2023.09.29

「イチバン時計物語vol.6」唯我独尊のオンリーワン時計 ”カーブしたムーブメント””機械式とクォーツ式を融合””全部のせ”

唯我独尊のオンリーワン

他が真似できない〇△▢時計と言えば……

時計の価値を左右する大きな要素である希少性。他のメーカーでは成しえない超絶orユニーク機構を搭載した時計は、発表時はもちろん現在も注目に値するもの。ブランドの威信や理想を懸けて開発した「唯一無二時計」を厳選ピックアップ。

 

⑰他が真似できないカーブしたクロノグラフムーブメントといえば…

\2016年ブローバ カーブコレクション/

【ブローバ カーブ】世界で初めてカーブしたクロノグラフムーブメントを内蔵した画期的なモデル。クォーツ振動子やコイルに電池など、曲げられないパーツをどのように配置するか、加えてカーブ風防に干渉しないギリギリの針高調整など、2年の開発を経て2016年に登場。物理的な豊かさよりも感覚的な満足感を追求した時計として、デビューと同時に話題となった。SSケース ブラック&ローズゴールドPVD。径44mm。ブローバ独自のハイパフォーマンスクォーツムーブメント。3気圧防水。13万4200円。

スマートに着けられるジャストフィット・クロノグラフ

腕時計は手首に巻くアイテムだけに、平面ケースではフィット感がいまいち。そこから手首に沿う湾曲ケースは1950年代頃からちらほら出現した。しかし内側のムーブメントまで湾曲させたモデルは量産がネックとなり、ほとんど存在しなかった。しかしブローバではよりスマートに腕にフィットする完全カーブモデルを、パーツ数の多いクォーツ式クロノグラフでやってのけた。基板はもちろん、文字盤やケース、風防までカーブしたモデルは薄型にして滑らかな湾曲美を描く仕上がり。約85gという軽量も相まって、終日の装着でも至極快適なのだ。

サファイアガラスを用いたケースバックは、湾曲かつシースルー仕様。滑らかにカーブしつつ262KHzで振動する、ハイパフォーマンスクォーツムーブメントの姿が見て取れる。

ケースが湾曲しているモデルはこれまでにも複数存在した。しかしクロノグラフにして文字盤やムーブメントまでカーブを持たせたモデルはブローバが世界初。まさに快挙だ。

お問い合わせ:ブローバ公式サイト

 

⑱他が真似できない機械式とクォーツの長所を融合させた時計といえば…

\1999年セイコー スプリングドライブ/

スプリングドライブの初出モデルは手巻き式のcal.7R68。その後の2004年にグランドセイコー専用を目指し、72時間パワーリザーブを保持する自動巻きcal.9R65をリリース。

セイコーのみが成しえた奇跡のハイブリッド機構

機械式とクォーツ式はそれぞれに強みと弱点がある。お互いの長所を取り入れたセイコーのスプリングドライブは、時計のひとつの理想型。強いトルクで歯車を用いた機械式を動かすダイナミズム。そしてクォーツ式特有の圧倒的な振動数が生みだす高精度を合体させた独自機構が特徴だ。ゼンマイのほどける力で発電し、その電気にて水晶振動子とICを動かす機構であるため、クォーツ式時計のような電池、モーターを用いないところもポイント。1977年の構想から始まり、製品化は実に1998年。そして発売は1999年。初出の手巻き式モデル(限定500本)は世界から大いに注目された。

 

現行モデル

【グランドセイコー エボリューション9 コレクション SLGA019】グランドセイコー専用のスプリングドライブムーブメントである、約5日間のパワーリザーブを誇るcal.9RA2を搭載した新製品。グランドセイコー物作りの拠点より東南に位置する諏訪湖の水面をイメージしており、角度によって美しく表情を変えるネイビー文字盤が特徴。ケースバックからは、ローターを配したムーブメントに加え、パワーリザーブ表示が確認できる。ブライトチタンケース。径40mm。スプリングドライブcal.9RA2。10気圧防水。133万1000円。

