2024.03.29

時計界のレジェンドと、未来のレジェンドが意気投合

「ルノー・ティシエ」が、ついに始動

ドミニク・ルノー氏(左)、ジュリアン・ティシエ氏(右)。

2人の天才時計師によって創設された、新たな時計ブランド「ルノー・ティシエ」。日本ではまだ馴染みのないブランドではあるが、彼らのこれまでの功績を知れば、時計ファンならきっと、素通りなどできない。

2人の天才時計師とはドミニク・ルノー氏とジュリアン ティシエ氏。特にドミニク・ルノー氏は、時計業界では伝説的な人物だ。名だたる名門ブランドのコンプリケーションを担う天才集団「ルノー・エ・パピ」の「ルノー」その人なのだから。

現在は、オーデマ ピゲの傘下である「ルノー・エ・パピ(現オーデマ ピゲ ル ロックル」は、ドミニク・ルノー氏とジュリオ・パピ氏によって、1986年に設立された。それまでの古典的な複雑時計が、この2人の奇想天外なアイデアによって、より魅力的な時計に姿を変えていったことは、誰も否定できないだろう。

ドミニク・ルノー氏は、複雑時計の製造において、15を超える特許を取得している。オーデマ ピゲはもちろん、IWCやA.ランゲ&ゾーネ、フランク ミュラー、ジャガー・ルクルト、リシャール・ミルなど、そうそうたるメンバーに革新的なムーブメントを提供してきた。(ジュリオ・パピ氏は、まだルノー・エ・パピ/現オーデマ ピゲ ル・ロックルに在籍しているが、ドミニク・ルノー氏はすでに退社している)。

一方、もう一人の天才ジュリアン ティシエ氏は、ドミニク・ルノー氏ほどの実績はない。彼はまだ30歳である。ドミニク・ルノー氏と同じく、生まれはフランス。スイス国境の街モルトーにある時計学校在籍時代から、その才能はズバ抜けていたという。

ルノー氏とティシエ氏は、今回の新ブランドを立ち上げる前から、共同で時計製作を行っている。時計所有者の寿命を表すというユニークな「テンパス・フュジット」や、オンリーウォッチのために製作した時計では、時計が動き続ける限りカレンダー調整不要な「セキュラーパーペチュアルカレンダー」搭載モデルを実現した。

「マンデー」。自動巻き。径40.8㎜。18Kピンクゴールドケース。アリゲーターストラップ。3気圧防水。60時間以上のパワーリザーブ。参考価格7万9000スイスフラン+税。

2人の名前を冠した新ブランド「ルノー・ティシエ」では、時計のエネルギーを徹底的に見直し、時計製造における7つの主要原理を、ひとつずつ「テコ入れ」していくという。そして最初に選ばれたのが、自動巻き機構における「ローター」の役割。

「ルノー・ティシエ」の第一弾モデル「マンデー」には、小型のマイクロローターが採用されており、その姿はダイアル側のオープンになった小窓からも確認ができる。マイクロローター自体は、何ら新しい機構ではないが、注目はその中心部に取り付けられた「ダンサー」と呼ばれるプロペラのような補助パーツだ。

マイクロローターは小型で美観に優れる反面、巻き上げ効率の悪さ、また衝撃に弱いという側面がある。これを克服したのが「ダンサー」。エネルギーのロスを軽減し、驚くべきは外からの衝撃すらもエネルギーの変換することが可能だという。

第一弾から、機械式時計の「基本のき」に、メスを入れてきた「ルノー・ティシエ」。天才2人による作品は、これから頻繁に出てくるとは考えにくいが、早くも第二弾に期待してしまうのは、まだ気が早いだろうか。

お問い合わせ:ルノー・ティシエ公式サイト
japan@dominiquerenaud.ch
TEL: 03-6811-6076

文・構成/市塚忠義