PATEK PHILIPPEの工房

多くの時計メゾンが掲げる「伝統と革新」との言葉が、最も相応しいのはパテック フィリップだ。100を超える技術的特許取得が革新の証。そして工房では、伝統的手仕事が息づいている。いかに小さな歯車であっても手で面取りし、入念に磨き上げ、世界最高の時計を生み出している。

あらゆる時計製造の技を網羅
広大な建物の中では、多くの技術者が伝統的な時計製作に真摯に向き合っている。本社工場のほかに、ケースやダイヤルの製造工場、ポリッシュなどの仕上げ・装飾工場なども傘下に置く。

①引き出しの中には古い懐中時計のパーツが、整然と並ぶ。その下の容器は、微細な部品の保管用。

②修復部門の責任者フランク・ペルネ氏。19世紀当時の技術を体得。あらゆる時計を修復する。
③150年前からの部品を保管するキャビネット。これ自体も時代ものだ。
④19世紀~20世紀初頭の手動機械が現役で働く。

手仕事と先進技術とが高次元に融合を果たし世界最高の時計を生む

メゾンの技術研鑽のすべてがここに息づく

ジュネーブ郊外のプラレワットに、1996年に完成した本社工房は、他社と比べても広大な規模を誇っている。そしてそこで働く技術者の数も、圧倒的に多い。パテック フィリップの時計製作には、この広さと人の数が必要なのだという。何故なら、ムーブメントのパーツすべてを、人の手で磨き上げ、装飾仕上げしているからだ。
直径数㎜の微細な歯車の歯さえ、手作業で面取りし、歯の間は細く削った木のディスクで鏡面に仕上げる。近年、他社では自動化も進む地板やブリッジの面取りと仕上げ、ペルラージュやコート・ド・ジュネーブといった装飾でも手仕事を頑なに守っている。仕上げ部門の作業は、19世紀の工房とほぼ変わらない。
一方、工作機械エリアに足を踏み入れると、時代は現代に飛ぶ。実に400台以上の最新鋭の精密工作機械が、稼働しているのだ。パーツ製造の段階での加工精度を追求し、そこにさらに手仕上げを加えることで、美観をより増し、ムーブメントの性能・品質を向上させているのである。ここでは伝統的な手仕事と先進の工作機械加工とが、矛盾することなく共存する。
また工房の一角には、修復部門も置く。ここでは150年以上前の手動旋盤が今も現役。古いキャビネットにぎっしり並ぶ引き出しには、やはり150年以上前からの部品が大切に保管され、これまで製作したほぼすべての時計の修復を可能としている。
工房には、創業から現代まで続く技術の研鑽のすべてが息づき、未来へと伝えられていく。

完璧に仕上がった部品を慎重に1つに統合
手仕上げされた各部品は、ご覧のように輝くような美観を備える。
それらを組み立てる職人には傷つけないようにより慎重な作業が要求される。ピンセットの先は、地板やブリッジに触れてはならない。

装飾仕上げも伝統的な工具と手業で
ブリッジのコート・ド・ジュネーブは、回転する柘植の円盤を押し当てながらスライドさせ、一筋ずつ模様を施していく。こうして出来あがった装飾は、指で触れても凹凸をほとんど感じないほど繊細。

パテック フィリップのハンドクラフト

ユニークピースや少量の限定モデルの、ケースやダイヤル製造に駆使された多様な工芸技巧は、時計を芸術品の域まで高め、新たな価値を創出する。

特別な時計のための技術伝承にも尽力
金線で模様の外枠を囲い、エナメルを流すクロワゾネの作業。多様な工芸技術で時計に特別な美しさを与えてきたパテッ
ク フィリップは、その技術伝承に尽力する庇護者でもある。

5077P
木象嵌による虎をダイヤルに用いた。姿はもちろん、毛並みやひげまで忠実に再現され、細密画のようだが、使われるのは、すべて木だ。

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彫金が施された懐中時計のフレームにはめ込まれた隼のプレートは、様々な色の木をカットして組み合わせていく木象嵌の技術で作られている。

5089G
クロワゾネ製ダイヤルの、特別なカラトラバ。翼のひとつひとつの羽根を作り上げるため超極細の金線を用い、実に繊細な技巧が駆使された。

5720
全面にジェムセッティングされたノーチラスに、カラフルな鳳凰が一層華やぐ。この鳳凰はクロワゾネと、その研ぎ出しで丁寧に形作られた。

 

 

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