 

次世代スプリングドライブ機として2020年に登場したcal.9RA5。その次世代機のパワーリザーブ表示を裏蓋側に配置したモデルこそこのcal.9RA2。平均月差±10秒の高精度を誇る。

お問い合わせ:グランドセイコー公式サイト

 

 

⑲他が真似できない

\2007年フランク ミュラー  エテルニタス メガ4/

4大複雑機構をはじめ、鳴り物系やカレンダー系、そして計測系まで完全網羅。総勢36もの機構や特徴を詰め込みつつ腕時計サイズに仕上げているところが驚異的。確かに盤面はぎっしりとカウンターで埋め尽くされているが、すべてシンメトリーに整理されており非常に美麗なルックス。人間の叡知を込めた傑作である。18KWGケース。42.1×61mm。自動巻き(約3日間のパワーリザーブ)。部品総数1483個。4億700万円。

超複雑メカニズムはもちろん、思い付く機構全部入り

全部入りは人類の夢。ただし機構の種類において、山ほどのバリエーションを持つ機械式時計でソレを目指すブランドは少ない。しかしフランク ミュラーは腕時計という制限の多い形状のなかに、36もの機能や特徴を詰めた驚愕モデルを2007年に発表。フライングトゥールビヨンをはじめミニッツリピーター、ソヌリ(ウエストミンスター寺院の音色)、永久カレンダーにスプリットセコンドクロノグラフといった、単体でも超複雑といえる機構を網羅しており、そのスペックはまさに現代の「マリー・アントワネット(1827年に完成した宮廷時計)」。所有できる人は間違いなく王様クラス。

 

<36機能リスト>

1.24時間アワーインジケーター

2.グランドソヌリ

3.プチソヌリ

4.ソヌリの作動停止機能を搭載(ON-OFF を任意で選択可能)

5.ミニッツリピーター

6.4つの鐘でウエストミンスター寺院の音色を演奏可能

7.グランドソヌリとプチソヌリは防水性プッシュボタン/ダイヤルにはインジケーター表示

8.ソヌリのON-OFFは防水性プッシュボタン/インジケーター表示

9.時刻合わせの際にソヌリの発動を抑止するリフティングレバーメカニズム

10.グランドソヌリ作動時はミニッツリピーターが作動できない設計

11.ソヌリが作動している間はリューズが引き出せないようロック機構

12.特異な鐘の配置先でもハンマーを作動させる動力伝達機構

13.約3日間のパワーリザーブインジケーター

14.約36時間のソヌリパワーリザーブインジケーター

15.サイレント型速度調整機(サイレント・ガバナー)

16.フライング式トゥールビヨンには、セラミック製のベアリング

17.フリースプラング式緩急調整(テン輪) にはゴールド製のチラネジ付き

18.ブレゲ式巻き上げヒゲの曲線には、フィリップス式曲線を採用

19.機械の構造が見えるブリッジの無いトゥールビヨン ケージ採用

20.自動巻上げ機構にプラチナ製のマイクロローター

21.ウエストミンスターカリオンも、プラチナ製マイクロローターにより自動的に巻上げるシステム

22.永久カレンダー(西暦年が4で割り切れる年は閏年とするプログラム)

23.曜日表示

24.月表示

25.レトログラード式の日付表示

26.セキュラーカレンダー

27.999年まで対応できる表示機構

28.うるう年表示機構

29.セキュラーイヤー表示機構

30.1000 年間でわずか1日の誤差で動作するムーンフェイズ

31.均時差表示

32.2つの第二時間帯表示

33.クロノグラフには3つのコラムホイール

34.クロノグラフにはスナップ式の分積算表示

35.クロノグラフのアワーカウンターにレトログラード式表示

36.スプリットセコンドクロノグラフ機構

お問い合わせ:フランク ミュラー公式サイト

 

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※今特集は編集部でリサーチした結果です。さらなるハイスペック、歴史を持つ時計の情報がありましたら、時計Begin Webまでご連絡ください。

文/長谷川 剛(TRS)