2025.11.07

「ティソPRX」に軽量なチタンとダマスカス!

ティソの革命児が、またしても新素材に挑戦

左「ティソPRX パワーマティック80チタニウム」。自動巻き。径38㎜。チタニウムケース&スレスレット。13万3540円。右「「ティソPRX パワーマティック80 ダマスカス スティール」自動巻き。径38㎜。ステンレススティール製ダマスカスケース。エンボス加工 レザーストラップ。16万1480円。

70年代テイストのレトロフューチャーなデザインで、若者を中心としながらも、あらゆる世代で大ヒットを記録しているティソの「ティソ PRX」コレクション。直径25㎜から42㎜までカバーするケースサイズも豊富で、性別問わず人気が高いのも人気モデルたる所以だ。

1978年のオリジナルを原点として、2021年に新たに生まれ変わった「ティソ PRX」コレクションは、なぜこれほどまでに短期間で大成功を収めることができたのか。そのひとつは、クオリティに対して極めて良心的なリアルプライスだったことだ。

ちなみに「PRX」とは「Precise and Robust」=「高精度かつ堅牢」を意味し、最後の「X」はローマ数字の「10」で「10気圧防水性能」の意味だという。2021年2月の再スタート時には、クオーツモデルとしてデビューしたが、同年8月には早くもオートマティックモデルを投入。自動巻きモデルの登場によって、熱狂的な時計ファンも放っておけない存在となった。

「ティソ PRX」のケース素材はステンレススティールケースが中心だったが、2024年には新たなケース素材としてフォージドカーボンケースを追加。さらにダイアルまで同素材としながらも10万円代を実現したことで、事実上、フォージドカーボン時計の価格革命を象徴するモデルとなった。

その「ティソ PRX」の38㎜モデルに、新たな素材の新作モデルが誕生した。それがここに紹介するチタニウムとダマスカスの2つのモデルだ。チタニウムモデルの方は、ブレスレットまでフルチタニウム。徹底して軽量化が図られ、手に持った時の驚きの軽さに加え、実際に腕につけた時のフィット感も申し分ない仕上がりだ。

チタニウムモデルのダイアルカラーは2種類。ブルーダイアルとアンスラサイトダイアルが用意され、どちらのダイアルにもお馴染みのワッフルパターンが入っている。ブルーダイアルの時分針とバーインデックスがケースと同色のシルバーカラーでシックにまとめた一方、アンスラサイトダイアルの方はローズゴールドカラーでゴージャスに。針&インデックスにはスーパールミノバが施されており、夜間でも高い視認性を発揮する。

そしてもう1本の注目モデルが、SS(ステンレススティール)はSSと言ってもダマスカス鋼を採用したモデル。ダマスカスといえば、包丁やナイフ、日本人なら刀を思い浮かべる人が多いだろう。鋭い刃先の波紋模様は、異なる種類の鋼材を何層も重ねることで生まれる偶然の産物。2つとして同じ模様のないダマスカスの波紋模様は、この新作PRXにおいても、存分に発揮されている。

まず対照的な特性を持つ2種類のステンレススチール粉を厳選。これらのパウダーを金型の中で交互に重ね合わせ、ダマスカス模様の土台を形成する。その後、金型は高温と高圧のガスを使い、あらゆる方向から均一な圧力で材料を圧縮するHIP(熱間等方圧加圧)にかけられ、粉末は原子レベルで結合。70層からなる多層スチールのブロックを形成する。

このブロックをCNC旋盤で精密に加工してPRXのケースとダイアルが完成。さらにポリッシュ仕上げとサテン仕上げを組み合わせることで、光の陰影によって多彩な表情を生む神秘的なケースが完成する。このダマスカス・ステンレススティールの導入は、ティソ史上初となる。

今さら説明する必要もないかもしれないが、搭載されるムーブメントは、どちらも最長80時間のパワーリザーブを誇るティソの傑作「パワーマティック80」。価格はダマスカスモデルが16万1480円、チタンモデルが13万3540円となっている。この戦略的なプライス設定は、ティソならではと言えるだろう。

物価高騰、円安、うだつが上がらない給与事情で苦しむ若者世代が、どうやったらスイスの高級時計に興味が持てるというのか。ティソのような誠実メゾンが果たしている役割は、想像以上に大きいのだ。

問い合わせ/ティソ公式サイト

文・構成/市塚忠義