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2024.12.27
ルイ・ヴィトンのエスカルに限定50本のスペシャルモデル
ハンドメイドを駆使したエナメルダイアル
ルイ・ヴィトンの「トランク」が持つ世界観を、腕時計で見事に表現したコレクション、それが「エスカル」だ。シンプルながらも力強いアイコンが随所に活かされ、そのディテールの完成度の高さは、老舗の時計専業ブランドが舌を巻くほど。
新生ルイ・ヴィトン ウォッチの象徴として大きなリニューアルを果たした「タンブール」とともに、「エスカル」はメゾンの2大コレクションとして、早くも定着した感がある。元々、生産本数が少ないコレクションではあるが、さらに希少性の高い限定モデルが、このたび発表された。
それが世界限定50本のみのエナメルダイアル「エスカル オトマティック プラチナ ブルー エナメル」である。この時計の持つ存在感は、写真を見れば説明するまでもないだろう。渦を巻くようなブルーダイアルの美しさは、思わず引き込まれてしまいそうなほど。これは全てハンドメイドによるギョーシェとエナメルの賜物。それがどれだけ根気のいる作業なのか、ちょっと解説していきたい。
ダイアルの素材はホワイトゴールド。そこに手作業で彫り込みを入れながら、周囲にわずかに盛り上がった「縁」を作る。これは後にエナメルを塗布した際、溢れないようにするためだ。次に手動のローズエンジン旋盤(18世紀より伝わる装飾を入れるためのマシン)によって、表情豊かな放射状のギョーシェに仕上げていく。「縁の間際」までしっかりとギョーシェを施すことは特に難しく、経験豊富な職人にしか、こなすことはできないと言う。
そしてギョーシェ彫りの窪んだ溝部分にエナメルを入れていく。透明感のある色合いを極めるためには、色ガラスを粉砕したエナメル顔料を水や油と混ぜ合わせる際の配合が重要で、この作業も非常に繊細さを要する。ここまで説明してきたエナメルの技法は「シャンルベ」と言われるものだが、この技法がありえないほど贅沢なのは、時計オーナーが一生見ることはないであろう文字盤の「裏側」にも同じエナメルを施している点だ。
そこにはもちろん理由があって、800度のオーブンで焼成して純銀製のダイアルとエナメルを融合させる際、エナメルがダイアルの片面だけだと、そりかえって変形してしまうのだ。ダイアル裏面のエナメルは、カウンターエナメルと呼ばれるが、そこには「Guilloché Main, Émail Grand Feu」と言う、将来のウォッチメーカーへのメッセージが添えられているのも、いかにも職人の粋を感じる心憎い演出だ。
完成したダイアルは、半透明のエナメルからダイナミックなギョーシェ彫りが透けて見える、なんとも奥行きのあるブルーダイアル。フランケエナメルとして知られるこの手法は、19世紀後半から20世紀初頭に欧州で流行ったものだが、エナメルダイアルに詳しい人なら不思議に思うのが、「エスカル」の絶対的なアイコンであるリベッド留めのアワーインデックスを「どうやって留めているのか?」と言う点だ。
エナメルダイアルは、その素材の性質から穴を開けることは難しく、インデックスのほとんどは、プリントされたものだ。しかし「エスカル」の3・6・9・12時位置のアワーマーカーは、どうみても植字式だ。実はルイ・ヴィトンは、工具ではなく精密なレーザーを使うことでエナメルダイアルに穴を開けている。ひとつのインデックスにつき3個の穴、合計で12個の穴を開けることで、アワーインデックスを固定しているのだ。
ちなみにこの限定エスカルのケース素材はプラチナ製だが、ダイアルのリベット留めのアワーインデックスとニードルシェイプの時分針は18Kホワイトゴールド製、そして秒針にはチタンを採用するなど、素材選びにも強いこだわりがみられる。
搭載するムーブメントは、メゾンのウォッチメイキングアトリエ「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」がル・セル クル・デ・オルロジェ社と協力して作り上げたオリジナルの自動巻きキャリバー、LFT023。マイクロローターを採用した美しい薄型キャリバーは、ジュネーブのクロノメーター認定も受けており、精度の高さもお墨付きである。
商品の問い合わせ/ルイ・ヴィトン公式サイト
文・構成/市塚忠義