2024.05.13

あまり知られていないけど…「裏ジマン時計」vol.4 セラミックスケース、発電インディケーター、その他イロイロ編

ブランド的にはあんまりアピールしていないけど、時計好きにはたまらない通ネタを大発掘!

苦労して手に入れた時計であれば、コトあるごとに誰かに自慢したいもの。ただし昨今は時計メディアも増えて、ほとんどの自慢ポイントが知れ渡っている。とはいえ本格時計の世界は奥が深いもの。「え? こんな自慢ポイント、マジ?」というツウ受けするディテールやエピソードを持つ逸品がまだまだ隠れているのだ。近い将来脚光浴びるに違いない、そんな裏ジマンしたくなる時計を厳選してご紹介。

●その他イロイロ裏ジマン編

ハイテク素材によるユニークなケース作りや快適ソフトなストラップ。そしてツウをも唸らす仕上げ技など、パッと見では分かりにくい独自技を注ぎ込んだ数々の逸品たち。そんな、知れば知るほど唸ってしまう技巧派時計をピックアップ。

11.ラドーの裏ジマン ワード

「セラミックは23%の縮小との闘いなんだよ!」

【ラドー トゥルー スクエア×森永邦彦】ケースからブレスレットまでハイテクセラミックを用いたトゥルー スクエア。そのアイコニックなモデルが、服飾デザイナー森永邦彦のマジックにより、魅惑的な「二面性」時計へと進化。彼の衣服にも使用される「フォトクロミック」技術を応用しており、紫外線に当てることでスケルトン文字盤から黒文字盤へと変化を見せる。38×44.2mm。ハイテクセラミックケース。自動巻き。5気圧防水。パワーリザーブ約80時間。42万3500円。

「ファッション界の科学者」との異名を持つデザイナー、森永邦彦氏。2003年に自身のブランドをスタートさせ、2019年「LVMH PRIZE」ファイナリストに選出。近年は太陽光や紫外線にて色が変化するフォトクロミック技術を用いた服を作り出し、世界から注目を浴びる。

【ラドー トゥルー スクエア×森永邦彦】ケースからブレスレットまでハイテクセラミックを用いたトゥルー スクエア。そのアイコニックなモデルが、服飾デザイナー森永邦彦のマジックにより、魅惑的な「二面性」時計へと進化。彼の衣服にも使用される「フォトクロミック」技術を応用しており、紫外線に当てることでスケルトン文字盤から黒文字盤へと変化を見せる。38×44.2mm。ハイテクセラミックケース。自動巻き。5気圧防水。パワーリザーブ約80時間。42万3500円。
「ファッション界の科学者」との異名を持つデザイナー、森永邦彦氏。2003年に自身のブランドをスタートさせ、2019年「LVMH PRIZE」ファイナリストに選出。近年は太陽光や紫外線にて色が変化するフォトクロミック技術を用いた服を作り出し、世界から注目を浴びる。

 

25年ものノウハウが滲む“焼き物”ケース

スチールや貴金属のソレと異なり、一種の焼き物であるセラミックケースの製作は、二重三重にも手間とノウハウが必要だ。陶器などがそうであるように、焼くことで水分や不純物が抜け硬度ある物体となるのがセラミック。とくに腕時計におけるセラミックケースは実用品としての硬さに加え、ミリ単位での正確な形状まで求められる。ラドーの場合は1000バールの圧力で素材を整形し1450度の窯にて焼結。最終的にきっかり23%縮むよう焼き締めるなど、25年もの開発により独自の最適解を導き出している。薄さ5mmの繊細なケースにして、硬度はステンレスの2倍を誇る1250ビッカースを実現。まさにマスター・オブ・マテリアルだからこその特殊ケースである。

ハイテクセラミックの主要原料となるのは、医療シーンや宇宙事業にも用いられるジルコニウムオキサイドパウダー。カラーピグメントを加えることで、随意に色付けも行える。

溶解させた原料を1000バールという高圧下にて精密金型に注入する。金型はセラミック粒子が焼結した後に正しい形、適切なサイズになるようあらかじめデザインされている。

