2022.09.16

【ライバル時計対決 ♯02】IWC「パイロットウォッチ・タイムゾーナー・クロノグラフ」 vs ジャガー・ルクルト「ポラリス・クロノグラフ W T」

硬派ブランドのハイレベルな「人気機能」対決

腕時計の機能において、常に人気のトップを独走する機能、それがクロノグラフ。今どき、何に使うの? なんて、聞くなかれ。クロノグラフという機能に、理屈はいらない。プッシュボタンを押すと針が動き出す。もう一度押すと止まって、さらにもう一度押すと元に戻る。この動作を見ているだけでも、十分に楽しい。クロノグラフのメカニズムは本当に複雑で、簡単に理解できるものではない。ダイヤルに並ぶインダイヤルが、なんか計器っぽくてカッコイイ。それが人気の理由でよいではないかと思う。

ダイヤルを賑やかにするもう一つの機能が、ワールドタイム機能だ。世界中の都市名が並ぶダイヤルの存在感は、別格。実際、世界をまたにかける商社マンなどにとっては、この上ない実用機能である。ワールドタイム機能と同じく、自国以外の時間帯がわかる機能として、GMT機能やUTC機能があるが、ワールドタイムに特別感を感じる人も多いだろう。

ダイヤル上の情報量が圧倒的に多くなる、クロノグラフとワールドタイム。この2つを組み合わせるには、緻密なセンスが必要だ。スッキリとまとめなければ、視認性の低下は避けられない。その点で、デザイン的にも機能的にも上手にまとめているのが、IWCの「パイロットウォッチ・タイムゾーナー・クロノグラフ(以下タイムゾーナーに省略)」とジャガー・ルクルトの「ポラリス・クロノグラフ WT(以下ポラリスに省略)」だ。どちらも迫力のある大型ケースに、人気の2大機能を見事に収めている。では、この2本の詳細を比較していこう。

先端の赤いIWCの24時間針(写真左)が、時針と同じ長さとなっているのに対し、ジャガー・ルクルトの24時間針は、細めのブラックで、分針に長さを合わせている。

まず、外装面。IWCのタイムゾーナーのケース素材は、ステンレススティール。ケースは厚さ16.8㎜、直径46㎜と、大型。一方、ジャガー・ルクルトのポラリスのケース素材は、チタン。ケースの厚さは12.5㎜、直径は44㎜で、IWCと比べるとひと回り小さい。クロノグラフのプッシュボタンは、IWCが丸型なのに対し、ジャガー・ルクルトはスクエア型で、これは好みの別れるところであろう。防水性はIWCが6気圧防水、ジャガー・ルクルトが10気圧防水となっている。

ケースサイドは、どちらも艶なしのヘアライン仕上げとする一方で、形状の異なるプッシュボタンは、どちらもモデルも艶のあるポリッシュ仕上げとしている。

次は搭載ムーブメント。IWCのタイムゾーナーが搭載するムーブメントは、自社製のキャリバー89760。12時位置にアワーカウンターとミニッツカウンターが同軸上に組み合わされた縦2つ目のフライバック・クロノグラフだ。対するジャガー・ルクルトのポラリスが搭載するのは、やはり自社製のキャリバー752。3時位置に30分積算計、9時位置に12時間積算計を装備する横2つ目のクロノグラフだ。

IWCのタイムゾーナー(左)はスクリューバック式の裏蓋。ジャガー・ルクルトのポラリス(右)は、シースルーケースバックで、ビス留め式を採用する。

どちらもクロノグラフの高級仕様であるコラムホイールを搭載するが、IWCのタイムゾーナーが水平クラッチ式を採用するのに対し、ジャガー・ルクルトのポラリスは、垂直クラッチを採用している。IWCのキャリバー89760のスペックは、パワーリザーブ68時間、毎時2万8800振動、パーツ数323個、39石、直径30㎜、厚さ8.4㎜。ジャガー・ルクルトのキャリバー752のスペックは、パワーリザーブ65時間、毎時2万8800振動、パーツ数274個、37石、直径25.6㎜、厚さ5.7㎜。

IWCの89000シリーズ(左)は、同社のクロノグラフ・キャリバーの中でもペラトン・システムなどを装備する上級機。ジャガー・ルクルトのキャリバー752(右)は、同社お約束の精度検査、1000時間コントロールをパスしている。

この2本を比較してみると、一番異なっている点は、ワールドタイムの操作方法である。IWCのタイムゾーナーは、世界各国の都市名が回転ベゼルに記載されており、この回転ベゼルは誤作動を防止するため、上から押し付けながらでないと回すことができない。一方、ジャガー・ルクルトのポラリスは、10時位置のリューズを回して操作するインナーベゼル式となっている。それぞれの個性が「回し方」に表れた2本のクロノグラフ&ワールドタイムモデル。実力派の専業ブランドによるハイレベルなライバル関係は、見応え十分な内容だ。

左)IWC「パイロットウォッチ・タイムゾーナー・クロノグラフ」。自動巻き。SSケース。レザーストラップ。167万7500円。国内在庫わずか。 右)ジャガー・ルクルト「ポラリス・クロノグラフ WT」。自動巻き。チタンケース。アリゲーターストラップ。203万2800円。

 

問い合わせ:

IWC

ジャガー・ルクルト

(文・構成/市塚忠義)

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