2018.11.01

【シチズンの工房へ行ってきた!!】ピンポイントで狙いを定める正確無比な注油マシン

オイルの量と種類を巧みに使い分け

機械式ムーブメントの各パーツが滑らかに動くためには、その役割に適したオイルが欠かせない。
重要な注油工程も製造ラインに組み込み、自動化。適材適所のオイルを最適な量で注す。

手組みの動きをなぞらえ多くの工程の自動化を実現

機械式ムーブメントには不可欠なオイルは、ただ注せばいいというわけではない。量の調整が、極めて重要となる。量によって、歩度が大きく変わってしまうからだ。適切な量を正確に注して初めて、時計は高精度となる。さらに歯車の軸受けとなる穴石に注すオイルと、脱進機に用いるオイルは種類が異なる。その注油も、シチズンの組み立てラインには組み込まれ、正しい位置に最適な量で、オイルを使い分けて自動注油している。自動注油マシンは、スイスでも多くのメーカーが採用している。常に一定の量を注す能力は、マシンの方が優れているからだ。

適量を吸い取り正確な位置に注す
Cal.90系で使われるオイル。容器中央の細い管から、その上部にある注油マシンがまず適量を吸い取り、ライン上にあるムーブメントの適切な場所に、自動で注油する。人が注油するよりも高度に均一化でき、精度と品質とが安定する。

 

この注油も含め、一部の検査・調整を除いてほぼすべての組み立て工程を自動化できたのは、キャリバー82系の設計によるところも大きい。誕生から40年以上を経ている長寿命機。より多くの人に機械式を届けたいとの想いを込め、大量生産しやすい設計になっているのだ。開発時より、自動化は想定して設計していたが、それを自動化できたのは、シチズンとシチズン時計マニュファクチャリングとが連携して、製造ラインを構築・改良してきたから。

ラインを見ると、随所になるほどと手を打つ、創意工夫が見つかる。例えば、ブリッジの設置。地板にセットされたパーツは固定されておらず、それらの軸は垂直を保っていない。そのブリッジに設けた各軸の穴石の位置に、いかにして正確に自動で注し込むか?その答えは、手組みにあった。手組みの技術を試行錯誤の上、装置化することで、それぞれの穴石へ軸先を誘導する手組みのやり方を機械でなぞらえたのだ。前述したアンクル設置時のガンギ車との正確なかみ合わせも、同様のやり方で自動化を実現した。

機械式ムーブメントの手組みの経験が長く、その技術に長けていなければ、それを自動化する創意は生まれない。シチズンは高度な自動化ラインの構築で、機械式の文化を未来につなげる。

 

顕微鏡による精密な目視検査も実施
製造ラインには、顕微鏡を使った目視検査の工程も組み込まれている。アンクルの爪石とガンギ車の当たり具合、テンプの軸受けの注油など特に重要な部分では、人の目が頼りになる。

 

3方向から吸い上げ、日付ディスクを設置
Cal.90系のカレンダーディスク組み込み工程。3つのノズルを使ってセッティングが行われている。全体に印字された日付目盛りを傷付けず、薄いリング状のディスクを歪ませない工夫だ。

 

映像解析で、不良を決して見逃さない
組み込まれたカレンダー機構は自動で早送りし、その映像をコンピューターで解析。不具合がないかをチェックする。その右側には、天真の軸受けを映像で検査するモニターが見える。

 

3本同時にすべて均一にネジ留め
Cal.90系の自動巻きローターの組み込み。組み立てラインの、ほぼ最終工程となる。軸受けにはボールベアリングが使われ、そこにローターを留める3 つのビスを、すべて同時に締める。

3種の暦と24時間表示を見やすくダイヤルに集約
シチズンコレクション
NB2020-54A
上位機のCal.9170を搭載。日付窓に加え、左右のインダイヤルで月と曜日を示すトリプルカレンダーで、6時位置には暦調整時に便利な、24時間表示が備わる。シルバーの文字盤と青針の組み合わせが、見やすい。自動巻き。径41㎜。SSケース&ブレスレット。10万円。

ダイヤルの装飾にも凝り高級感と力強さを高める
シチズンコレクション
NB2020-54E
Cal.9170搭載のブラック文字盤仕様は、シルバーの針との組み合わせに。どれもダイヤルの中央には放射状の装飾が施され、力強い印象。とりわけこの黒文字盤は、精悍。リューズガードも、頼もしい。自動巻き。径41㎜。SSケース&ブレスレット。10万円。

ゴールドカラーをまといよりエレガントに
シチズンコレクション
NB2024-02A
ゴールドカラーのケースとブラウンのストラップとで、クラシカル・エレガントに装う。ドーフィン型の針と植字インデックスは、ファセットカットし、造作にも凝った。外装も機械も価格以上の価値を持つ。自動巻き。径41㎜。SSケース。ワニ革ストラップ。10万円。

<strong>3種の暦と24時間表示を見やすくダイヤルに集約</strong><br />シチズンコレクション<br />NB2020-54A<br />上位機のCal.9170を搭載。日付窓に加え、左右のインダイヤルで月と曜日を示すトリプルカレンダーで、6時位置には暦調整時に便利な、24時間表示が備わる。シルバーの文字盤と青針の組み合わせが、見やすい。自動巻き。径41㎜。SSケース&ブレスレット。10万円。
<strong>ダイヤルの装飾にも凝り高級感と力強さを高める</strong><br />シチズンコレクション<br />NB2020-54E<br />Cal.9170搭載のブラック文字盤仕様は、シルバーの針との組み合わせに。どれもダイヤルの中央には放射状の装飾が施され、力強い印象。とりわけこの黒文字盤は、精悍。リューズガードも、頼もしい。自動巻き。径41㎜。SSケース&ブレスレット。10万円。
<strong>ゴールドカラーをまといよりエレガントに</strong><br />シチズンコレクション<br />NB2024-02A<br />ゴールドカラーのケースとブラウンのストラップとで、クラシカル・エレガントに装う。ドーフィン型の針と植字インデックスは、ファセットカットし、造作にも凝った。外装も機械も価格以上の価値を持つ。自動巻き。径41㎜。SSケース。ワニ革ストラップ。10万円。

 

 

[時計Begin 2018 AUTUMNの記事を再構成]
写真/岸田克法 文/髙木教雄 構成/市塚忠義