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2025.11.10
レイモンド ウェイルのセンスが光る手巻きオーバル!
音楽をこよなく愛す一族の美意識が炸裂

「トッカータ ヘリテージ」。2280-STC-64001。手巻き。横33✖️縦38㎜。SSケース。カーフストラップ。3気圧防水。27万5000円。
時計業界において、今となっては希少な「独立系ブランド」となったレイモンド ウェイル。手の届きやすいスイス時計を提供するジュネーブの実力派ブランドは、来年2026年に創業50周年を迎える。記念すべきアニバーサリーを目前に、いよいよカウントダウンが始まったのであろうか。これまでのコレクションとはちょっと趣の異なる、ユニークな新作が発表された。

2280-PC5-80001。29万7000円。
それがトッカータコレクションの新シリーズとして誕生した「トッカータ ヘリテージ」である。ユニークなケース形状に目を奪われている人も多いと思うが、その前にレイモンド・ウェイルというブランドについて軽くおさらいしたい。
ブランドの創業は1976年。この時、スイス時計業界といばクオーツショックの真っ只中であり、完全な暗黒時代。とても新たな時計ブランドを立ち上げようという雰囲気はなかったはずだ。しかし時計職人レイモンド・ウェイルは、スイス伝統の機械式時計の火を絶やしてはならないとして、自身の会社を設立した。
その真面目な時計作りへの姿勢は、時計愛好家の目にとまり、厳しい時代にありながら確固たる地位を築くことに成功。現在は3代目のエリー・ベルンハイム氏がCEOを務める。興味深いのは、一族が熱心な音楽一家であること。
オーストリアの作曲家モーツァルトの名を冠して1983年に発表した「アマデウス」で大成功を収めると、その後もベートーヴェン唯一のオペラにちなんだ「フィデリオ」、「トラヴィアータ」、「サクソ」など、音楽にインスピレーションを受けたコレクションを次々と誕生させる。

現CEOのエリー・ベルンハイム氏もジャズ愛好家として知られており、ジャス業界とコラボレーションした時計も数多くリリースしている。今回の新作のコレクション名である「トッカータ」とは、演奏者の技巧を惜しみなく披露する楽曲を意味する音楽用語である。
トッカータコレクションは、2014年に誕生。これまでのモデルは、シンプルな2針のラウンド型とレクタンギュラー型のみだったが、そこにオーバル型のトッカータ ヘリテージが新たに加わった。
さて、このオーバルケースだが、皆さんの第一印象は、どうだろうか。1970年代の時代感を投影するレトロなケースフォルムの受け取り方は、おそらく世代によってバラバラだろう。60代以上の大先輩には「おぉ、懐かしい」、40代以上のミドルには「ザ・オジサン時計」、20代以上の若者には一周回って「なんか、新鮮!」となるのだろうか。

2280-STC-50001。27万5000円。
いずれにしても、この個性的なオーバルケースの時計を探してみると、現行品ではなかなか見つからないのが現状だ。クラシックエレガンスを得意とする大御所ブランドからリリースされているパターンがあるが、その多くはゴールドモデルで、おいそれと手の届くものではない。

その点、レイモンド・ウェイルの「トッカータヘリテージ」は、アンダー30万円を実現。さらに特筆すべきは、この時計が、時計愛好家のツボを刺激する「手巻き」であること。楕円ケースとしては珍しいシースルーバック仕様でムーブメントを鑑賞できる上、手で巻いた時のカチカチという音と感触が「デカめ」に設計されているのも、ポイントが高い。
ソリッドなダイアルはサンレイ仕上げ。光を受けて変化するその繊細な表情は、シンプルを極めた2針のおかげで、最大限にいかされている。さらにダイアルと針のクリアランスは、極限まで追い込まれており、隙間なくピッタリとくっついているかのよう。もちろん、この設計は、視認性を高めることにも貢献している。

2280-ST-50001。29万7000円。
そうしたオーバルケースの時計にペラペラ&ピカピカのクロコ系レザーストラップが装着されると途端に「おじさん風」になってしまうのだが、「トッカータ ヘリテージ」にはマットで淡い、上品カラーのレザーストラップが装着されているのも好印象。さらにスポーティな感覚を楽しめるブレスレット仕様も用意されている。
ダイアル色は「コッパー」「オールドシルバー」「ブルー」の3種類、ケースサイズは、横33㎜、縦38㎜。この絶妙なカラーチョイスと完璧なサイズ感はレイモンド・ウェイルならではのセンスの高さと言えるだろう。
問い合わせ/レイモンド ウェイル公式サイト
文・構成/市塚忠義