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2023.09.05
「イチバン時計物語vol.5」歴史を変えた1番最初の時計”初電波””初チタン””初自動巻きで宇宙”
この発明がなければ今の時計はなかったかも!? その3
初めて〇△▢をした時計ブランドといえば……
機械式時計の歴史は技術革新の歴史でもある。現在ではスタンダードとなっているそのテクノロジーやアイディアを、世界で一番早く実現させたモデルは一体どれ? そこでソノ筋において世界一の称号を持つ傑作モデルやまつわる革新的人物を、種目別に紹介していこう。
⑭初めて電波腕時計を作ったブランドといえば…
\1990年ユンハンス/

これが世界初の電波腕時計となったユンハンスのMEGA1。デザインは著名なスタジオ、フロッグデザインが担当。ブラックを基調とするフューチャリスティックなルックスがクール。
当初からソーラー発電を組み込み高い完成度を誇った
時計も電気の時代に突入した1950年代。電磁テンプ式に始まり1960年代には音叉式やクォーツ式を、そしてついに時代は電波情報をキャッチし常に正確な時刻表示が可能な電波時計へと進んだ。なかでもドイツのユンハンスは、1986年に電波時計とソーラー発電の両方を備えた置き時計を開発。その技術を進化させ、ついに1990年に世界初の電波腕時計のリリースに成功したのだ。当時のそれはドイツ国内仕様となるデジタル式電波修正時計。それまでの電気時計に比べて電波時計は受信用アンテナのスペース確保がひとつの課題だったが、受信感度を考慮しつつ、ウェアラブルに収めたユンハンスの「MEGA1」は、非常に画期的だった。
現行モデル

【マックス・ビル メガ ソーラー】電波時計の先駆ブランドは、その意志を継承し現代的な新型もリリースしている。ドイツ近代デザインの殿堂、バウハウスの理念を体現した時計シリーズであるマックス・ビル。その電波モデルは、シンプル美を極めたルックスが特徴。スタミナ抜群のソーラー電池を内蔵しており、最大3年間ものパワーリザーブを保持している。チタンケース。径38mm。多周波電波式ソーラームーブメントcal.J101.85。5気圧防水。23万4300円。
お問い合わせ:ユンハンス公式サイト
⑮初めてチタンケースの時計を作ったブランドといえば…
\1970年シチズン/

世界初の純チタンケース時計である「エックスエイト クロノメーター」。電子式となる国内クロノメーター公式認定時計の最終モデル。1970年当時の販売価格は4万5000円。
アポロ11号の偉業に触発され開発がスタート
丈夫で錆びにくく軽量なメタル素材であるチタン。しかし切削、鍛造、研磨などの加工が非常に困難なことから、時計ケースに使用されだしたのは加工技術が向上した近年のこと。それでもアルミやバナジウムなどを混合したチタン合金が主流だ。しかしシチズンでは1970年に、世界で初めて純度99.6%のピュアチタンをケースに採用したモデルをリリース。当時はチタンならではの素材特性というより、「アポロ11号の月面着陸等で脚光を浴びた宇宙素材を使用する」というロマン重視の起用だった。製造期間も短く販売数も2000個未満のレアモデルである。
現行モデル

【シチズン アテッサ エコ・ドライブ電波時計 ダイレクトフライト】シチズンにおけるチタン時計の現在型といえば、シチズン アテッサ。このモデルは月齢自動計算機能「ルナプログラム」を搭載しており、北半球からだけでなく、南半球から眺める月の形も表示可能なワールドタイム時計。ケースとブレスレットは、独自の表面硬化技術「デュラテクト」を施したスーパーチタニウムを使用。チタンケース。径41.5mm。光発電エコ・ドライブcal.H874(フル充電時2.5年可動)。10気圧防水。17万500円。
お問い合わせ:シチズン公式サイト
⑬初めて自動巻き時計で宇宙へ行ったブランドといえば…
\1985年ジン/

フラー博士と腕に巻かれたジンの「140.S(日本では142.S)」。私用で一般購入されたモデルゆえに特別な対宇宙用モデルではなかった。ベースムーブメントはレマニアの名機であるcal.5100。
特別開発品ではなく民間用時計でミッションクリア
1969年に初めて月に降り立った時計として知られるオメガのスピードマスター。しかしそれは手巻きムーブメントである。では自動巻きで宇宙に初めて到達した時計は? それがドイツブランド、ジンの「140.S(日本では142.S)」モデルだ。1985年に西ドイツ航空宇宙局を中心に行われたNASAのスペースラブ(宇宙実験室)ミッションD1。その活動に参加したドイツ人宇宙飛行士ラインハルト・フラー博士が自費で持ち込んだ時計こそ自動巻きムーブメント搭載のジン「140.S(日本では142.S)」。重力の薄いステーション内でも問題なく作動したと記録されており、1992年ロシアで実施された宇宙計画ミール92にもドイツ人宇宙飛行士クラウス=ディートリッヒ・フラーデにより「142.S(日本では142.BS)」が持ち込まれたという。
現行モデル

【140.ST.S】レマニアムーブメントの生産終了を受け、一旦はETAをベースムーブとした「140」シリーズ。しかし近年レマニア5100と同様の機能を持つジン独自開発のcal.SZ01を積んだ新生「140.ST」が登場。写真はさらに改良を加えた現行品の「140.ST.S」。SSケース。径44mm。自動巻きcal.SZ01(パワーリザーブ46時間)。10気圧防水。128万1500円。
お問い合わせ:ジン公式サイト
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※今特集は編集部でリサーチした結果です。さらなるハイスペック、歴史を持つ時計の情報がありましたら、時計Begin Webまでご連絡ください。
文/長谷川 剛(TRS)