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2019.04.27
【ラドーの工房へ行ってきた!!】キズがつかない時計ケース、ラドーのハイテクセラミック技術の秘密とは?
留まることを知らないラドーのハイテクセラミックス技術
「キズがつかないケース」の考案から半世紀
1962年、ハードメタルを時計界で初めて使用。以来ラドーは、高い耐傷性を追求してきた。そのひとつの到達点が、多様なハイテクセラミックスだ。その色や質感、造形力で時計界をリードする。
行ってきたのはココ!
グループならではの分業制による高品質
セラミックの外装製作を担うのは、スウォッチ グループ傘下のコマデュール社。サファイアクリスタルと穴石用の人工ルビーも製造する硬質素材のスペシャリストだ。ここで製造された外装は、ラドー本社へと送られ、ケーシングや精度・品質チェックなどを経て、出荷される。
業界最先端のカラーセラミックス技術
多彩なカラーを自在に操る30年を超える技術の研鑽
セラミックの腕時計は、他社にも数多く存在する。しかしラドーほど、多様なセラミックを持つブランドは他にはない。セラミックは、広義には食器などの陶磁器も含む。そこでラドーは、腕時計の外装に用いる超高硬度で高品質なセラミックをハイテクセラミックスとの名で区別している。時計界で初めてそれをブレスレットに使用したのは、1983年のこと。’86年にはケースまでハイテクセラミックスで造作することに成功。その色は、他社も多用するブラックだったが、’91年にはホワイトを実現。以降グレー、ブラウン、ブルー、グリーンと、カラーのハイテクセラミックスを次々と生み出してきた。
これほど多様なカラーを揃えられるのは、上質な素材と丁寧な作業工程の賜物である。その技術はラドーの開発部門が考案し、スウォッチ グループ傘下のコマデュール社が製作を担う。
ハイテクセラミックスの原材料は完璧に精製し、数ミクロンの微粉末に加工された酸化ジルコニウム。そのままでは成型できないため、同量の樹脂系結合剤(バインダー)と混ぜ合わせ、粒状とする。この状態をフィードストックと呼ぶ。カラーセラミックの場合は、バインダーとともに金属系の顔料を添加。この顔料も何種類も試し、均一な色を安定して作り出せるようにしたのだという。フィードストックは、後述する独自の技術で精密に成型される。成型後は、60℃のアルコールに2日間浸け、焼成時に焦げるバインダーを徹底的に除去。このノウハウもラドー独自で、鮮やかな発色をかなえる重要な工程である。その後、電気炉で1450℃で高温焼成されるが、その際に約23%縮む。その収縮率も完璧にコントロールする術を、ラドーは心得ている。上にあるように、最終仕上げも丁寧できめ細かい。30年を超える技術の研鑽が、ラドーのハイテクセラミックスをより美しく、色鮮やかにする。
ダイヤルにも凝る薄型セラミック
オープンダイヤルに機械式搭載を誇る
[時計Begin 2019 SPRINGの記事を再構成]
文/高木教雄 構成/市塚忠義