2018.08.17

【シャネルの工房へ行ってきた #2】シャネルの快進撃は「ムッシュー」から始まった!

 

クラシックなダイヤルにモダンなムーブメント

シャネルは2016年から3年連続して自社製ムーブ搭載モデルを発表してきた。
その記念すべき初号機は、エレガントな外観に独創的な機構を秘めている。

デザインを先行し、美を極める「Calibre 1.」
自社製ムーブメントは、G&Fシャトランで手組みされる。固定台やピンセットまでもブラックにするのが、美へのこだわり。地板の外周と歯車周囲をわずかに立ち上げて造作するなど、作り込みにも凝る。

 

ユニークなメカニズムと美しいデザインとの融和

2011年、シャネルはG&Fシャトランにムーブメントの開発部門を設置した。そして2016年、初の自社製キャリバー1.を搭載したムッシュー ドゥ シャネルを発表。数字を主役に時を刻むジャンピングアワーに240度のレトログラードミニッツを組み合わせたユニークな機構を持つダイヤルは、シャネルらしくクラシックでエレガントな仕立てに。そして裏側に姿を見せるムーブメントは、地板とCを象るブリッジとを黒に染め、テンプと歯車とは星を象るなどシャネルらしい色やディテールがちりばめられている。これらの機構やムーブメントのデザイン、さらに歯車の配置に至るまで、すべてパリのクリエイションスタジオがデザインし、開発部門はそれに合わせて設計を進めたという。美を最優先するこれもまたシャネルらしさ。独創的機構と美観とが見事に調和する。

 

全パーツに手抜かりなく上質な仕上げを施す
ムッシュー ドゥ シャネルを構成する主要パーツ。ジャンピングアワーのディスクの内側の切り欠けが、レトログラード分針と連携する仕組み。

 

シャネルらしさが随所にちりばめられる
テンプは星型。歯車も5本のフレームで星を模す。輪列はCを象るブリッジに合わせた配置に。ライオンの紋章が自社ムーブの証だ。

 

手仕事の伝統を継承し高品質を堅持する
針付けも手作業。ジャンピングアワーの窓のフレームのビス留めも人の手で行い、伝統的なウォッチメイキングをG&Fシャトランは継承。

 

ダイヤルにも〝らしさ〞が潜む
ムッシュー ドゥ シャネル

アラビア数字は、オリジナルのデザイン。上質でクラシックな設えのダイヤルに、モダンな印象を添えている。ジャンピングアワーの窓はヴァンドーム広場がモチーフ。手巻き。径40㎜。18Kベージュゴールドケース。アリゲーターストラップ。410万円。

 

 

[時計Begin 2018 SUMMERの記事を再構成]
文/髙木教雄 構成/市塚忠義