2025.10.29

パネライのルミノール40㎜に、初のセラミック!

トゥットネロの“チェラミカ熱”が蘇る、ブラックセラミック

「ルミノール GMT チェラミカ PAM01460」。自動巻き。径40㎜。ブラックセラミックケース。カーフストラップ(ラバーストラップ付属)。30気圧防水。226万6000円。

パネライが好きで好きでたまらないファンに、「パネライのどこがそんなに好きなのか?」と問えば、「それはケース!」と即答する人は多いだろう。筆者もその一人だが、ルミノールにしても、ラジオミールにしても、サブマーシブルにしても、パネライを代表するコレクションは、どれもがひと目で判別できる独自のケースフォルムを持っている。

イタリア海軍向けのオリジナルモデルのデザインを忠実に受け継いできたパネライ。ケースフォルムの美しさは、初代からすでに備わっていたものだ。パネライ愛好家にとっては「このケースの形には大きなメスを入れて欲しくない」というのが本音であり、パネライもまたその声を大事にしている。一方、日々進化しているのが、パネライの「ケース素材」だ。

今回、ここに紹介するのは、セラミックケースの最新作。パネライのアイコンであるルミノール コレクションに、小ぶりな40㎜ケースのブラックセラミックモデル「ルミノール GMT チェラミカ PAM01460」が誕生した。ではまず簡単に、パネライとセラミックケースの関係を振り返りたい。

パネライが民間市場にデビューした当時、コレクションを中心で支えた素材は、ステンレススティールとチタン。そしてステンレススティールにブラックPVDを施したモデルだ。そして2007年、パネライは新たな素材としてセラミックを初導入。「ラジオミール ブラックシール チェラミカ PAM00292」が誕生した。

セラミックケースのパネライとして、最も強烈なインパクトを残したのは、2012年に発表したルミノールの「Tuttonero(トゥットネロ)」であろう。イタリア語の「Tutto=全て」と「Nero=黒」を組み合わせたその時計は、ブラックセラミックケースに加え、ブレスレットにもセラミックを採用したパネライ初のモデルだった。

オールブラックだったのは、ケースとブレスレットだけではない。ケーススルーバックから覗くムーブメントもブラックカラーで統一するという、とにかくクールな時計だった。このトゥットネロが、その後のオールブラック大ブームのきっかけになったことは、間違いない。

2012年に誕生した「ルミノール 1950 3デイズ GMT トゥットネロ PAM00438」は2016年まで生産され、2018年には後継モデルとして「PAM001438」が登場。2021年まで生産された。限定モデルではなかったが、年間の生産本数が限られていたため、常に品薄状態が続く人気モデルだった。

筆者は、このトゥットネロを悩みに悩んで結局買わなかった一人だが、購入をためらった唯一の点を挙げるとすれば、それはボリューム。自分にはやや大きいと感じたのだ。ケースというよりは、黒いセラミックブレスレットのインパクトが強烈で、これをつけこなす自信が持てなかった。

矛盾した話なのだが、パネライの時計が気になる人は、その大きさに惹かれ、その大きさに戸惑う。新作「ルミノール GMT チェラミカ PAM01460」のケースサイズは、40㎜。小ぶりな40㎜のルミノールケースにセラミックを採用するのは、これが初だという。

さらにセラミックケースはステンレスケースより比重が軽いため、軽量。この40㎜モデルは性別を問わずお勧めできるが、筆者のように、かつてサイズで悩んだファンがいるとすれば、再び「チェラミカ熱」が湧き上がることは、避けられないだろう。

搭載するムーブメントは、自動巻きの「P.900」。初代トゥットネロの黒いムーブメントはシースルーバックから見ることができたが、後継モデルではソリッドケースバックとなり、ムーブメントを裏から楽しむことはなくなった。

しかしこの新作で採用されているのは、スモークサファイヤクリスタルのオープンケースバック。3日間パワーリザーブにGMT(この新作ではBiTempo/イタリア語でデュアルタイム)という、チェラミカ伝統のスペックを、再び楽しむことが可能だ。

ストラップは、しなやかなブラックカーフレザーストラップとブラックラバーストラップが付属。ストラップとバックルの両方にPAMクリックリリースシステムTMが搭載され、工具を使わずに簡単に交換することができるのも、嬉しい。

「ルミノール GMT チェラミカ PAM01460」は、オールブラックというその外観からファッションアイテムとして話題になることも多いだろう。しかし「3日間パワーリザーブ」「GMT」「30気圧防水」「デイト表示」「スーパールミノバ®X2」など、極めて実用性の高い時計を追求している点にも注目したい。

問い合わせ/パネライ公式サイト

文/市塚忠義