2022.05.11

ヴァシュロン・コンスタンタン、A.ランゲ＆ゾーネ、パルミジャーニ・フルリエ、ウブロetc. 2022年もまだまだ続くラグスポ旋風

『時計ライター髙木教雄が解説！ 2022年新作時計レポート』Vol.2

髙木教雄（たかぎ・のりお）
1962年生まれ。1990年代半ばから時計を取材対象の1つとし、『時計Begin』をはじめとする時計専門誌やライフスタイル誌で執筆。

近年、時計界で大きなトレンドとなったラグジュアリースポーツウォッチのスタイルは、1970年代に確立された。それからほぼ半世紀を経た現在、“ラグスポ”はさまざまに再解釈され、多様化の時代を迎えている。

ヴァシュロン・コンスタンタン
18KYGを纏った「222」

ヴァシュロン・コンスタンタンは、1977年に発表した創業222周年記念モデル「222」で、最初期のラグスポのスタイルを築いたメゾンの１つ。ソリッドなブレスレットと一体を成す薄くフラットなケースに、溝を彫り込んだベゼルを組み合わせたデザインを手掛けたのは、当時新進であったヨルグ・イゼックである。今あるオーヴァーシーズの原型となったメゾンのマイルス―トンが、ヒストリーク・コレクションとして復活を果たした。

ケースとブレスレットはYG製で、見るからに重厚。溝を切ったベゼルや六角形の中リンクがつなげるソリッドなブレスレットなど、デザインはオリジナルをほぼ踏襲しながら、ポリッシュとヘアラインの仕上げは、ともにより上質になっている。ケース前面５時位置にあしらう、マルタ十字が絶妙なアクセントに。レギュラーモデルでの帰還というのも、ファンには嬉しい。

A.ランゲ＆ゾーネ
フル・チタンで登場の「オデュッセウス」

ドイツの名門A.ランゲ＆ゾーネは2019年、ブランド初の120mの防水性を備えたステンレススチールウォッチ「オデュッセウス」で、ラグスポ市場に参入した。ブレスレット一体型ケースと装飾に凝ったブルーダイヤルは、1970年代に確立されたスタイルの踏襲である。一方でスモールセコンドを与え、ダイヤルの左右にアウトサイズデイトと曜日表示を持つデイデイトとし、メカニズムでランゲらしい個性を発揮していた。

2020年にはWGケースとラバーストラップの組み合わせが登場。そして今年は限定モデルとしてランゲ初のチタンモデルが発表された。ダイヤルを含む外装のデザインは、ステンレススチールモデルと同じ。しかしダイヤルカラーは、わずかに青みを帯びるチタンの色味に合わせ、ほのかにグレーがかった淡い色調のアイスブルーへと変更、文字盤に施される装飾も新たにされている。またケースとブレスレットのマット仕上げ部分を、ステンレススチールのヘアラインから梨地仕上げに改め、よりクールな印象に仕立て直した。チタンによる軽量な着け心地が、ランゲにあっては実に新鮮である。

パルミジャーニ・フルリエ
フライングトゥールビヨン搭載ながらケース厚8.6mm

ケースサイドにオーバーレイヤードした大型のラグとブレスレットとが、ひと続きの滑らかな曲線を描く。スポーティでエレガントな外装に自社ムーブメントを潜めて昨年登場した、パルミジャーニ・フルリエの「トンダ PF」コレクションには、自動巻きのフライングトゥールビヨンが、新たに投入された。ダイヤルを含めた外装すべてに、贅沢にもプラチナを使用。コレクションを特徴付けるのは、極端に短い植字のバーインデックスである。ダイヤルに広がる大きな余白はサンドブラスト仕上げとしてミニマルで静謐な雰囲気を醸し出し、その７時位置に配したトゥールビヨンを主役とする。

厚みが出やすいトゥールビヨン搭載ながら、ケースは8.6mm厚と薄く設えられ、白い輝きを放つプラチナの質感とも相まって、実にエレガントに仕立ててみせた。

ウブロ
カラフルなチタン＋セラミックケース

１月にブレスレット統合型の「ビッグ・バンインテグラル」から、初の３針モデル「タイムオンリー」をリリースしたウブロは、Watches & Wondersでは、新たなる素材使いを提示した。The Art of Fusionをコンセプトに掲げ、これまでケースにさまざまな異素材を組み合わせてきたが、新作「ビッグ・バンインテグラルチタニウムセラミック」では、ブレスレットまでもケースと同じチタン×ブラックセラミックのバイ・マテリアルとしたのだ。