2019.05.28

実直に歩む良心「オリエントスター」の自社ムーブはコスパ最高!【国産時計が面白い】

熟成自社ムーブでコストパフォーマンス◎

地道に機械式を休まず作り続けて実現

クォーツ全盛時も機械式にこだわり、今なお旗艦コレクションでは機械式のみを展開。ぐっと抑えられた価格といい、オリエントスターはまさに国産時計界の良心的存在と言える。

 

伝統の46系搭載のORIENT STAR オリエントスターの顔

オリエントスター
メカニカルムーンフェイズ
RK-AM0001S

オリエントスターの特徴的なパワーリザーブ表示に加え、同ブランドの機械式では初の月齢表示を搭載し、発売以来人気のモデル。古典機構をスタイリッシュにモダナイズしたフェイスデザインが素晴らしい。風防には両球面サファイアクリスタルを採用。自動巻き。径41㎜。SSケース。本ワニ革ストラップ。5 気圧防水。シースルーバック。17万円。お問い合わせ先:オリエントお客様相談室

46系ムーブの進化系「46系F7」に月齢表示機構を付加。ローターと受けで異なる目付け模様を施すなど、仕上げもじつに美しい。

 

昭和46年から作り続ける46系ムーブメント

46系ムーブメントの"46"(ヨンロク)は、昭和46年(1971年)に開発された(写真上)ことに因む。それまでの紳士用ムーブは5 振動が主流だったのに対し、6 振動を採用して精度と耐久性を向上させた。非常に信頼性のあるムーブで、現在ではパワーリザーブ表示に加え、ワールドタイマー、GMT、月齢、両面スケルトンなども登場しているが、すべて安定した精度を保っている。

 

針の角度にまでこだわりが
針は伸ばせば伸ばすほど難易度が上がるものだが、今作の分針は分目盛りまでしっかり届く長さに。その先端を₁ 本₁ 本手作業で絶妙にカーブさせたことで、視認性も非常に高い。

 

自社製&月齢付きムーブを10万円台で入手できる幸せ!

’70年〜’80年代のクォーツブームの最中も、地道に機械式を作り続けていたことで知られるオリエント。じつはこれには、他の国産メーカーに先駆けて海外輸出に力を注いでいたことも関係する。当時の主要輸出先だった中国、中近東、南米は、クォーツに欠かせない電池の供給が不安定。そこで他社がクォーツに注力する中でも、機械式を作る必要があったのだ。

看板コレクション「オリエントスター」の主要モデルが搭載する“46系ムーブメント”はこうした時代に産み落とされた伝統のムーブ。長年ブラッシュアップを重ねてきただけに、信頼性の高い自社製ムーブが欲しい人にはうってつけの存在と言えるだろう。しかも価格が非常にこなれている!

中でも「メカニカルムーンフェイズ」は、オリエントスターの機械式初の月齢表示を搭載し、9時位置では46系の心臓部を美しいオープンワークで見せつけるツウ好みの仕上がり。細部までもとても10万円台とは思えない凝りようだ。

 

ムーブ前入れで薄型化も!

表からムーブをセットする独特の構造を採用した「スリムスケルトン」。これによりケース裏に向かってテーパードする薄型ケース(厚さ10.8㎜)を叶えた。搭載する新開発の46系F7-50は50時間以上のパワーリザーブ。自動巻き。径41㎜。SSケース&ブレス。シースルーバック。15万円。

[時計Begin 2019 SPRINGの記事を再構成]

文/吉田 巌