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2020.12.07
パイロットウォッチの瞬時に時刻を読み取るための工夫とは?
視認性
雲上の強烈な太陽光線から夜間飛行まで
瞬時に時刻を読み取るための工夫とは?
理想は時刻を“読む”のではなく、直接意識に飛び込んでくる感じ。一流の航空時計のダイヤルには奥深くも高級なギミックが秘められる。
視認性は命を守るための〝最重要スペック〟
航空機を操って空を飛ぶ飛行は、当然ながら墜落したらただでは済まない。
ゆえに、パイロットはこれを防ぐための方策を全力で駆使することになるわけだが、その要となるのが、時計だ。飛行は燃料計算や対地速度、針路の把握といったあらゆる行為が“時間”に依拠するからである。
航空の黎明期、飛行士たちは懐中時計を脚に括りつけたりしてなんとかしのいでいたが、腕時計の登場で利便性(安全性)は大きく向上。一方、航空機も動力性能や航行距離が向上し、しかるべくして計時の効率もバージョンアップを余儀なくされた。視認性が、航空時計の命題となったのだ。
この頃に確立された機構は、現行製品にも確かに息づくばかりでなく、技術や素材の向上で目覚ましい進化を遂げている。ロンジンの“タイプ A‐7”は実際クルマの運転でも威力を発揮するし、ラコのビッグサイズは単純な発想だが使ってみると意外に文字盤が見やすいことに驚く。“命をかけて時間を計る”プロパイロットのための視認性の素晴らしさは、我々の日常においては思いがけぬハイスペックとなって活躍することになるのだ。
装着したままでも見やすい傾斜ダイヤル
操縦桿を握った状態で文字盤の12時位置が真上になるよう、ダイヤルが右方向へ40度傾斜。フライト時に手首を動かさなくても本来の位置で文字盤を読むことができるため、視認時間が短縮され、読み取りの精度も向上する。
オリジナルのデザイン、質感までも忠実に再現!
現行は1935年に開発され、アメリカ陸軍の航空隊が使用したオリジナル
設計用のスケッチをもとに復刻された。退色したインデックスの色合いもリアルに再現されていることがわかる。
瞬時に時刻を読み取るための大ぶりのコブラ針
時計の視認にはインデックスもさることながら、指針の形状やサイズも重要。パイロットウォッチの分野でも名を馳せるゼニスの"パイロット"は、伝統的な、存在感のあるコブラ針(カテドラル針)を用いることで美しさとともに視認性も向上させている。
ルイ・ブレリオの偉業をゼニスの時計がサポート
1909年7 月25日、飛行家のルイ・ブレリオはゼニスのパイロットウォッチ(右)を装着し、フランス・カレーからイギリスまで、史上初のドーバー海峡横断飛行を成功させた。
圧倒的に大きく見やすい径55㎜ケース
ケースを大型化することで必然的に文字盤、及びそこに表示される情報を拡大し、視認性を向上させることができる。ドイツの老舗・ラコが第二次世界大戦時、ドイツ空軍に納入していたモデルは径55㎜。反射を抑えたマットブラックダイヤルと相まって、抜群の視認性を実現している。
常時発光マイクロガスライト採用
最新テクノロジーを駆使したモデル。指針と、ダイヤル外周のバーインデックスに24時間自発光する独自の「マイクロガスライト」を計14個セットし、夜間など暗い場所ではもちろん、昼間の視認性も飛躍的に高めた。ダイヤルデザインは1940年代のパイロットウォッチがモチーフ。
大型のアラビア数字インデックスを採用
インデックスの様式はアラビア数字と、バー状のグラフィックが主流だが、航空時計では1 ~12まで個別の数字で、識別しやすいアラビア数字を採用する例が多い。"IWCのパイロット・ウォッチ"はその代表格で、大きく明快な書体によって効力を倍増させている。
航空史に貢献したIWCの歴代航空モデル
1936年
耐磁性のある脱進機を搭載。離陸時刻をセットするトライアングル・ポインター付き回転ベゼルや、ガラス製の風防を備えていた。
1944年
英国軍用に開発された 機種。文字盤に同軍の 証・ブロードアロー、 裏蓋にはWatch Wrist Waterproofを意味する 「W.W.W」の文字。
1948年
英国空軍に納入された 「パイロット・ウォッチ・ マーク11」は耐磁性の 軟鉄製インナーケース を採用。30年以上のロ ングセラーに。
1952年
"マーク11"は時代を 追うごとにマイナーチ ェンジ。'50年代には 夜光塗料がトリチウム となり、ダイヤルにⓉ マークが記された。
[時計Begin 2020 autumnの記事を再構成]