2022.02.15

時計ライター髙木教雄が解説！　『ＬＶＭＨウォッチウィーク2022 新作時計レポート：ウブロ編』

髙木教雄（たかぎ・のりお）
1962年生まれ。1990年代半ばから時計を取材対象の1つとし、『時計Begin』をはじめとする時計専門誌やライフスタイル誌で執筆。

1月24日～28日に開催された「LVMHウォッチウィーク2022」。今年で3回目となるこちらのイベントは、世界の時計業界が注目する場であり、歴史ある時計見本市と並ぶ重要なイベントだ。期間中、タグ・ホイヤー、ゼニス、ウブロ、ブルガリの4社が新作を発表。春に開催される「ウォッチズ＆ワンダーズ」に先駆けて開催された、2022年初の時計見本市。各ブランドの傾向と髙木氏が注目する、おススメの3本をご紹介。

ウブロ：マテリアルの魔術師は、新と旧、両方の素材で魅せる。

原点回帰の「イエローゴールド」が非常にクラシック

まだ序盤戦であるにもかかわらず、今年もウブロの新作は、実に多彩であった。その中でまず注目したのは、素材。ウブロらしい、まったく新たなマテリアルが登場した……のでは、ない。意外にも、オールドマテリアルであるイエローゴールドを多用したのだ。実はウブロは創設当時、イエローゴールドのケースにラバーストラップを初めて組み合わせたことで注目された。その原点に回帰したのである。主力機である「ビッグ・バンウニコ」がイエローゴールドをまとうと、どこかレトロな雰囲気を帯び、新たな魅力を発揮している。ほか「クラシック・フュージョン」、「スピリットオブビッグ・バン」「ビッグ・バンインテグラル」の各コレクションにイエローゴールドの外装が新たに出そろった。

一体型ブレスレットが美しい「ビッグ・バンインテグラル」に3針が！

また自社製クロノグラフ・ムーブメントの「ウニコ」搭載モデルだけで展開されてきた「ビッグ・バンインテグラル」からは、新たに３針モデルが誕生している。現在時刻と日付だけを示すことから、シリーズ名は「ビッグ・バンインテグラルタイムオンリー」。３針であっても、サファイアダイヤルを採用し、ムーブメントを見せているのが、ウブロらしい。そこに見えるムーブメントは、フルオープンにふさわしい仕上げとパーツ形状へとモデファイされ、メカニズムとビジュアルとが一体化されている。外装素材にはチタンに加え、ブラックセラミック、そしてイエローゴールドをラインナップする。

加工が難しい素材さえも多面体ケースに仕上げる高い技術力

ウニコ搭載の新作にも、魅力的なモデルがある。「ビッグ・バンウニコサンブルーII」だ。世界的なタトゥーアーティスト、マキシム・ビューチ率いるサンブルーとのコラボモデル。タトゥーからインスピレーションを得た幾何学的な格子状の針とファセットカットを多用した多面体ケースによる造形美は、ウブロ・ファンにはお馴染みだろう。そのケースを今年、新たな３モデルで造作。このブラックセラミック製ケースは過去にもあったが、それはダイヤルも針もオールブラックでケースの仕上げも異なるものだった。それが今回、針がシルバーとなって視認性を高めた。ほかグリーンセラミックと18金マジックゴールドとをリリース。いずれも硬い難加工材であり、それを多面にファセットカットできる技術力に敬服。ウブロのセラミック加工技術が、アーティストの創造性を形にする。