2026.07.13

もう止められないタグ・ホイヤー「モナコ」の革新性

12気筒エンジンのムーブメントを搭載!?

「タグ・ホイヤー モナコ スピード12」。WBW2180.FT8133。自動巻き。ケース幅40㎜。グレード5チタンケース。テキスタイルパターンがエンボス加工されたブラックラバーストラップ。30m防水。1501万5000円。2026年12月発売予定。

昨年2025年にはスプリットセコンド・クロノグラフを搭載したモデル、そして今年2026年には、全く新しいクロノグラフの制御システムである「コンプライアント クロノグラフ機構」を採用したモデルを誕生させ、改めてその「革新体質」を証明したタグ・ホイヤーの大傑作「モナコ」。

2作の興奮冷めやらず、また驚愕のモナコが発表された。それが写真の「タグ・ホイヤー モナコ スピード12」である。見るから衝撃的な顔つきに、どこから整理すれば良いのか迷ってしまう人も多いだろう。

しかし、よく見てみると、この時計には針が1本しかない。針外周のミニッツトラックとの関係性から、この1本針が60分で1周する分針であることはお分かりいただけるだろう。では時針は? その役割を果たしているのが、ダイアル外周に取り付けられた12個の円形パーツである。

この筒状の円形パーツの側面には、アワーインデックスの役割を果たす数字が2箇所に刻まれている。分針が12時位置に到達すると連動する2つの円形パーツがクルッと90度回転。1つは数字が刻まれている面が正面を向きアワーを表示、同時に今まで数字が正面に見えていた左隣の円形パーツも回転して、今まで数字が見えていた面が隠れるという仕組みになっている。

この変形型のジャンピングアワーに、コアな時計ファンであれば思い当たる1本があるだろう。ルイ・ヴィトンの傑作「スピン・タイム」である。そう、このモデルはルイ・ヴィトンのタイムピースを手がける工房「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」とのコラボレーションによって誕生したものなのだ。

「スピン・タイム」ムーブメントの象徴である回転する12個の円形パーツには、モナコが受け継いできたモータースポーツとの密接な関係性が巧みに表現されている。その姿はまさに、かつてのF1エンジンを思わせる12気筒エンジンのピストン(現在のF1エンジンはV型6気筒)。タグ・ホイヤーらしい、なんともユニークな発想ではないか。

この12個の回転式ピストンに支えられ、ムーブメントとダイアルがまるで宙に浮かんでいるかのように見えるのも面白い(実際には、ケース四隅から伸びるDLCコーティングを施した4本のオープンワークアーチによって固定)。

また風防にはドーム型のサファイヤクリスタルを採用しているが、その外側にセットされた角形のベゼルにも、透明なサファイアクリスタルを採用。あらゆる角度から12個のピストンのダイナミックな動きを楽しむことができるようになっている。

他にも、エンジンカバーを思わせるストライプの溝をオープンワーク仕様のダイアル中央部に取り入れていたり、ダッシュボード計器を彷彿させるスケルトン仕様の分針を採用するなど、タグ・ホイヤーならではのモータースピリットが満載。またケース素材は軽量なグレード5チタン製で、複雑なコンプリケーションモデルでありながら実用性が極めて高い点にも注目したい。

ちなみにこのモデルが搭載する自動巻きムーブメント「キャリバーTH84-00」は、「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」の創設者でありマスター・ウォッチメーカーでもあるミシェル・ナバス氏とエンリコ・バルバシーニ氏が、このモデルのために「スピン・タイム」機構を再解釈して考案したものだ。

ルイ・ヴィトンのタンブールに搭載された「スピン・タイム」は、丸型ケースで見事な個性を発揮したが、タグ・ホイヤーの角型ケースのモナコにおいて、「スピン・タイム」の唯一無二のメカニズムが、これほど見事にハマるとは想像すらできなかった。

新作「タグ・ホイヤー モナコ スピード12」は、2026年6月4日から7日までに開催された「フォーミュラ1® ルイ・ヴィトン グランプリ・ドゥ・モナコ 2026」で初めてお披露目となったモデルだが、その生産本数は世界限定50本のみ。この衝撃的なモナコを手にできるオーナーは極めて少ないが、それ以上に世界に大きなインパクトを与えたことは、間違いない。

問い合わせ/タグ・ホイヤー公式サイト

文・構成/市塚忠義