2026.03.23

タイメックスが見出す新境地「ワイズ・ラグジュアリー」Timex Atelier コレクション

“アメリカの国民時計”ブランドとして親しまれる我らがタイメックスから、イメージとは一線を画すラグジュアリーな時計コレクションが登場した。その名を“Timex Atelier(タイメックス アトリエ)”。クリエイティブディレクターを務めるジョルジオ・ガリ氏が心血を注ぐ新コレクションは、細部にいたるまで練りに練った至高のデザインが真骨頂だ。こだわりは見た目のみならず、使い勝手にも及ぶ。

見せかけの高級感ではなく、本質的なハイクオリティや道具としての使いやすさを備えたその美しい時計は、クワイエット・ラグジュアリーを体現するもの──いや、あまりに賢い選択であるため“ワイズ・ラグジュアリー”な時計と称したい。ジョルジオ・ガリ氏への直撃取材を通じて、全貌をどこよりも詳しく解説する。

ジョルジオ・ガリ[Giorgio Galli] 1962年、イタリア生まれ。ルーカス・フィルムを経てデザイナーへ転身した異色の経歴をもつ。90年代前半にはスウォッチデザインラボ所長を務め、時計の一時代を築いた。現在はクリエイティブディレクターとしてタイメックス・グループのデザインを統括する。自身の名を冠した高級コレクション“ジョルジオ・ガリ Sシリーズ”も各国で完売が続出する大人気を博した。

単にハイスペックを謳うのではなく
タイメックス流のラグジュアリーを追求する

どの角度から見ても美しい、
ジョルジオ・ガリ渾身のモダンダイバーズ

タイメックス アトリエ マリーン M1a:スイスにて組み立てが行われる新コレクションより、200mの防水性能を誇るダイバーズウォッチ。吸い込まれるような漆黒のダイヤルは、耐久性に優れる多層のエナメル仕上げ。アワーマーカー外周を包むようにメタルのリングを配したデザインが、モダンな印象を醸す。セラミック製トップリングの回転ベゼルはなだらかなアールを描き、優美なフォルムが隅々まで丁寧にデザインされた時計であることを物語る。SSケース&ブレスレット。φ41㎜。19万8000円。17万6000円のラバーストラップモデルもあり。

“タイメックス アトリエ”の布石となったのは、デザイナーその人の名前を冠し、かつてないラグジュアリーを追求した“ジョルジオ・ガリ S”シリーズである。リリースされたS1、S2、S2チタンと3本の時計は、どれも瞬く間に完売したという逸話をもつ。ことチタンモデルは、34万3200円というブランド史上最高値が付いた時計にも関わらず、である。タイメックスというブランドはいまや、庶民に寄り添う“アメリカの国民時計”ブランドのステレオタイプだけではくくれなくなった。

“タイメックス アトリエ”の第1弾モデルであるダイバーズウォッチ“Marine M1a(マリーン M1a)”の価格も、17万6000円〜。史上最高値のそれよりは控えめとはいえ、これも従来のイメージと一線を画す価格設定である。そして実用性と高揚感を兼ね備えたモダンなデザインを見れば、“ジョルジオ・ガリ S”シリーズとの共通項がいくつもあることに気づかされる。

「“タイメックス アトリエ”のプロジェクトは、2年前から温めていた我々の肝煎りです。私の名前を冠した“ジョルジオ・ガリ S”シリーズも好意的に受け止めていただき、この価格帯の時計のニーズがあることはわかっていました。ただ、価格を上げることを目的に作ったものではなく、制作にあたっては“タイメックス流のラグジュアリーとは何だろう?”という点を突き詰めました。長い歴史を誇るタイメックスだからこそのラグジュアリーというものを追求したんです」。

ケースサイドにはジョルジオ・ガリ必殺のディテールである肉抜きが施され、ブラックIPコーティングを施したインナーケースが覗く。またストラップのサイドも同様に肉抜きされ、視覚的な一体感を生んでいる。リュウズの先端にはコレクションの頭文字を模ったロゴが刻印され、特別な一本であることをさりげなく主張する。ちなみにケースと一体になったように見えるリュウズガードは、じつは独立したパーツからなり、裏側からビス留めされている。

