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2023.12.28
伝説の男ジャン-クロード・ビバーが 自身の名前を冠したブランドを作った!!
ブランパン、ウブロをドラマチックに躍進させたあのパワフル過ぎる男、ビバー氏の最終章とは??
名門ブランパンを再興させ、ウブロを一躍大人気ブランドに押し上げるなど、数多くの時計ブランドを大成功に導いたジャン-クロード・ビバー氏が、新たな時計ブランドを立ち上げた。「これが自分のキャリアの最終章」と語る彼は、自らの名を冠す「BIVER」で何をなそうしているのか。緊急来日した氏を直撃した。
「願わくば、生きているうちに完璧にたどり着きたい」(ビバー氏)
——ブランド名を自身の名前にしたのは、どのような意味があるのでしょうか——
自分の時計に対する好みを完全に体現するブランドを作りたかったから。昔は時計師でもない自分の名前をブランド名につけるなんて馬鹿げていると考えていたけど、人生の終盤に差し掛かって考え方が変わってしまったよ(笑)。
——ご自分の好みとは?——
1点目はモダンとクラシックを両立したポストモダンな時計。見てもらえばわかると思うが、「BIVER」の時計は、他の新興ブランドに見られるような破壊的なまでにモダンなデザインではない。かといってクラシックな感じもしない。これが本当に私の作りたかったデザインなんだ。好みの2点目は、隅々の仕上げ、それもムーブメントの目に見えないところまで徹底的にこだわり抜くこと。実際、仕上げの品質に関しては、今までのどのブランドもここまで到達したものはなかったと自負しているよ。
——ビバーさんの時計プロデュースは常に“イノベーション”をキーワードにしてきたように感じます、「BIVER」のウォッチメイキングにおいて最も革新的なことはなんでしょう——
「インビジブル・ビジビリティ(見えない可視性)」を一層追求したところ。ウブロの時代に、針もインデックスもオールブラックの「ビックバン」などを出したけど、先ほども話した通り、BIVERではムーブメントの見えない側にまで徹底的にこだわり抜くというアプローチで、インビジブル・ビジリティというテーマに迫ったんだ。微細なネジに至るまですべてブラックポリッシュを施し、歯車やブリッジなどその他のパーツもポリッシャやサテン、ペルラージュ仕上げを施している。しかもこれらは全て職人の手作業。ムーブメントの見えない部分にまでこんなことを行う時計ブランドはどこにもなく、紛れもなくイノベーションだと考えているよ。
動画でわかる!? パワフル過ぎる男ビバー氏
——ネジ1本に至るまでブラックポリッシュすることで、どのような意味があるのでしょうか? 性能とは別のことですよね?——
ファンクション(性能・機能)なんてあるわけないじゃないか(笑)。そういったことはすべて忘れてくれ。これは時計にソウル(魂)を吹き込むためにやっていること。あるいは永遠性を与えるためと言い換えてもいいでしょう。たとえばピカソの絵画。オリジナル(原画)とリトグラフ(複製)は遠くで見たら見分けがつかないよね。でも近くで見たらまったく違う。本物の感動はまったく違う。見えない部分の仕上げに完璧にこだわることで、そういう、時代を超えて人々に愛される本物のアートのような価値を帯びると信じているんだ。神と違って人間のやることだから本当に完璧に達するのは難しいかもしれないけど、私は生きているうちになんとか近い領域にたどり着きたいと考えている。ちょっと哲学的な話になっちゃったね。
——お話を伺っていると、「BIVER」は、ビバーさんが最後にプロデュースする時計ブランドのような感じがしてきました——
イエス。いま私は74歳。まだまだ健康だけれど、あと15年もしたら90歳だ。これが、私が時計界で行う最後のイノベーションになると思うよ。
——最初のコレクションが積むムーブメントは、 マイクロローターの自動巻きトゥールビヨンに、 カリヨンミニッツリピーター( 3つのハンマーがあるミニッツリピーター)を搭載しています。 数あるコンプリケーションの中でなぜカリヨンミニッツリピーター にフォーカスしたのでしょうか?——
今までのキャリアの中でカリヨンを手がけたことはなかったからだ。ミニッツリピーターはもちろんあったけど、カリヨンはなかった。リピーターにかけているわけじゃないけど、私はもともとリピートすることが嫌い。同じことを繰り返すというのは、イノベーションからかけ離れた行為だからね。
——ラグジュアリーウォッチ業界に数々のトレンドを生み出してきたビバーさんですが、「BIVER」で今後業界をどのような方向に導いていこうとお考えですか——
一旦リタイアした身でもあるし、業界全体に新たなトレンドを巻き起こそうとは考えていません。そもそも私は、誰もついて来ることのできない方向に進もうとしている。なぜ誰もついて来ることができないかというと、これだけメカニズムや仕上げにこだわると商業的に成功するかどうか疑わしいから(笑)。このクオリティのものを年間100本も作るのは無理だ。年間10数本程度だからできるクオリティ。こんなことどのブランドもやりたがらないでしょう。実際今年もたったの11本しか作れなかったよ!
でも「BIVER」は利益を目指したブランドじゃないんだ。最初に申し上げた通り、完全に自分の美学を満たすために立ち上げたブランドであり、そこに共感してくれる一部のお客様のためだけに存在したい。ビッグメジャーなんかはまったく目指しておらず、わかる人だけがわかるプライベートラグジュアリーな存在となればいい。私が過去に関わってきたブランドとは対極ですが、私は何度も同じことをやりたくない性分ですから、いまとてもエキサイトしているよ。
ジャン-クロード・ビバー氏プロフィール
お問い合わせ:アワーグラス ジャパン公式サイト
取材・文/吉田 巌(十万馬力)