【英国発はこんなにスゴイ！】自動巻き腕時計

自動巻き腕時計

ジョン・ハーウッドが初のローター式自動巻き腕時計を考案

ローターの回転でゼンマイを自動的に巻き上げる自動巻き。腕時計で世界初となるその機構は、1920年代に英国人時計師が発案し、フォルティス社との共同で製品化された。

1926年のバーゼルワールドでフォルティス社が発表した「ハーウッド」のプロトタイプ。半回転ローター自動巻きに加え、独自のベゼル針合わせ機構を備えていた。

腕時計でこそ真価を発揮する自動巻き機構

懐中時計では18世紀にすでに完成していた自動巻き。だが、この機構が真の効果を発揮するのは、胸もとにしまっておく懐中型ではなく、腕に装着することでローターの回転効率が高まるリスト型が登場してからのこと。腕時計で初めてこれを成し遂げたのが、英国の時計師ジョン・ハーウッドだ。

ハーウッドが自動巻き機構の研究に着手したのは1910年代。同じ頃、他の時計メーカーもまた、さまざまな自動巻き機構の開発に取り組んでいた。そんな折、ハーウッドはローターを使って時計を巻き上げるシステムを考案し、’24年に特許を取得する。このローター機構は、現在のような高効率な全回転タイプではなく、ムーブ中心に回転錘を取り付けるセンターローター式だった。

ハーウッドはこのアイデアを提げてともに具現化してくれる会社を探したところ、当時気鋭のフォルティス社が手を挙げた。そして’26年のバーゼルワールドにて、世界初の自動巻き腕時計「ハーウッド」が発表されたのである。

発案した英国人はこの人

自動巻きの先駆者として名を残す異色のウォッチメーカー

ジョン・ハーウッド（John Harwood）

1893年、英国ランカシャー州ボルトンで生まれたハーウッド。第１次世界大戦中は軍の兵器部門に所属し、自動小銃の開発も手がけている。自動巻き時計の完成後は、自らの会社「ハーウッド・セルフワインディング・ウォッチ・カンパニー」を設立し、北米などにも販路を伸ばしたが、大恐慌の煽りを受けて1931年に倒産。’57年には業績が称えられ、英国時計協会からゴールドメダルが授与された。

[時計Begin 2018 SUMMERの記事を再構成]
文／岡崎隆奈　イラスト／WADE LTD