2018.10.26

オーデマ ピゲの“ウチの薀蓄”「ロイヤル オークの秒針は1分間で1周しない!」

秒針が載せられない薄型自動巻きの傑作

今もオーデマ ピゲを代表する「ロイヤル オーク」が名作と称されるのは、優れたデザイン性に加え、1972年誕生の初代が搭載したキャリバー2121によるところが大きい。薄型自動巻きの傑作の一つであり、厚さはわずか3.05mm。それを積むロイヤルオークも薄さをかなえられ、それまでのスポーツウォッチにはなかった、エレガントな高級感が創出できたのだ。

現行の“エクストラシン”も、同じキャリバー2121を搭載する。基本設計が完成したのは、1967年。この息の長さが、傑作である証。永久カレンダーのベースにも使われるが、どれも時刻表示としては時分針しか備えていない。何故なら毎秒5.5振動という、特殊な振動数だから。中央に二番車を置き、三番車を介した四番車がガンギ車とつながる、最もベーシックで、それゆえ高精度が得やすい設計。四番車は通常、秒針を司るが、5・5振動では、いかに歯数を計算しても1分で1周させられないのだ。増速歯車を追加すれば、秒針は載せられる。しかしオーデマ ピゲは、シンプルな輪列で高精度であることを選んだ。

真偽は定かではないが、一説によれば当初、毎秒6振動の設計だったが、パワーリザーブ不足だったため振動数を落として解決したとか。しかし秒針を持たずとも、キャリバー2121が傑作である事実は、揺らがない。

 

特殊な振動数ゆえ、仮に秒針をつけても1分間で1周しない

1分以上かけて四番車が1周
現行が搭載するCal.2121は、仕上げも見事。毎秒5.5振動は他に例がなく、傑作ムーブメントをより個性的にするが、四番車は65秒以上かけて1周するため、秒針は載せられない。今もセンターローターの自動巻きとしては、世界最薄。22金製のローターは、ルビー製のベアリングが備わるレールに載せて設置されている。

 

ロイヤル オーク オートマティック エクストラシン
初代YGモデルの姿が蘇る

1977年に誕生したYGのCal.2121搭載機が、復活。深みがあるブルーのプチ・タペストリー・ダイヤルが、いかにもロイヤル オークらしい。特徴的な八角形ベゼルを留めるビスが、色の対比で際立った。そのビスの向きは、すべてキレイに揃っている。自動巻き。径39㎜。18KYGケース&ブレスレット。580万円。
お問い合わせ先:オーデマ ピゲ ジャパン

 

 

[時計Begin 2018 AUTUMNの記事を再構成]
写真/小澤達也(Studio Mug)、岸田克法、谷口岳史 文/髙木教雄、岡崎隆奈