時計の歴史は技術革新の歴史でもある。現在ではスタンダードとなっているそのテクノロジーやアイディアを、世界で一番早く実現させたモデルは一体どれ? そこでソノ筋において世界一の称号を持つ傑作モデルやまつわる革新的人物を、種目別に紹介していこう。

 

⑪初めてリューズ付きの時計を作ったブランドと言えば…

\1847年ジャガー・ルクルト

アントワーヌ・ルクルトが1847年に完成させたリューズ&ボタンセッティングは、実用的かつ量産にも適した世界初となる構造。その資料とプロトタイプは、今も同社内にアーカイブとして残る。

 

現行モデル【レベルソ・トリビュート・スモールセコンド】機械式時計の発展に貢献を続けてきたジャガー・ルクルト。現在、多様なバリエーションを展開するなかで、特に代表的なのが永遠の傑作、スライド反転ケースを持つレベルソだ。このモデルは1931年初出となるレベルソ原初の味わいを色濃く残したドレッシーな手巻き式。もちろんアントワーヌの遺産でもあるリューズ構造を引き継いでいる。2本のストラップが付属。SSケース。45.6×27.4mm。手巻きキャリバー822。30m防水。154万円。

旧来の鍵巻き式から簡単かつ確実な操作に

時計内部の機構をコントロールする役割を持つリューズ。しかし懐中時代の初期にはまだ存在しないパーツだった。当初は鍵と呼ばれる付属の巻き上げ用具を使用し、主ゼンマイの巻き上げや、時刻合わせを行っていた。リューズセッティングに関しては諸説あるが、鍵を使わずリューズとダボ押し(ケースサイドに設けたボタン)の併用にてゼンマイ巻き上げと時刻調整を行う機構は、ジャガー・ルクルトの始祖であるアントワーヌ・ルクルトが1847年に発明。これにより簡単かつ確実な操作が可能となった。

※巻き上げ&調整できるリューズを最初に作ったのは1820年ジョン・アーノルド、その後1938年ルイ・オーデマという説もあり。しかしどちらも大量生産には不向きな構造で、実用化できたのはルクルトだったとか。

お問い合わせ:ジャガー・ルクルト公式サイト

 

⑫初めて耐磁時計を作ったブランドと言えば…

\1930年代ティソ

1930年代に打ち出した世界初の耐磁時計「ティソ アンチマグネティーク」。文字盤のブランドネームの下に大きく入れ込んだ機能名称が誇らしい。アラビアダイヤルも当時としてはモダン。

磁場からの影響で精度を乱す原因となるパーツの代表がテンワ。そのテンワに非磁性の素材を用いることで、影響を受けなくなることをアピール。角型の腕時計がティソらしい。

 

現行モデル【ティソ PRX パワーマティック 80】耐磁性能というティソのレガシーを受け継ぐ現行モデルのひとつがこちら。モデル名のうちの「PR」は高精度かつ堅牢、100m防水であることを表している。ケースとブレスレットの一体型デザインがスマートな洒落感を主張。搭載機械には耐磁性に優れたニヴァクロンTM製ひげゼンマイを採用。最長80時間ものロングパワーリザーブも魅力のひとつ。SSケース。径40mm。自動巻きキャリバーPowermatic 80.111。100m防水。10万7800円。

先進の磁場装置を導入し磁気に強い時計を量産

一般家庭への直流電気の供給が米国などから始まり、いよいよ電気生活が本格的に始まった1920年代。これにより機械式時計の精度は著しく影響を受ける事態となった。そこでティソはこの問題解消のため、世界初の耐磁時計「ティソ アンチマグネティーク」を1930年代に製作。同社では耐磁性をチェックするため、クロノ-エレクトロマグネットなど当時最先端の設備を導入。1938年には強度磁場発生装置を用い、テストを行いつつ優れた耐磁時計を量産する体制を実現。10年の研究を経て、全製品を耐磁化させるに至った。

お問い合わせ:ティソ公式サイト

 

⑬初めてデジタル表示腕時計を作ったブランドと言えば…

\1970年ハミルトン

写真は初期モデルとなる「ハミルトン パルサー(通称P1)」。400本の限定生産であったが、その希少性、革新性からセレブリティなどがこぞって購入。エルヴィス・プレスリーもそのなかの一人であった。

現行モデル【PSR】多くのファンのリクエストを受け、伝説の「ハミルトン パルサー(P1)」のデビューから50周年を数える2020年に待望の復刻モデルが登場。1972年にリリースされた第2世代の「ハミルトン パルサー(P2)」をベースに、アイコニックな幅広クッション型ケースを再現。ただし電気表示部分は液晶ディスプレイと有機ELを採用した7セグメントのハイブリッド式にアップデート。風防はサファイアクリスタル。SSケース。40.8×34.7mm。クォーツムーブメント。100m防水。11万6600円。

可動部品もカチコチ音もない未来派ウォッチ

回転ディスクを用い、文字盤の小窓からデジタル的に時刻表示を行う時計は20世紀初期にも存在した。しかし物理的な可動部品を持たず、また時刻を刻む音もしない、電気的デジタル時計はミッドセンチュリー以降の登場となる。1970年5月に発表された「ハミルトン パルサー」は、世界で初めてのLED式デジタル時計。赤く輝く電光表示はフューチャリスティックなクッションケースと相まって、スペースエイジを彷彿させるもの。18Kイエローゴールド製ということもあり、当時の自動車1台分に相当する$2100という極めて高額な価格となった。

お問い合わせ:ハミルトン公式サイト

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※今特集は編集部でリサーチした結果です。さらなるハイスペック、歴史を持つ時計の情報がありましたら、時計Begin Webまでご連絡ください。

文/長谷川 剛(TRS)