2023.11.28

リシャール・ミル「RM 21-02 トゥールビヨン エアロダイン」の第二弾

宇宙素材を転用した驚異のハニカム構造

2021年、かつての時計では決してみることのなかった「ハニカム構造」の地板を採用して登場し、時計関係者の度肝を抜いたリシャール・ミルの手巻きトゥールビヨンモデル「RM 21-01 トゥールビヨン エアロダイン」。その後続モデルとなる新作が発表された。

前作がカーボンTPT®︎と5Nレッドゴールドを組み合わせたケースだったの対し、こちらの新作は、主にクオーツTPT®︎とカーボンTPT®︎で構成され、透明感のある真っ白なボディが印象的だ。

ケースに使われているリシャール・ミル独自の素材は、ファンにはもう、お馴染みであろう。この時計で特筆すべきは、目を凝らすと見えてくる、ハニカム構造の地板である。蜂の巣のように無数の穴が開けられ、ムーブメントの反対側が透けて見える。

この地板にはカーボンTPT®︎を軸として「ヘインズ®️214®️合金」という素材が使われている。複雑なネーミングからしてもタダモノではない感があるが、簡単にいうとニッケル、クロミウム、アルミニウムの合金。

この合金のハニカム構造は、もともとはNASAが超音速航空機の翼のために研究していたもので、955度以上の高温で使用することを目的としており、これまで存在した従来型の耐熱鍛造合金を遥に上回る耐酸化性があるという。

もちろん腕時計の場合、そんな温度にさらされたら人間の方がひとたまりもないが、今後の人類は、例えば宇宙服を来て地球外で活動するなんてことも、あるかも知れない。最先端の素材や加工技術は、時計業界だけで生まれるものではない。

だからリシャール・ミルは、いっけん時計業界とは遠い存在に感じられる航空業界やモータースポーツと、密接な関わりを深めている。今までどの時計ブランドも考えつかなかった時計やメカニズムをリシャール・ミルが次々と生み出すことができるのは、こうした未来への投資に、時間と費用を惜しまずに費やしているからだ。

素材の話だけ終わってしまうのもなんなので、最後に搭載機能について、まとめたい。リューズ中央のボタンを押して操作するファンクションセレクターは、4時位置に(W=巻きあげ、N=ニュートラル、H=時刻合わせ)。約70時間のパワーリザーブのインジケーターは11時位置に。12時位置と1時位置の間にあるのはトルクのインジケーター。主ゼンマイの最適なテンションを可視化して伝える。

そしてダイヤルの下半分を独占しているのが、直径12.3㎜のトゥールビヨン。この複雑機構は、もはやリシャール・ミルとって、「標準」機構といっても過言ではない。リシャール・ミル史上、もっとも洗練され、そして頑丈な「R M 21-02」の第二弾。気になる限定本数は世界で50本のみとなっている。

「RM 21-02 トゥールビヨン エアロダイン」。手巻き。ケース42.68×50.12。クオーツTPT®︎+カーボンTPT®︎+チタンケース。ラバーストラップ。1億4300万円。

お問い合わせ:リシャール・ミル公式サイト

文・構成/市塚忠義