ガリ氏が強調するのは、これみよがしな個性ではなく、「使っているうちにふと気づく違い」へのこだわりである。たとえば“マリーン M1a”はインナーケースとミドルケース(後にも触れるが、一部が剥き出しになっている!)を備えた複層構造であり、時計に明るい玄人であるほどなぜこの構造で、しかもコストを抑えながら200mもの防水性能を実現できるのか不思議に思うだろう。そしてこれぞ、1854年からの「長い歴史を誇るタイメックスなればこその知恵の結晶」。経験に裏打ちされたワザと優れたデザインによって価値を高めるのが、タイメックス流儀なのである。

ケースサイドには大胆な肉抜き加工が施され、ブラックIPコーティングが施されたミドルケースが覗く。このスケルトンデザインは昨今目にする機会が増えたが、何を隠そうオリジンはガリ氏。1996年にタイメックスグループのブランド“ノーチカ”の時計に採用したそれが源流であり、ここにも“らしさ”──当人の言葉を借りれば「デザインランゲージ」が忍ばせてあるというわけだ。

多層エナメル仕上げによる吸い込まれるような漆黒のダイヤルには、印象的なリングとともにルミノバインデックスを配置。ちなみにこのリングもスケルトンデザイン同様、“ジョルジオ・ガリ S”シリーズにも見られたレガシーなのだが、リングをダイヤルの外周へ寄せた独特のバランスがユニークに映る。指摘すると、ガリ氏の顔に笑みが浮かんだ。

「気づいてくれたんですね! アワーマーカーとリングは、意図的にあえて外へ寄せています。アールをつけたベゼルの形状もそうなのですが、何気なく見たときふと“ここ、面白いな”という違いを発見してほしい──そんな思いを込めてデザインしているので、気づいてくれるのは嬉しいですよ」。

光によって多彩な表情を見せるのも、優れたデザインの証

時分針は西洋の剣を思わせる、シャープなバトン針。風防には三層の反射防止コーティングを施した、なめらかな曲線を描くダブルカーブサファイアクリスタル風防を採用している。ダイヤルのインデックス外周は斜めにそり立っていて、アラビア数字とともに細かな目盛りを印字。ケース径は41㎜と標準的で厚みも中庸的なのだが、よくよく見るとそれぞれのディテールに複雑な高低差があり、奥行きのある表情しているのがわかる。光に照らされて生まれる陰影がまた、じつに美しい。

「光の当たり方によって移ろう表情も、大切にしているデザインの要素です。ベゼルのアールしかり、インデックスのアプライドの高さしかり、目盛りの大小しかり、あらゆるバランスに気を配りデザインしています。変にやりすぎてキャラクターが立ちすぎないよう、そこには気をつけながら。デザインにおいて最も大切なのは、調和ですから」。

“調和”は、ガリ氏に取材すると度々飛び出るパワーワードであり、事実、ジョルジオ・ガリというデザイナーのクリエイティブの本質であるように本誌は思う。

上質なだけでない、ユーザーに寄り添う時計作り

「デザインに当たって、何か特定の時計をイメージしたということはありません。復刻するのでも、急進的なものを作るのでもなく、モダンであると同時にタイムレスに愛せる時計を心がけました。Sシリーズと共通項は多いですが、Sシリーズがアーティスティックな色が濃い実験的な時計コレクションであるのに対し、“タイメックス アトリエ”はより汎用性の高いそれを目指してデザインしています。ラグジュアリーでありながら日常に溶け込む、そんな時計ですね」。

ダイヤルを多層エナメル仕上げにしているのも、クラックの心配を排除し、長きにわたり愛用してもらいたいという思いから。ブレスレットモデルには、工具を用いず自身でサイズ調節可能なブレスレットを採用し、容易にベストフィットが得られるよう配慮している。このサイズ調節機構はSシリーズにも採用されていたが、イノベーションによって半コマの調整が可能になっている点も特筆しておきたい。こうしたユーザーへ寄り添う姿勢も、“タイメックスのラグジュアリーウォッチ”なればこそ、だろう。

