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2023.11.24
透明な「お花」の真ん中にトゥールビヨン ウブロと村上隆氏のコラボレーション
芸術的なサファイアクリスタル製ケース
我々のような時計専門メディアとなると、紹介するアイテムは、ただただ時計。だから時計の性格合わせて細かくカテゴリーに分けするというのが、お約束だったりする。パイロットウォッチ、ダイバーズウォッチ、クロノグラフ、3針モデル……、そんな感じだ。
ここに紹介するウブロの腕時計は、そのどれもに当てはまらない。圧倒的な表現力を持った腕時計を目の前にすると「枠に入れよう」とする考え方自体が、間違っているのだと気づく。ウブロと村上隆による世界限定50本のみのプロジェクトは、何から何までが、規格外だ。
村上隆氏の代名詞である「お花」。それがケースそのものになっている。その素材はサファイアクリスタル。サファイアクリスタルケースは加工が難しく時計のケースで採用されることは稀だが、ウブロにとっては珍しい素材ではない。これまで何度も、色鮮やかなサファイアモデルを実現している。
ただ、高級時計のケースである以上、ラインをしっかり出して磨き上げるのが鉄則。エッジを立たせた方が、透明なサファイアケースの優位性を発揮できるうえ、更なる「キラキラ感」も手に入る。では、こちらの「MP-15 タカシムラカミ トゥールビヨン サファイア」は、どうだろう。サファイアケースへのアプローチは、これまでとは、まるで逆だ。
12枚の花びらは、丸くぷっくりとした、硬度なサファイアからは想像できないほどの、柔らかなラインを形成。ボリュームがありながら、非常に繊細な質感も味わえる。ここまで話すと、村上隆氏の「ぶっ飛んだ」想像力を形にしたというユニークさが先行するが、そこは流石にスイスの名門。時計としてのメカニズムの面白さも、見事に融合させている。
真ん中にある機構は、トゥールビヨン。この時計はウブロにとって初めての、センタートゥールビヨンを搭載している。透明の魅力を最大限に活かすため、視界を遮るブリッジは、当然ない。フライングトゥールビヨンである。しかも時分針は、その下。キャノンピニオン(筒カナ)とアワーホイールは、トゥールビヨンと同軸上にセットされているのだ。
このトゥールビヨンは、手巻きモデルだが、そのパワーリザーブは2バレル仕様で、なんと約150時間。時計愛好家にはたまらない至福の「手巻きタイム」が、存分に楽しめるわけだが、巻き上げに関しても、ここで新たな試みが。USBで充電可能な巻き上げ専用のスタイラスが付属するのだ。このスタイラスをリューズにセットすれば、いとも簡単に「100回転」させられるという。
腕時計に絶対に欠かせない要素、それは安定した精度。この腕時計では、トゥールビヨンがその役割を果たしている。だが、腕時計の役割は、それだけではない。見ているだけで、幸せになれる腕時計。着けているだけで、エネルギーがみなぎってくる腕時計。ウブロと村上隆氏は、腕時計の無限の可能性を信じて、時計作りに惜しみなく時間を費やす。
お問い合わせ:ウブロ公式サイト
文・構成/市塚忠義