2018.05.06

【タグ・ホイヤーの工房へ行ってきた #4】見事に息を吹き返した ダッシュボードクロック!!

どの年代のキャリバーもキッチリ修復

本社内のアフターサービス部門は、歴史的タイムピースの修復も担当。
メゾンの歴史を彩る名作ラリーマスターが、まさに復活の時を待っていた。

ありし日の姿を取り戻すダッシュボードクロック

修復を終えたラリータイマーのムーブメントは、新品と見紛うほどにピカピカ。右がストップウォッチのモンテカルロ、左がクロックのマスタータイム。

修復前のラリータイマー。モンテカルロは、1分間を針で計時し、窓の数字で分単位を積算する仕組みだ。マスタータイムは"飛び数字"とマニアが呼ぶ初期タイプ。

ラリータイマーの修復を担う日本人技術者。陽気に記念撮影に応じてくれた。

いつの時代のモデルでも修復可能な万全なる体制

今のタグ・ホイヤーの快進撃は、2014年にジャン-クロード・ビバー氏がCEOに就任したことに始まった。時計界の名伯楽は、前述の製造部門の増強に加え、アフターサービスの強化も厳命したという。その中核を成すのが、本社内にあるアフターサービス部門のアトリエ。ここでは現行モデルの修理だけでなく、メゾンの歴史的タイムピースの修復も日々行われている。取材時に修復されていたのは、1959年製のラリータイマー。その名の通り、ラリー用のダッシュボードクロック「マスタータイム」とストップウォッチの「モンテカルロ」とがセットになったホイヤー時代の名品だ。その修復を担当していたのは、なんと日本人女性。7年前からタグ・ホイヤーで働き、修復部門に抜擢されたという。
 ほかにも創業時から身上としてきた高精度計時の歴史を物語る19世紀初頭に作られたストップウォッチや1970年代のクロノグラフなどが、それぞれ専門の修復師の手で復活の時を待っていた。ビバー氏は以前のインタビューで「ヴィンテージと現行品とを区別しない」と語った。その言葉を体現するのが、どの時代の自社製品も修復可能なアフターサービス部門の存在。完璧なアフターサービスで、タグ・ホイヤーはユーザーに安心を提供する。

100年前のストップウォッチが蘇る
20世紀初頭に製作されたストップウォッチが修復中。そのムーブメントは、上にあるモンテカルロに酷似する。ケースやダイヤルも含め、当時の機能と姿とが蘇るよう修復する。

ホイヤー時代のクロノもお任せあれ
ホイヤー時代のヴィンテージなクロノグラフも修理可能。ケースから取り出して部品交換やオーバーホールを施すことで機能を取り戻す。修理で元通りになるのが、機械式の魅力。

修復に必要な多彩な治具も再生産
ズラリと並んだ金属や樹脂製の道具は、ムーブメントを修理・組み立てる際、固定するための治具。古いモデルの修理の度に順次再生産され、各時代のモデルに対応可能になった。

左リューズまで忠実にオリジナルを再現!
ホイヤー モナコ キャリバー11 クロノグラフ
左リューズを特徴とする時計史に残る角型レーシング・クロノの姿が、完璧に現代に再現された。横方向に伸びる植字のバーインデックスは、今見ると実に新鮮。自動巻き。ケース39×39㎜。SSケース。カーフストラップ。63万円。

[時計Begin 2018 SPRINGの記事を再構成]
写真/岸田克法 文/髙木教雄 構成/市塚忠義