本質を見抜く審美眼をもつ者にとって
“タイメックス アトリエ”は賢明な選択だ

スケルトンケースバックから覗くムーブメントは、価格と信頼性のバランスに優れるスイス「CATENA(カテナ)」社製。29石、パワーリザーブ約36時間、28,800振動/時を誇る、自動巻きのそれを採用している。SSブレスレットは工具なしで容易にサイズ調節ができるアジャスタブル仕様で、半コマの調節にも対応しているのが嬉しい。バックルには、独自設計のSS製デプロイメントバックルを採用する。

ムーブメントには “CATENA(カテナ)”社のスイス製自動巻きムーブメントを採用。カテナ社のムーブメントをタイメックスの時計に採用するのは初めてだが「グループとしてのお付き合いがあり、価格や納期も含めて安定供給できるのが採用の決め手になりました」とガリ氏はいう。タイメックスの歴史とスケールメリットが活きた形だ。

同時リリースのGMTも見目麗しい!

タイメックス アトリエ GMT24 M1a:鮮烈なオレンジのGMT針、ケースのキワまで覆うサファイアクリスタル風防が目を惹くこちらも、ワイズ・ラグジュアリーを体現する注目モデル。マリーン M1a同様、SSケースやブレスレットのサイドには肉抜きが施され、奥行きのある陰影を生んでいる。心臓部には“LANDERON(ランデロン)”ブランドのスイス製自動巻きムーブメント(28石、パワーリザーブ約40時間、28,800振動/時)を採用。SSケース&ブレスレット。φ40㎜。100m防水。27万5000円。25万3000円のラバーストラップモデルもあり。

GMT、マリーンともにインデックスや各針にはスイス製ルミノバが充填され、夜間の視認性が確保されている。ラグジュアリーを追求するとともに日常で身につけることを前提とした、タイメックス アトリエらしい実用的なディテールだ。

「高級なムーブメントを積んで、ラグジュアリーを謳うことは簡単です。でも、それではタイメックスで作る意義がないでしょう? 価格も含めての、時計デザイン。アイデンティティを守るうえで、そこを避けては通れません」。

他ブランドには絶対できないことをやっている──。そう語るガリ氏の顔には、“アメリカの国民時計”ブランドのデザインを統べてきた人間としての矜持が滲む。

右に倣えではない多様性が重んじられるとともに、あらゆるモノの価格が高騰している現代の時計選びにおいて、より重要度を増すのが、スペックに寄らず自身で本質を見抜く審美眼ではないだろうか。そして価格のみを価値観の拠りどころにしない確かな審美眼をもつ者にとって、“タイメックス アトリエ”コレクションの時計は、何よりもワイズ(賢い)なラグジュアリーウォッチの選択と断言できる。

「ワイズ・ラグジュアリー? それはイイ表現ですね! たしかにVery Wiseな選択だと思いますよ(笑)」とガリ氏。ちなみに昨年、アメリカで先行発売されたモデルについては3日間で初期ロットのすべてが売り切れたという。日本でも発売されており、公式オンラインストア(AM10:00〜)および、オンタイム渋谷ロフト店内のタイメックス渋谷BASEでの販売となる。ピン!とアンテナが反応したアナタには、速攻のアクションをおすすめしたい。

なおコレクションの今後の展望については「第1弾モデルはスポーティなデザインですが、より小径のクラシックなモデルもリリースする予定です」とのこと。こちらも大いに期待しようではないか。

「タイメックス アトリエ」コレクションの販売は
TIMEXオンラインストア https://www.timexwatch.jp/
オンタイム渋谷ロフト店内 TIMEX Shibuya Base https://www.ontime-move.watch/stores/

お問い合わせ/ウエニ貿易☎03-5815-3277

文/秦 大輔