2020.09.12

チューダー50年の歴史を刻み続けるねじ込みプッシュの堅牢クロノ【ロングセラー変遷記】

手巻きから自動巻き、そして自社キャリバーに
50の歴史を刻み続けるねじ込みプッシュの堅牢クロノ

1970年に登場したチューダー初のクロノグラフ「オイスターデイト」。ねじ込み仕様などでタフネスを追求した同社クロノグラフの50年の歴史を追う。

半世紀にわたり受け継ぐ
個性的でタフな時計の美学

ロレックスの創業者ハンス・ウイルスドルフが、兄弟ブランドとして1926年に立ち上げたチューダー。その初期の名作「オイスター プリンスサブマリーナー」に続き、ブランドを支えたのが’70年誕生の「オイスターデイト」である。同社初のクロノとなる本作は、グレー×黒文字盤に“ホームベース”の愛称で呼ばれる五角形マーカーを擁したスポーティモデルだが、他にもねじ込みプッシュで気密性を高めたケースサイド、45分表示の積算計などの多様な個性を兼ね備えていた。

誕生の翌年には、鮮やかなブルーを文字盤やベゼルに使った第2世代の通称“モンテカルロ”が登場。本作ではムーブがカム式のバルジュー7734から、ワンランク上のコラムホイール式バルジュー234に変更となるわけだが、以降のデザインの変遷は搭載ムーブの進化によるところも大きい。

’76年発表の第3世代では自動巻きのバルジュー7750に変更され、この名機の特性によって文字盤が縦並び3つ目となり、ローター分厚みが増したケーススタイルから“ビッグ・ブロック”の愛称に。また、改良型バルジュー7750搭載の第4世代では、洗練された曲線ケースに加え、サファイアガラスなどの装備も充実させている。

そして近年、オイスターデイトの伝統は新たなシリーズ「ブラックベイ クロノ」へ継承された。同モデルではブライトリングCal.B01の自社アレンジムーブを搭載しつつ、ねじ込みプッシュボタンを装備。チューダーが長年培ってきた堅牢の美学は、人気ダイバーズの中で今も息づいている。

 

Original model(オリジナルモデル)
1970年
ブランド初のクロノ
「オイスターデイト」

チューダー史上初のクロノグラフとして誕生。カム式の手巻きCal.バルジュー7734を搭載し、ベゼルはブラックとSS製、2種類のタキメーター仕様が存在した。また、特徴的な五角形アワーマーカーの形状から”ホームベース”の愛称で親しまれた。

 

1970年
プロトタイプのみの幻の回転ベゼル仕様

同じく1970年に開発されたRef.7033。文字盤デザインや搭載キャリバーは変えずに、ブラックのアルマイト加工インサートを用いた12時間ベゼルを採用。シリーズでは貴重な回転ベゼル付きモデルだったが、プロトタイプの製造にとどまっている。

2010年に復刻版が登場
シリーズ誕生40周年に発表されたヘリテージクロノ。試作のみに終わったRef.7033の五角形ア ワーマーカーや回転ベゼルを踏襲しながら、より洗練されたデザインに。

<b>1970年<br>プロトタイプのみの幻の回転ベゼル仕様</b><br>同じく1970年に開発されたRef.7033。文字盤デザインや搭載キャリバーは変えずに、ブラックのアルマイト加工インサートを用いた12時間ベゼルを採用。シリーズでは貴重な回転ベゼル付きモデルだったが、プロトタイプの製造にとどまっている。
<b>2010年に復刻版が登場</b><br>シリーズ誕生40周年に発表されたヘリテージクロノ。試作のみに終わったRef.7033の五角形ア ワーマーカーや回転ベゼルを踏襲しながら、より洗練されたデザインに。

 

 

1971年
鮮やかブルーの通称モンテカルロ

1971年に登場した第2世代の7100シリーズ。文字盤の外周やインダイヤル、タキメーターベゼルに鮮烈なブルーを取り入れ、カジノのルーレット盤を思わせる意匠から”モンテカルロ”と呼ばれた。搭載ムーブはコラムホイール式のバルジュー234に変更。

2013年に復刻版が登場
1970年代の”モンテカルロ”を復刻したヘリテージクロノブルー。ビビッドな青の採用はもちろん、オリジナルの45分積算計と日付表示を再現するCal.2892を搭載。

