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2020.12.08
<気になるあの人は、どんな時計?>パテック フィリップの洒脱な着け方とは?
男性が身に着けるアイテムのなかでも、高額かつ種類も星の数ほどある本格時計。それだけに時計選びは難しいと言われています。ではセンスが良いと評判のあの人は、一体どんな時計に行き着いたのでしょうか? 出会いのきっかけから目の付け所、実際の着けこなし方など、気になるポイントをうかがいました。
「“大人モード”になるためのスイッチです」
西野大士さん
NISHINOYA代表
「スーツ姿を引き立てるカラトラバの魅力に惹かれて」
ファッション系のPR会社を運営する傍ら、自ら興したパンツブランド“NEAT”のデザイナーも務めている西野大士さん。手掛けるブランドの絶妙なチョイスに加え、個性的なファッションセンスにおいても若者を含む幅広い世代から支持を受けるネクスト・アイコンです。時代を先取りするそのフリーダムなファッションスタイルには、一体どんな時計をどのように合わせているのでしょう。
「現在のPRビジネスを始める以前は、ブルックス ブラザーズというファッションブランドに勤めていました。最終的にはプレス職となりましたが、始まりは大阪ショップにおける販売員から。その当時、70代の名物スタッフさんと一緒に働いており、その方がパテック フィリップのカラトラバを着けていたんです。聞けば父親から譲り受けた時計とのことで、その方のスーツスタイルと相まって非常に貫禄があり、ひと目で僕の憧れの象徴となったのです。当時、僕はまだ20代。自由になるお金も時計に関する知識も乏しかったのですが、いつか僕も時計を買うなら、絶対にパテックと心に決めたことを覚えています」
その後、仕事先でお世話になったある先輩のスタイルから、新たな考えが生まれたという西野さん。
「その人は稼ぎも立派な上に、服装に関しても自身のスタイルを確立させたドレッサー。その人がパテックのスポーツモデルを着けていたんです。“パテック=カラトラバ”という図式を頑なに持っていた僕にとって、ラバーベルトのスポーツパテックは、かなり衝撃の存在。聞けばアクアノートというモデルとのことで、その人は初期の小ぶり型を洒脱に着けていたのです。スポーティでありつつ高級時計らしい品格に加え、モダンな存在感も兼備しており、パテックにはこうした選択肢もあるのかと感銘を受けたのでした」
「自分のスタイルに本当にマッチしているのか?」
そして自身の会社“NISHINOYA”をスタートさせ、色々なブランドやショップのPRを手掛けることとなった西野さん。あるときヴィンテージ時計店として知られる江口時計店のPRを任されることになり、絶好のチャンスが訪れます。
「江口時計店は目利きに定評のある実力派ヴィンテージショップ。折りを見てカラトラバの在庫があるかどうかを尋ねました。そしたら即座に3796というモデルを見せてくれたのです。確か100万円くらいだったと記憶していますが、憧れのイメージとぴったり合致する素敵なモデル。しかし同時に“待てよ?”という内なる声も聞こえてきて……。というのも、カジュアルな格好ばかりで暮らしているそのときの自分に、こういった正統派ドレスウォッチを着けるシーンなどあるのかなと。なんとなく理想先行で憧れ続けてきましたが、実物を目にしてリアルにその後のパテックライフを想像したところ、少し迷いも出てきたというわけです」
そんな逡巡のなか西野さんが思い浮かべたのが、あの先輩のアクアノート。ドレスウォッチではなくスポーツモデルならば、ラフなコーディネートにもマッチするのではないかと思い至り、思いきってアクアノートを手に入れたと振り返ります。
「言うなればバランス取りの発想です。よくドレッシーなスーツスタイルの堅苦しさを緩和させるため、あえてスウォッチなどを取り入れるといった手法を目にします。僕の場合はその逆バージョン。ポップでカジュアルなスタイルに重みを添えるため、本格時計をチョイスするという考え方。アクアノートは貴金属ではないスチールケースやアクティブなラバーベルトに加え、全アラビア数字というモダンな要素がひとつのポイントです。僕のような“軽い”着こなしに合わせることで、ちょうど良いバランスのルックスになるのではと考えたのです。時計は確かに時刻を見るための道具ですが、僕にとっては“オン”のスイッチを入れてくれる特別なもの。キチンとした時計を身に着けることで、装いの種類に関わらず“大人モード”になれる気がするのです」
「眼鏡の導入でさらに好バランスとなりました」
着用すればするほどアクアノートを気に入っていったと語る西野さん。自身初となる本格時計をもっと知りたいと調べていくうちに、“ジェラルド・ジェンタ”というキーワードにたどり着いたとのこと。
「本やネット等でパテック フィリップのスポーツモデルのことを調べていくうちに、時計界のレジェンドである希代の時計師、ジェラルド・ジェンタに行きつきました。さらに調べていくと、そのジェンタが手掛けた作品として、パテック フィリップのノーチラスというモデルがある、ということも知ることに。そうなると今度はどうしてもソレが欲しくなってしまい、お金を貯めてようやく今年手に入れることができたのです。アクアノートが黒文字盤であるのに対し、ノーチラスは白文字盤。キャップやシャツなど白いアイテムを着用するときは、白文字盤のノーチラスを選ぶようにしています。先ほど、“バランス取りのための本格時計”みたいなことに触れましたが、僕にとってパテックの発する重みは相当なもの。それゆえにもう少しルックス自体に“軽さ”が必要なのではと感じていました。そこで試行錯誤を繰り返し発見したのが、ユニーク系眼鏡の併用です。今日掛けている眼鏡はオリバー ゴールドスミスのトンボ型。こういったユニーク系眼鏡にカジュアルなコーディネート、そしてパテックの時計という取り合わせにより、僕らしいバランス感あるルックスが成立しているのです。まあ、完全に個人の主観ですけどね(笑)」
構成・文/長谷川 剛(zeroyon)、写真/小澤達也(Studio Mug)
初パテック フィリップとして西野さんが目をつけたアクアノートは、神田の時計ショップにて入手したものだそう。使い勝手の良いラバーベルトがポイントだと西野さん。
取材をお願いしたのは夏の後半の時期。古着のポロシャツにアウトドアテイストのあるショーツ、それにパテック フィリップのノーチラスという、一種アクロバティックなスタイル。白いキャップと白文字盤時計の軽快なコーディネートが西野さん流です。
ジェンタデザイン特有のスポーティ・エレガントなルックスを極めたいと手に入れたノーチラス。白文字盤がポップな装いに馴染んでいます。西野さんいわく「仕事のシーンも、遊びのときでも隔てなく着けています」
西野さんがパテック フィリップをバランス良く着けこなす一助として取り入れているユニーク系の眼鏡たち。ダブルブリッジや大型レンズなど、クセの強さが特に気に入っているとのこと。実に個性的かつお似合いです。