2023.10.06

香港旅行ついでに行くもアリ!アジア最大“香港ウォッチ&クロックフェア”

今や世界最大級となった、香港ウォッチ&クロックフェア

国内外で開催されている時計見本市。その中で意気を示すのが、香港で開催される「香港ウォッチ&クロックフェア」だ。もともとはOEM向けの小規模な展覧会だったが、年々規模を拡大。2023年度は700社以上、来場者約15,000名を集める世界最大級の時計見本市に成長を遂げた。そんな香港市場の健在ぶりを象徴するかのように、2023年はコロナ禍を経て2年ぶりにフェアが開催された。時計Beginは、このアジア最大級の時計見本市に取材で参加。ここでレポートする。

2023年9月5日〜9日に開催されたフェアは、香港貿易発展局が主催するこの2つ。リテーラー向けの高級時計見本市の側面が強い「サロン・ド・ティーイー」と、時計事業に従事する全員がターゲットの「香港ウオッチ&クロックフェア」。併催イベントでありながら、全くコンセプトの異なっているのが大変興味深い。

フェアのメイン!香港や中国を中心とした時計メーカーが集う「サロン・ド・ティーイー」

本フェアのメインとなるのが、香港や中国を中心とした時計メーカーが出展する「サロン・ド・ティーイー」。今や香港というよりもアジアを代表する時計ブランドに成長した「メモリジン」や、中国を代表する「ピーコックウォッチ」が派手にブースを構える。かつては、安価というイメージの強かった中国のプロダクトだが、今や大きく変わった。それを象徴するかのように、中華圏の高級時計と聞いて真っ先に思い浮かべるブランドに、関係者たちがひっきりなしに訪問していた。

写真中央に立つのはメモリジンCEOのウィリアム・サム氏。香港ブランド発信の重鎮であり、ウォッチ&クロックフェアの副会長を務める。

会場はテーマごとに5種のゾーンに分類

サロン・ド・ティーイーの会場は、テーマに沿って5種類のゾーンが設置され、それぞれブランドや企画展のブースを展開。コンセプトが全く異なるので、来場者も飽きずに見て回ることができる。

1、職人技にスポットを当てた「クラフト トレジャーゾーン」

→機械式時計や宝飾時計など、職人技が光る時計を集めたクラフト トレジャーゾーン。香港ウォッチの雄、メモリジンや中国のピーコックウォッチなど、中華圏の高級時計ブランドが並ぶ。その一方で、新興メーカーの出展も目立った。創業間もなく、ホームページすらないブランドがサンプルを持ち込み、来場者にプレゼン。トゥールビヨンを中心としたハイコンプリケーションにダイヤモンドを組み合わせた独自性の高いデザインが多いのが中華圏らしい。

2、世界中のファッションウォッチが集まる「シック&トレンディゾーン」

フランスのLIPやデンマークのオバクなど、欧州のブランドを中心にファッション性の高い時計が並んだ。日本からも東京・浅草の時計ブランド、サン・フレイムが出展。OEM系の時計販売を中心に手掛ける同社だが、本イベントでは「グランジュール」を中心とするオリジナルブランドを積極展開した。「MADE IN TOKYO」を謳い、文字盤に複数のMOPを組み合わせることで、個体ひとつひとつに個性を与えたグランジュールのレディースモデルは特に好調だったようだ。

3、中国の独立時計師が集う「国潮ゾーン」

中国風のトレンドを意味する「国風潮流」を略した国潮の名が与えられたこちらのゾーンでは、中国の独立時計師の時計を展示。英国洋式の懐中時計を思わせるようなムーブメントを持つものやコンプリケーションなど多種多様だった。中国の独立時計師の技術力に注目が集まる。

4、欧州時計が集る「ルネッサンス モーメントゾーン」

もちろん、スイス時計も負けていない。ルネッサンス モーメントゾーンは古典的でエレガントなヨーロピアンスタイルの時計ブランドを展示。スイス以外にも、ガガ・ミラノなど欧州ブランドが並んだ。小規模なスイス製インディペンデントの時計が展示されている「スイス独立腕時計産業パビリオン」では、ブランドの創業者や時計師ら自らブースを構えていた。

