2024.06.12

ルイ・ヴィトン史上、最もルイ・ヴィトンらしい腕時計

エスカル10周年に初の3針モデルが登場

©Philippe Lacombe 「エスカル オトマティック ローズゴールド グレー」。W3PG11。自動巻き。径39㎜。18KRGケース。VVTキャメルカーフレーザーストラップ。414万7000円。

ルイ・ヴィトンのウォッチメイキングアトリエ「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」が発足して以来、同メゾンの腕時計は、誰も思いつかないような意表を突いたコンプリケーションウォッチで注目を集めてきた。創造性に富んだ複雑時計の数々は、ルイ・ヴィトンの時計作りに対する「本気度」を示す指標となったわけだが、その「本気度」にこれまでとは違う新たな方向性を感じさせた時計が、昨年発表された新生タンブールである。

©Philippe Lacombe 「エスカル オトマティック ローズゴールド ブルー」。W3PG21。自動巻き。径39㎜。18KRGケース。ブルーカーフレーザーストラップ。414万7000円。

新生ダンブールの搭載ムーブメントは、ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン設計によるマイクロローター式の自動巻きムーブメント。モダンな仕上げが施されているにもかかわらず、薄型でクラシックに徹しているのは、ルイ・ヴィトンの時計作りに対するセンスの表れ。LVMHグループのトップ、ベルナール・アルノー氏の四男ジャン・アルノー氏がルイ・ヴィトンのウォッチ部門のディレクターに就任して以来、シンプルにしてマニアックな時計作りが加速しているのだ。

©Piotr Stoklosa

ジャン・アルノー氏の時計作りに対する非凡な才能が遺憾無く発揮されたのが、ここに紹介するエスカルの最新作。意外ではあるが、エスカル10年目にして初の3針モデルだという。先にムーブメントから説明してしまうと、搭載されているのは新生タンブールと同じクロノメーター認定の「キャリバーLFT023」。つまりエスカルの新作も、薄型(風防含まず8.97㎜)なのである。

©Philippe Lacombe

ケースやダイアルに目を向けると、ルイ・ヴィトンらしさを取り入れた、こだわり抜いたディテールに目を奪われる。ルイ・ヴィトンがトランク製造で培った匠の技が、時計の随所に活かされているのだ。例えばトランクを補強するための真鍮製のブラケットは、時計のケースとラグを繋ぐ部分にさりげなくセット。「補強」という意味でも、理にかなっている。

©Piotr Stoklosa

またこのブラケットデザインは、ダイアルのインデックスにも。12・3・6・9時位置のプレート状のインデックスが、中央のダイアルと外側のメモリの入った外周サークルを「繋ぐ」ようにセットされているのも面白い。秒インデックスのゴールドのスタッズは、まさにトランクのビスそのもの。さらに18Kローズゴールドケースモデルのダイアル表面には、ルイ・ヴィトンのモノグラム・キャンバスの細かいグレイン仕上げ(しぼ)まで見事に表現。ざらついた凹凸と磨き上げられたゴールドパーツが美しいコントラスを生み出している。

©Philippe Lacombe 「エスカル オトマティック プラチナ メテオライト」。W3PT11。自動巻き。径39㎜。プラチナケース。ブラックカーフレーザーストラップ。557万7000円。

今回発表された新作エスカルは、4タイプ。18Kローズゴールドケースにはシルバーダイアルとブルーダイアル、プラチナケースにはメテオライトダイアルと、ブラックオニキスダイアルが用意されている。いずれも限定モデルではないが、この内容からして大量に製造することは、ない。新生ダンブール同様、希少性の高いモデルになることは、まず間違いないだろう。

お問い合わせ:ルイ・ヴィトン公式サイト

文・構成/市塚忠義