2026.10.27

ただの「外装」じゃない! 削る? 叩く? 高級時計の価値を高めるケース作りの秘密

【ホンモノの価値はココを見ろ! 時計選びの“審美眼”養成講座】
ケース製造

デザインの好みや直感、予算とのバランス、歴史への共感など、時計の魅力は十人十色。ただ、見どころを知ることで、時計が持つ真の凄みや価格の理由がより深く理解できる。本特集では、時計を構成する各要素の注目すべきポイントを、初心者にも分かりやすく解説。自分だけの確かな審美眼をしっかりと養い、運命の愛機を最高の手応えで選ぶ参考にしていただきたい。時計は、決して適当に選んではならないのだ。

ケース製造

削って形作るか叩いて変形させるか

金属製ケースの作り方は、主に2通りある。CNCマシニングセンタで塊から削り出す切削と、複数の金型を使い分け、その間でプレスを何度も繰り返して成形する鍛造である。

切削は、多軸の工作機械を使うことでほぼ1工程で成形できるのがメリット。また形状にほぼ制限がなく、複雑なフォルムを作り出すことができるほか、小ロットの生産にも向く。

鍛造は複数の金型を用いるため、初期投資がかかり、エッジが効いた造形には向かない。しかし繰り返し叩かれることで金属組織が密になり、強度と仕上げた際の美しさが切削より勝る。

もっとも近年は切削でも常温で高圧をかける冷間鍛造済みの材料を使っているため、鍛造と比べても強度や美観に大きな差は生じなくなっている。

CHECK POINT 切削か、鍛造か?

IWCは切削ケースのパイオニア

切削

IWCは1980年代初頭から切削によるケース製造に取り組んできたパイオニアだ。今では表裏両方向から削れるケース専用マシンを導入。30ミクロン以下という優れた加工精度でほぼ100%内製している。

IWC SCHAFFHAUSEN(アイ・ダブリュー・シー シャフハウゼン)
パイロット・ウォッチ・マーク XX・Mercedes-AMG PETRONAS Formula One™ Team

自社で切削ケースに取り組むきっかけとなったチタンをケースに採用。F1チームとのコラボモデルであり、針とインデックス、ストラップを特徴的なペトロナスグリーンでカラーリングした。約5日間のロングパワーリザーブが備わる自社製Cal.32111搭載。自動巻き。径40mm。チタンケース。ラバーストラップ。113万8500円。

問い合わせ:IWC シャフハウゼン
IWC シャフハウゼン公式サイト

パネライは2種類のチタンを鍛造で結合

鍛造

温度変化に敏感なチタンは元来、鍛造に向かない。それをパネライは、適切な温度間で繰り返し叩き、グレード2と5のチタンを鍛接してみせた。これは、包丁やナイフなどで見られるダマスカス鋼と同じ手法だ。

PANERAI(パネライ)
ルミノール フォージドチタン PAM01629

グレードの違いで色味が異なる2つのチタンを鍛接した独自素材は、切削・仕上げ加工で木目にも似た独特の波模様が浮かぶ。47mmの大型ケースは、最初期のルミノールの1つRef.6152/1に範を採った。限定100本。手巻き。径47mm。チタンケース。ラバーストラップ(カーフストラップ付属)。352万円。

問い合わせ:オフィチーネ パネライ
パネライ公式サイト

[時計Begin 2026 AUTUMNの記事を再構成]

※表示価格は税込み