2023.12.15

ロジェ・デュブイの、かつてない緊張感に包まれた腕時計

12人の騎士に襲いかかる、過去最大の試練?

時計のダイヤルには、「12個」のインデックスがあるのが一般的。それがバーだったり、ローマ数字だったり、アラビア数字だったりして個性を競い合うわけだが、その12個のインデックスを「12人の騎士団」としたのは、ロジェ・デュブイにしか思いつかない感性と言っていいだろう。

ロジェ・デュブイがアーサー王の伝説「円卓の騎士」を腕時計で表現した「ナイツ オブ ザ ラウンドテーブル」を初めて発表したのは、2013年。直近では2022年に、12人の騎士の真ん中にトゥールビヨンをセットしたモデルを完成させ、複雑機構とアートピースを見事に融合して見せた。

その9作目となるモデルが、ついに発表された。今作のテーマは、「氷」である。12人の勇敢な騎士団の足元で亀裂する氷の緊張感が、なんともリアルに表現されているではないか。氷の下と枠のベース部分のアイスブルーは、北イタリア・ヴェネチアの「ムラーノ島」に代表される「ムラーノガラス製法」で実現。鉛を含まず、炭酸ナトリウムと砂とで生み出されたソーダガラスは、非常に鮮やかなブルーに染まっている。

さらに氷塊部分には、「透き通るような白」として有名な、フランスの伝統的なリモージュ焼きでコーティングして、見事なコントラストを実現。光沢のあるブルーとマットな白で、奥深いストーリーを語りかける。

それらを包み込むケースも独創的だ。45㎜の大型ケースに採用されているのは、ダマスカスチタン。グレート2とグレード5の積層したチタン板金を高温の炉で焼き入れし、その後ハンマーで叩いて鍛造。この鍛錬作業を何度も繰り返し、最後に「酸洗処理」を行う。酸性の溶液にチタンケースを浸すとグレード2のチタンだけが反応し、全体に波紋模様が浮かび上がるという仕組みだ。

その質感と2つと同じものがない模様は、ケースを横から見たときに、楽しむことができるが、ケースサイド全面をチタンとするのではなく、12人の騎士が横からも見えるよう、サファイヤクリスタルと組み合わせている点にも注目したい。

「時刻」というより、その時計の持つ「ストーリー」をいつまでも眺めていたくなる、アートピース。もちろん、お約束の「28本限定」となる。

「ナイツ オブ ザ ラウンドテーブル」。自動巻き。径45㎜。チタンケース。レザーストラップ。ジュネーブシールを取得するキャリバーRD821搭載。世界限定28本(ブティック限定)。4889万5000円。

お問い合わせ:ロジェ・デュブイ公式サイト

ロジェ・デュブイ 銀座ブティック TEL 03-5537-5317

文・構成/市塚忠義