2018.05.02

【タグ・ホイヤーの工房へ行ってきた #1】クロノの革命児が推し進める 自社キャリバーの拡大計画

いつの時代も「前進」あるのみ

進化した自社製クロノグラフ・ムーブメントと独創的な外装とでタグ・ホイヤーは快進撃を続けている。
そんな世界的なヒットを受け、生産体制を強化。一層の安定供給を約束する設備とスタッフとが整った。

行ってきたのはココ!

タグ・ホイヤー ラ・ショー・ド・フォン本社
時計製造の聖地に建つスイス屈指の巨大施設
タグ・ホイヤーの本社があるラ・ショー・ド・フォンは、多くの関連企業が集まるスイス時計産業の中心地の1つ。その地に1860年に創業したタグ・ホイヤーは、広大な敷地に工房をはじめ、開発・製造部門、アフターサービスや製品管理部門なども集約。

伝統的な手仕事と量産性を両立
オウタヴィアのケースに収められたCal.ホイヤー02の自動巻きローターの取り付け作業。精密ドライバーを使った丁寧な手仕事で、ムーブメントは完成する。裏蓋を取り付けた後、全品が防水検査にかけられる。

ケーシングとプロトタイプ、2つのアトリエを増強!

自社製のキャリバー ホイヤー01は、2015年12ピース構造の複雑な造形美を持つ新生カレラのケースに身を包んだ。そして2017年、復刻となったオウタヴィアに積まれたのは、新型キャリバー ホイヤー02だった。モダンとヴィンテージ、それぞれの自社製クロノグラフ・コレクションは、世界的な大ヒットに。そして多くの需要に応えるべく、タグ・ホイヤーはラ・ショー・ド・フォン本社の製造・開発に関する3つの部門を増強した。その1つが、「T2ワークショップ」だ。
T2とは、スイス時計業界での専門用語でケーシングや針付けなどの工程を意味する。ここでは約50名もの技術者が働き、最新の組み立てロボットが導入された。ムーブメントへのダイヤルの取り付けやケーシング、自動巻きローターの取り付けなどは、伝統的な手仕事が堅持される。一方、慎重な作業が要求される針の取り付けを行うのは、人が操作するロボット。針が決して外れることなく、かつ針を圧入する際にムーブメントに悪影響を与えることがない絶妙な力加減を自動化することで、品質の安定化を図ったのだ。2つの自社製クロノは、いずれも3カウンター。計6本の針が的確な位置に正確な圧力で次々と設置されていく。この専用マシンは最大8本の針までセットでき、今後登場するであろうより複雑なモデルの自動化も対応可能だ。
そして増強された第2の部門が、プロトタイプ製作のアトリエである。高性能な3Dプリンターが導入されたことで、デザイナーは実際の形状を即座に検討できるようになった。さらに小型ながら高性能な切削と旋盤の各CNCマシンを設置。ケースや微細なムーブメント部品まで製造でき、完璧なプロトタイプを作り出せるという。外装と機械とを統合して検証するプロトタイプ製造により、タグ・ホイヤーの新作は、より高品質で高性能に進化する。

ケーシングを待つムーブメントと外装
左は針付けを終えたダイヤル、右はケース。いずれもオウタヴィア用だ。ダイヤルが設置されたムーブメントには、簡易のリューズが取り付けられ、作動具合を確認しながらケーシングを行う。ケース側には既にプッシュボタンが取り付けられているのが見て取れる。

外光が豊かに注ぐモダンなワークショップ
約50名が働くT2ワークショップ。大きく窓を取り、豊かな外光の下で作業を進めるのが、スイス時計産業の伝統だ。各作業台には空気清浄機が設置され、クリーンな環境を保持。

専用治具で針付けを待つ
ダイヤルは、裏側に溶接した2本の脚で、ムーブメントに正確に設置される設計。その後、写真のように黄色い専用治具に収められ、自動針付けロボットへと運ばれる。

高性能CNCマシンを設置
プロトタイプ製作のアトリエに置かれたCNCマシンの1つ。時計製造に特化した精密加工を得意とするマシンで、ピニオンギアといった微細な部品も切削加工できる。

安定した精度を誇るホイヤー01&02を搭載!!

立体感際立つ小径モデル
タグ・ホイヤー カレラ キャリバー
ホイヤー01 クロノグラフ
12ピース構造のケースや奥行きあるスケルトンダイヤルはそのままに、43㎜に小径化。立体感豊かな造形美が濃縮され、かつ日本人には着けやすいサイズにCal.ホイヤー01を収めた。タキメーターを置くベゼルは、硬質なセラミック製で。自動巻き。径43㎜。SSケース&ブレスレット。58万5000円。

新キャリバー搭載で復刻
オウタヴィア ホイヤー02
クロノグラフ
数あるバリエーションの中からファンの人気投票で1966年製モデルを復刻。オリジナルと同じ横3 つ目は、新型Cal.ホイヤー02によって再現された。エレガントな印象を添える7連のライスビーズ・ブレスレットも、オリジナルに倣う。自動巻き。径42㎜。SSケース&ブレスレット。58万円。

[時計Begin 2018 SPRINGの記事を再構成]
写真/岸田克法 文/髙木教雄 構成/市塚忠義