成型のためのバインダーは除去され、1450℃もの高温にてセラミック粒子を焼結。焼結工程により23%収縮し、同時に高密度化される。硬度は最終的に1250ビッカースに達する。

最後にダイヤモンドホイールを用いて面取りを行う。精密に整形した後ポリッシュ仕上げに入る。ラドーの目指す輝きにいたるまで、数日の磨き上げ行程が必要。そして完成する。

ハイテクセラミックの主要原料となるのは、医療シーンや宇宙事業にも用いられるジルコニウムオキサイドパウダー。カラーピグメントを加えることで、随意に色付けも行える。
溶解させた原料を1000バールという高圧下にて精密金型に注入する。金型はセラミック粒子が焼結した後に正しい形、適切なサイズになるようあらかじめデザインされている。
成型のためのバインダーは除去され、1450℃もの高温にてセラミック粒子を焼結。焼結工程により23%収縮し、同時に高密度化される。硬度は最終的に1250ビッカースに達する。
最後にダイヤモンドホイールを用いて面取りを行う。精密に整形した後ポリッシュ仕上げに入る。ラドーの目指す輝きにいたるまで、数日の磨き上げ行程が必要。そして完成する。

 

お問い合わせ:ラドー公式サイト

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12.ユンハンスの裏ジマン ワード

「こんな顔して中身は最新なんだ」

【マックス・ビル・メガソーラー】バウハウス最後の巨匠が手掛けた時計とそのスタイルを今に伝える「マックス・ビル」。じつはユンハンスは先進技術の開発にも力を入れるドイツの名門。この「メガソーラー」は、太陽エネルギー発電に加え、電波受信にて常に正確な時刻を知らせるハイテクウォッチである。完全放電の状態でも8分の日光照射にて再び使用可能。最大3年間のダークパワーリザーブ機能付き。径38mm。チタニウムケース。クォーツ。3気圧防水。22万円。

多周波電波式ソーラームーブメント、J101.85を内蔵。欧州だけでなく英国や米国、そして日本の電波を受信。「ユンハンス オートスキャン」機能により、5つの周波数にまたがる時間信号の自動検索が可能。

スイス出身の彫刻家であり画家、建築家、工業デザイナー。著名な作品として「ウルムスツール」「クロスフレームチェア」がある。1956年にはキッチンクロックをユンハンスから発表。

マックス・ビルの初ウォッチとなる1962年モデル。「機能はフォルムに追従する」というバウハウスの理念どおりのミニマルなルックス。完成されたデザインゆえ古さを感じさせない。

【マックス・ビル・メガソーラー】バウハウス最後の巨匠が手掛けた時計とそのスタイルを今に伝える「マックス・ビル」。じつはユンハンスは先進技術の開発にも力を入れるドイツの名門。この「メガソーラー」は、太陽エネルギー発電に加え、電波受信にて常に正確な時刻を知らせるハイテクウォッチである。完全放電の状態でも8分の日光照射にて再び使用可能。最大3年間のダークパワーリザーブ機能付き。径38mm。チタニウムケース。クォーツ。3気圧防水。22万円。
多周波電波式ソーラームーブメント、J101.85を内蔵。欧州だけでなく英国や米国、そして日本の電波を受信。「ユンハンス オートスキャン」機能により、5つの周波数にまたがる時間信号の自動検索が可能。
スイス出身の彫刻家であり画家、建築家、工業デザイナー。著名な作品として「ウルムスツール」「クロスフレームチェア」がある。1956年にはキッチンクロックをユンハンスから発表。
マックス・ビルの初ウォッチとなる1962年モデル。「機能はフォルムに追従する」というバウハウスの理念どおりのミニマルなルックス。完成されたデザインゆえ古さを感じさせない。

 

