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2026.01.28
スイス独立系ブランド「オートランス」が日本本格上陸
見ているだけでワクワクする機械式時計

左/オートランスのブランドマネージャー、セドリック・ヨース氏。スイスの老舗時計店「ブヘラ」で時計界のキャリアをスタート。その後、H.モーザーでカスタマー・リレーションシップ・マネージャーとして3年間務め、2025年3月に現職に就任。
右/オートランス共同創業者ギョーム・テトゥ氏。2004年のブランド設立時のリーダーであり、CEOを務めた。MELBホールディングス傘下となったことに伴い、ブランドを離れたが、2025年3月に会長兼アドバイザーとして復帰。
新年早々、ビッグニュースが飛び込んできた。H.モーザーの日本法人設立の知らせである。これに伴い、同じMELBホールディングス傘下にある高級時計ブランド、オートランスの取り扱いもスタートした。
その動きが明るみになった昨年末に来日した、オートランスのブランドマネージャー、セドリック・ヨース氏は、「H.モーザージャパンとのパートナーシップにより、日本の時計ファンとこれまで以上に密な関係性が築いていけることを期待しています」と、喜びの言葉を述べた。
「オートランスは2004年に創業した若いブランドです。だからこそ、アベレージ的な時計製作をしていては老舗ブランドには勝てません。他社ではやっていない、一目でオートランスだと分かる独創性を発揮することを開発の主眼としてきました」
ブランド名のHautlenceは、創業の地ヌーシャテル(Neuchâtel)のアナグラム。スイス時計産業の中心地の一つであり、共同創業者のギョーム・テトゥ氏は、ブランド設立時「ここで育まれてきた伝統的な時計製作技術を継承しながら、機械的な芸術性を伴う時計の創造を目指す」ことを理念に掲げた。
それは2005年に誕生したファーストモデル「HL01」で具現化された。特徴的な横長レクタンギュラーのケースに、ジャンピングアワー&レトログラードミニッツが備わる自社製ムーブメントを収めてみせたのである。その後も時間を伝える方法を根本から改革した、新たな時刻表示機構を創案。熱心な時計ファンの間で知られた存在になった。
前述したMELBホールディングスは、は2012年、オートランスと、同じく経営危機にあったH.モーザー、そしてひげゼンマイと脱進機のメーカー、プレジョンエンジニアリング社を買収。2020年には3社で技術・製造を共有する新体制となり、オートランスはヌーシャテルを離れて他の2つの兄弟会社が拠点とするシャフハウゼンに移った。
「新体制は、高品質化をオートランスにもたらしました。またH.モーザーと技術共有することで、互いの表現の幅も広がっています」
2025年リリースの新作「ヘリックス」は、H.モーザーから円筒状ひげゼンマイが備わるシリンドリカル トゥールビヨンの提供を受けて生まれた。これに先駆け2018年には、オートランスの技術でH.モーザー初のワンダリングアワー機構がもたらされた。まさにWin-Winの関係性が両者の間で築かれている。
「我々はプロジェクトごとに、何か新しいことにチャレンジしてきました。常に好奇心をもって開発に向き合っているのです。そしてグループ外のサプライヤーも交えて意見交換を行い、新しいアイデアが実現可能かどうかを探りながら、時間をかけて1つ1つの機構を完成に導いてきました」
H.モーザーによるシリンドリカル トゥールビヨンをダイアル中央に据えた「へリックス」では、初作「HL01」から得意としてきたレトログラードを時分、2つの表示に用いた。
「HL01から続く横長レクタンギュラーは、両サイドに各レトログラードのインデックスを配するのに有利に働きます。それらの針をセンタートゥールビヨンといかにして融和させるかに腐心しました」
同じく「HL01」で実現したジャンピングアワーは、2018年登場の「スフィア」で3D化が試みられた。何とアワー表示をディスクではなく、球体としたのだ。
「球体は軽量なチタン製として、内部には多軸トゥールビヨンと同じ仕組みが組み込まれています。パッと見ではどんな風にアワーが切り替わるのかわかりづらいのですが、実際に動きを目の当たりにすると皆さんニコリと笑顔になってくれるんです」
球体が次の時刻を示すためにクルリと回る際、カシャリという作動音が心地よく響く。「スフィア」は時計ファンの目と耳を魅了する。
「各モデルは28本以下の数量限定生産で、年間の総生産数は200本ほど。少量生産だからこそ、強いオリジナリティが発揮できるのです。今後も建築やアート、料理といったさまざまなジャンルからアイデアを探り、新たな芸術性を伴う時計を創造していきます」
スフィア シリーズ2
前代未聞の球体ジャンピングアワー搭載の第2弾。球体は3分割構造で、内部には21度に傾斜した2つの交差した軸の周りに4つの傘歯車(ベベルギア)が設置され、毎正時に次の時刻の数字に回転させる。その右側には、レトログラードミニッツのメカニズムを露わにした。サファイアクリスタル風防を、球体部分を丸く膨らませ造作しているのもお見事。手巻き。ケース43×50.8mm。SSケース。ラバーストラップ。1383万8000円。
スフィア シリーズ3
球体ジャンピングアワー最新作は、ケースがよりコンパクトに再設計され、装着感を向上させた。ムーブメントも全体をスケルトナイズド。透明な空間の中で、球体が宙に浮いたように回転し、レトログラード分針が飛び用にフライバックする。ケースに合わせてムーブメント構造も再設計されているが、72時間のロングパワーリザーブはそのまま継承してみせた。手巻き。ケース37×45mm。チタンケース。パープルスエードレザーストラップ。1383万8000円。
ヴァガボンド シリーズ4
モデル名は仏語で“放浪者”の意。3つのアワーディスクがセットで衛星回転しながら、分リングの数字を示して分針を兼ねるサテライトアワー、ワンダリングアワーと呼ばれる機構の別名である。同様の機構は他社にもあるが、本作は分リング側を回転させ、固定した3つのアワーディスクをジャンピング式としているのが独創的である。現在時刻のみ数字が表れるため。視認性も優れる。自動巻き。ケース43×50.8mm。SSケース。ラバーストラップ。601万7000円。
ヘリックス
ダイアルの両端のレトログラード機構の各針は、それぞれ有機的にカーブしながら中央に配したシリンドリカル トゥールビヨンを避け、逆サイドを起点とする。結果、運針半径が長くなり、ほぼ垂直のレトログラードがかなった。時の移り変わりとともに2つの針のカーブの重なり具合が変化する様子が、美しい。上下に伸縮して偏心しない円筒状のひげゼンマイは、より高精度が得られる。自動巻き。ケース37×45mm。チタンケース。ラバーストラップ。1504万8000円。
問い合わせ/オートランス / H.モーザージャパン TEL: 03-6807-5880
取材・文/髙木教雄