PANERAIの海

イタリア海軍との関係により同社の事業は、まず水中用計測器の開発で花開き、時計製作へと至った。
潜水士のミッション・ウォッチとの出自こそ、パネライの時計とブランドのアイデンティティ。
その技術とデザインとを培った海との深い関わりを、パネライは今も大切にする。

イタリア海軍向けの水中用コンパス
イタリア海軍向けにパネライが製作した様々な計測器を代表するのが、この水中用コンパス。プレキシガラス製のドームの内部にオイルを充填し、ラジオミールで方位を指したコンパスを封入している。バックルの形状は今とほぼ同じ。

海軍からヨットへ時代を経ても変わらぬ親密な海との関わり

海で生まれ海が鍛えた機能と普遍のデザイン

イタリア海軍のミッション・ウォッチとして誕生したパネライの腕時計の機能とデザインは、海中で使われることを前提として開発された。それらが生まれた1930〜40年代当時はイタリア合理主義と呼ばれるモダニズム建築運動のさなか。建物の機能性と合理性とを追求するこの思想は、パネライの腕時計にも強く影響を及ぼした。大きく屈強なケースや1950年代に開発された特徴的なリューズプロテクターは防水性を高めるため。4方向アラビア数字のダイヤルは海中での時の読み取りを容易にし、そのインデックスをくり抜いたサンドイッチ構造は、下に敷く夜光塗料の発光をより多くダイヤルに届ける。今もパネライを特徴付けるディテールは、海中でのミッションをサポートするための機能の追求から創出された。
海で生まれ、海で鍛えられたパネライは、民生用となってからもその出自を大切に受け継いでいる。多くの現行モデルに、ミッション・ウォッチ時代の様々なデザインを引用しているのが、その証。それらが決して色褪せないのは、海中でのミッションをサポートする機能美を備えているから。モダン・デザイン論において機能美とは、普遍だと説いている。
さらに今のパネライは、時計以外でも海との関係性を深めている。2005年から主催する「パネライ クラシックヨット チャレンジ」は、その象徴の1つ。地中海で始まったレースは、その後、米国北東部、英国へと戦場を広げ、2012年には大西洋横断レース「トランサットクラシック」まで組み入れられるに至り、現在ではクラシックヨット界の最も重要な大会となっている。また主催するだけに留まらず、1936年製のヨットを修復し、自らも参戦。さらに2017年には国際ヨットレース「アメリカズカップ」の公式パートナーとなり、アメリカチームと日本チームとを時計でサポートしている。
パネライは、自身のルーツが海にあることを決して忘れない。

海を疾走する美しき木製クラシックヨット
2006年、パネライはカリブ海で朽ちかけていたヨットを見付けた。1936年製のこの木造ヨット「アイリーン」を4万時間以上かけて修復。主催する「パネライ クラシックヨット チャレンジ」に2010年から参戦し、優雅な姿を披露した。

1936年に完成した自社製初の腕時計
カリフォルニア・ダイヤルのこれがオリジナル。1936年にパネライが作ったプロトタイプの腕時計だ。ムーブメントはロレックス製で、当時の現物がカリフォルニアで発見されたことにちなんだ愛称だとか。

ラグ形状を見直した1940年代製ラジオミール
ワイヤー式から屈強なソリッドラグへと改良された、1940年代製のラジオミール。今の「ラジオミール1940」は、これが規範。サンドイッチ構造のダイヤルも、現行モデルに継承される。時分針の先端は、現行よりもかなり鋭くシャープな印象。

リューズプロテクター装備でより屈強に進化
パネライのアイコンの1つリューズプロテクターは、1950年代に開発。これはその最初期のモデル。夜光塗料も放射性物質を含まないルミノール(イノックス)に改められている。現行の「ルミノール1950」は、このモデルをモチーフとする。

初の回転ベゼル装備はエジプト海軍御用達
イタリア海軍に加え、パネライはエジプト海軍にも時計を納入していた。これはその1つで、1950年代の製作。リューズプロテクターとダイヤルはそのままだが、ケースは丸型として回転ベゼルを装備。ムーブはアンジュラス製の8日巻き。

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