ヴィンテージ顔にして先進機能搭載のイイとこ取り

今、家電業界でパッと見はレトロ風だけど、中身は最新!! といった商品が人気だとか。冷蔵庫、電子レンジ、オーディオ、照明……etc. 時計にもそんなモデルが欲しいですよね。そう、理想的であるのはオールドな味わいを持ちつつ、現代的な機能と利便性を持ち合わせた時計だ。マックス・ビルのメガソーラーは、ミッドセンチュリー的なミニマル美と先進の機能性という相反する魅力を兼備しているところにポイントがある。しかもお値段アンダー25万円。見た目といい、中身といい、そして価格といい、ある意味最強のジマン時計かも知れない!?

お問い合わせ:ユンハンス公式サイト

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13.シチズンの裏ジマンワード

「今、発電がヤバいって♡」

【シチズン アテッサ ACT Line エコ・ドライブ GPS衛星電波時計 F950 ダブルダイレクトフライト】ビジネスマンから強い支持を得るアテッサのエコ・ドライブGPS衛星電波時計における最上位ムーブメント「F950」を搭載するフラッグシップモデル。電波非受信時でも±5秒の精度を持ち、フル充電時では約5年の稼働が可能。時刻情報のみの受信なら世界最速級の最短3秒で完了するという。また、ベゼルにサファイアガラスを使い、上質さも兼備。径44.6mm。チタニウムケース。クォーツ。10気圧防水。30万8000円。

こちらのアテッサには発電量の確認ができる「ライトレベル インディケーター」を搭載。モードを設定の後ボタンを押すと、その場の明るさの段階により、秒針が12〜6時位置を指し示す。「0時」はほぼ発電不可であり、理想の光糧は「5〜6時」位置。

【シチズン アテッサ ACT Line エコ・ドライブ GPS衛星電波時計 F950 ダブルダイレクトフライト】ビジネスマンから強い支持を得るアテッサのエコ・ドライブGPS衛星電波時計における最上位ムーブメント「F950」を搭載するフラッグシップモデル。電波非受信時でも±5秒の精度を持ち、フル充電時では約5年の稼働が可能。時刻情報のみの受信なら世界最速級の最短3秒で完了するという。また、ベゼルにサファイアガラスを使い、上質さも兼備。径44.6mm。チタニウムケース。クォーツ。10気圧防水。30万8000円。
こちらのアテッサには発電量の確認ができる「ライトレベル インディケーター」を搭載。モードを設定の後ボタンを押すと、その場の明るさの段階により、秒針が12〜6時位置を指し示す。「0時」はほぼ発電不可であり、理想の光糧は「5〜6時」位置。

 

その場での発電量が分かるからタイパ充電がOK

光発電による時計はエコの観点からも多いに理想的、しかし、スマホみたいにAC電源に繋ぐ充電と違って、場所の光量によっては本当に今発電できているの? と心配になることがある。いくらユーザーが絶賛充電中の気分でも、当の時計が光に反応していなければまったくの無意味。そこでそんな誤解が発生しないよう、このシチズン アテッサでは「ライトレベル インディケーター」を搭載。秒針にて現在場所における光量の強弱を指し示してくれるのだ。例えば我が家で充電する場合、理想の発電場所をインディケーターにて探しだし、最短時間にて充電を行うことも可能なのだ。意外な場所が光の最強スポットだったりして!

お問い合わせ:シチズン公式サイト

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14.コルムの裏ジマンワード

「このストラップ、クラシックなスニーカーと同じ製法なんだよ」

【コルム バブル 47 オートマティック ドラゴン】分厚いドーム型のサファイア風防が独自の迫力を放つコルムのバブルシリーズ。今年、2024年の辰年を記念したモデルがこの一本。漆黒の黒文字盤にあしらわれたきらびやかな金龍装飾は、多層構造により躍動感あふれる仕上がり。中国において龍は神話を起源とした霊獣であり、財産や幸福を招くラッキーシンボル。特にこの一本は独自製法のラバーストラップを装着しており、着け心地抜群。径47mm。SSケース。自動巻き。10気圧防水。世界限定88本。143万円。

 

ナチュラルなタッチのラバーストラップに隠れた秘密とは?