5、独自路線を突っ走る「ウェアラブル テックゾーン」

スマートウォッチブランドを集めたウェアラブル テックゾーンは、出展ブランドがほとんど中国の新興ブランド。各ブランドが文字盤やベルトで独自性を競っている感じを受けたが、有名ブランドのアイコニックピースの模造品が堂々と展示されているなど、ツッコミどころが多々ある。しかし、さすが時計の貿易ハブである香港で開催されるフェアだけあり、コスパがよく良質な出店者が多いのも事実だ。

豪華絢爛なファッション&トークショーなど盛りだくさんな各種イベント

各メーカーのブースのほか、香港のリテーラーが「World Brand Piazza」の名でリシャール・ミルやボヴェ1822といったスイス製の高級時計を展示するなど、さまざまな試みが見られた。また、フロアの中心にはイベントスペースがあり、連日さまざまなイベントが行われていた。

サロン・ド・ティーイー、香港ウォッチ&クロックフェアを通じて感じるのは、中国の時計メーカーはプレミアムからラグジュアリーの価格帯に注力しており、事実、各ブースで高価格帯の機械式時計を多く見かけた。

時計本体から部品や紙袋、OEMメーカーが世界中から出展する「香港ウオッチ&クロックフェア」

もうひとつのフェアである「香港ウオッチ&クロックフェア」は、バイヤーのみならず、時計ブランドや時計師、さらに修理屋といった、時計産業に携わるすべての従事者を対象。香港・中国のメーカーはもちろん、日本のエプソンやセイコーインスツル、そして韓国メーカーもブースを構えていた。

面白いのはフロアの奥である。小さなストラップや工具屋がずらっと並んでおり、いかにも香港の見本市らしい。二十数年間出展している工具屋が、新進気鋭のメーカーの裏にブースを構えているのは、バーゼルやSIHHでは決して見られない光景だ。

ボーダーレスな出展に香港らしさが凝縮

上記以外にも、時計メーカーから機材メーカー、OEM、中古品、梱包材……ジャンルレスなのが香港ウオッチ&クロックフェアの醍醐味だ。さらに香港の関税局も出展。香港では2022年に「マネーロンダリングおよびテロリスト資金調達条例」が改正され、貴金属や宝石の取引業者は、新たに事業者登録が必要となったことを周知するための活動だ。関税局ブースの隣に、某有名キャラクターの模造品サンプルが展示してあるのには苦笑いだった。

 

創業まもない、ホームページすら持っていないようなブランドがサンプルウォッチを持ち込み、それをバイヤーが見て興奮する姿は、ウォッチズ&ワンダーズでは決して見られない光景である。そして参加するメーカーは、他のメーカーにはできない独自路線でユニークさを打ち出しつつある。香港の時計市場は、貿易の量の多さと金額に注目が集まるが、今後は質でも語れるものになるかもしれない。「メイド・イン・香港」が、世界のブランドになる日は決して遠くないのではないか。気温だけでなく、時計市場もアツく盛り上がる香港。海外進出を図りたい中小メーカーにも、ぜひ出展をお勧めしたい。

 

【追記】2024年も開催!

2024年の香港ウオッチ&クロックフェアは、9月3日~7日の開催予定だ。香港であれば中国本土と異なり入国にビザも必要ないため、興味を持った方は足を運んでみてほしい。

香港ウオッチ&クロックフェア、サロン・ド・ティーイー

開催日:2024年9月3日〜9月7日

開催場所:香港コンベンション&エキジビションセンター

住所:1 Expo Drive, Wan Chai Hong Kong

香港ウォッチ&クロック・フェアの公式HP(英語)hktdc.com/hkwatchfair

 

問い合わせ/香港貿易発展局 東京事務所 Tel:03-5210-5850 tokyo.office@hktdc.org