<b>1971年<br>鮮やかブルーの通称モンテカルロ</b><br>1971年に登場した第2世代の7100シリーズ。文字盤の外周やインダイヤル、タキメーターベゼルに鮮烈なブルーを取り入れ、カジノのルーレット盤を思わせる意匠から”モンテカルロ”と呼ばれた。搭載ムーブはコラムホイール式のバルジュー234に変更。
<b>2013年に復刻版が登場</b><br>1970年代の”モンテカルロ”を復刻したヘリテージクロノブルー。ビビッドな青の採用はもちろん、オリジナルの45分積算計と日付表示を再現するCal.2892を搭載。

 

 

1976年
自動巻きになって縦3つ目に変更

初の自動巻きキャリバーを採用した9400シリーズが登場。搭載ムーブが手巻きのバルジュー234からバルジュー7750に変更された。これにより文字盤の配列は従来の横2つ目から縦3つ目へ。また、厚めのケース形状から”ビッグ・ブロック”の愛称も。

1980年代当時のポスター
1980年代の広告では白黒反転文字盤のモデルを採用。鎧を着けた騎士のイメージとともに、”ビッグ・ブロック”の由来となるケースの堅牢性に焦点が当てられている。

<b>1976年<br>自動巻きになって縦3つ目に変更</b><br>初の自動巻きキャリバーを採用した9400シリーズが登場。搭載ムーブが手巻きのバルジュー234からバルジュー7750に変更された。これにより文字盤の配列は従来の横2つ目から縦3つ目へ。また、厚めのケース形状から”ビッグ・ブロック”の愛称も。
<b>1980年代当時のポスター</b><Br>1980年代の広告では白黒反転文字盤のモデルを採用。鎧を着けた騎士のイメージとともに、”ビッグ・ブロック”の由来となるケースの堅牢性に焦点が当てられている。

 

 

1995年
サファイアクリスタルを風防ガラスに採用

1990~2000年代にラインナップした第4世代の79200シリーズ。新たにサファイアクリスタル風防を採用したことで”サファイア・クロノグラフ”の愛称に。ケースが丸みを帯びた曲線デザインへと生まれ変わり、ブラックのタキメーターベゼルを装備。

2000年代初頭のイメージ広告
21世紀に入っても本作が訴求するのはやはり堅牢性。ねじ込みプッシュ式のタフなクロノが、過酷な環境下で使えるプロフェッショナルツールとしてアピールされた。

<b>1995年<br>サファイアクリスタルを風防ガラスに採用</b><br>1990~2000年代にラインナップした第4世代の79200シリーズ。新たにサファイアクリスタル風防を採用したことで”サファイア・クロノグラフ”の愛称に。ケースが丸みを帯びた曲線デザインへと生まれ変わり、ブラックのタキメーターベゼルを装備。
<b>2000年代初頭のイメージ広告</b><br>21世紀に入っても本作が訴求するのはやはり堅牢性。ねじ込みプッシュ式のタフなクロノが、過酷な環境下で使えるプロフェッショナルツールとしてアピールされた。

 

 

現行モデル2019年
60万円台で手に入るコンビの自社クロノ

昨年発表の「ブラックベイクロノ S&G」。かつての人気ダイバーズをモチーフとし、ねじ込みプッシュボタンを装備。ケースのゴールド使いも絶妙だ。自動巻き。径41㎜。SS×18KYGケース&ブレスレット。68万9000円。問い合わせ:日本ロレックス / チューダー

ムーブメントはCal.MT5813を搭載
搭載するのはブライトリングのCal.B01をベースに、自社でアレンジを施した自動巻きムーブ。高性能はそのままに、自社製の耐磁性シリコンバランススプリングを搭載した。

<b>現行モデル2019年<br>60万円台で手に入るコンビの自社クロノ</b><br>昨年発表の「ブラックベイクロノ S&G」。かつての人気ダイバーズをモチーフとし、ねじ込みプッシュボタンを装備。ケースのゴールド使いも絶妙だ。自動巻き。径41㎜。SS×18KYGケース&ブレスレット。68万9000円。<strong>問い合わせ:</strong>日本ロレックス / チューダー
<b>ムーブメントはCal.MT5813を搭載</b><br>搭載するのはブライトリングのCal.B01をベースに、自社でアレンジを施した自動巻きムーブ。高性能はそのままに、自社製の耐磁性シリコンバランススプリングを搭載した。

 

[時計Begin 2020 SUMMERの記事を再構成]
文/岡崎隆奈 構成/市塚忠義