とかく機能性やルックスが取り沙汰されがちな腕時計。しかし着け心地が悪ければ、いくら機能性やルックスが素晴らしくても、出番自体がなくなることも……。そういう意味で快適な装着感のストラップはマストな存在だ。コルムのこの一本には、クラシックなキャンバススニーカーによく使われる「バルカナイズ製法」を応用したストラップが付属する。ちなみにバルカナイズ製法とは、経年硬化しやすい接着剤を用いず、熱と圧力にてラバー素材と裏地を貼り合わせた製法で、しなやかな履き心地は長続きし、耐久性、耐熱性に優れている。そんなスニーカーと同様に、着用感が良い時計は腕元でゴロつかずフィット感抜群、長時間着けても疲れない。もしかしたら、着け心地の悪い超高級ブレス時計よりもジマンできるかも!

お問い合わせ:コルム公式サイト

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15.ジャガー・ルクルトの裏ジマンワード

「じつはこの文字盤、35回も重ね塗りしているんだって!」

【ジャガー・ルクルト ポラリス・クロノグラフ】日常的な冒険のための時計として、ジャガー・ルクルトの歴史的モデル「ポラリス」が2018年に復活。そしてメゾンの技術を集めた一体型クロノグラフ機械cal.761を載せたその新作が、満を持して登場。エレガントな高級スポーツウォッチであり、垂直クラッチやコラムホイール、そして65時間ものパワーリザーブを誇る。1960年代のレトロダイバーズを思わせる2つ目ダイヤルもポイント。径42mm。SSケース。自動巻き。10気圧防水。226万6000円。

独特の味わいはダイヤルの仕上げにヒミツあり。それぞれサンレイやマットなど、3段階の異なる手法による仕上げが施されている。特に注目すべきは35もの層を持つラッカーの重ね塗り。美しいグラデーションや立体感は、この重ね塗りの技があればこそ。

【ジャガー・ルクルト ポラリス・クロノグラフ】日常的な冒険のための時計として、ジャガー・ルクルトの歴史的モデル「ポラリス」が2018年に復活。そしてメゾンの技術を集めた一体型クロノグラフ機械cal.761を載せたその新作が、満を持して登場。エレガントな高級スポーツウォッチであり、垂直クラッチやコラムホイール、そして65時間ものパワーリザーブを誇る。1960年代のレトロダイバーズを思わせる2つ目ダイヤルもポイント。径42mm。SSケース。自動巻き。10気圧防水。226万6000円。
独特の味わいはダイヤルの仕上げにヒミツあり。それぞれサンレイやマットなど、3段階の異なる手法による仕上げが施されている。特に注目すべきは35もの層を持つラッカーの重ね塗り。美しいグラデーションや立体感は、この重ね塗りの技があればこそ。

 

長年続く感動はギミックよりも地味な職人技がもたらす!?

レトログラードやジャンピングアワーなど、分かりやすいジマン機能も確かに魅力。しかし本格時計のツウともなれば、熟練の職人が手間ひま掛けて込めた“仕上げ”にこそ注目するモノ。このポラリスの文字盤は、3段階の仕上げが施されており、ひとつひとつ手作業により異なるカラーと、塗装手法を駆使して作り上げられている。なかでも35層のラッカーを重ね塗りしたことによる繊細なグラデーションは見事。その自然な奥行き感は、どこか高原の朝霧を思わせる仕上がりだ。一瞬で分かってしまうギミックは、ともするとスグに見飽きてしまうことが多い。しかし熟練技による仕上げは、心に響く静かな感動が長続きするのである。

お問い合わせ:ジャガー・ルクルト公式サイト

文/長谷川 剛(TRS)

裏ジマン時計特集vol.1~4はコチラ!