2020.11.09

ああ、愛おしのパティナ[緑青]ブロンズ時計なぜ人気?

世界中から「俺のブロンズ」が大集合!
ああ、愛おしのパティナ[緑青 ろくしょう

化学的に不安定なブロンズは、酸素や水、塩分と反応し皮膜を形成する。
まず黒ずみ、やがて緑青(ろくしょう)を浮かべる変化を称してパティナ。
使い手によってパィナの具合は異なり、自分色に少しずつ染まっていく。
SNS上には、ご覧のように、千差万別なパティナ自慢があふれている。

ただいま絶賛"個"育て中!

錆びやすさを魅力に転換しオールドマテリアル復権!

今ごろジェラルド・ジェンタは、天国でほくそえんでいるかもしれない。時計デザインを変えた天才は、ブロンズもいち早く自身のブランドの時計に採用していた。1988年に発表された「ジェフィカ」である。一説によればケースの反射を嫌うハンターのために、経年変化でマットになるブロンズを用いたのだとか。錆びやすいというブロンズの弱点を、長所に転換したのだ。しかし当時ジェフィカは、さほど注目されることはなかった。

しかし時代は、ようやく天才の感性に追いついた。経年変化のしやすさを長所とし、自分だけの色に育てられる魅力をアピールした結果、ブロンズケースは時計界のトレンドとなった。またSNSの普及もブロンズ人気を後押しした。個々に異なるパティナを浮かべたブロンズ時計は、お金では手に入らない唯一無二の存在であり、〝映える〟のだ。

パティナとは、すなわち緑青。ブロンズの主原料である銅の塩基性酸化物で、薄い皮膜の状態では黒く見え、やがて厚みを増すと青緑色となる。黒ずみ程度の段階では他所に色移りしないが、緑青は古くから顔料に用いられ、青緑色にまでなると、服やストラップを変色させる。しかしパティナをこよなく愛する猛者たちは、それを厭わず、緑色に染まったケースを自慢げにSNSにアップしている。ちなみに緑青は、内部まで酸化が進むのを防ぐ役割を持つ。紀元前の青銅器が形を残したまま出土するのは、緑青のおかげだ。

ブロンズケースの登場で〝時計は育てる〟という新たな魅力を手に入れた。

ブロンズ時計なぜ人気?

自分だけの色に育てられる!
②ゴージャスなのに嫌味がない
③価格が以前よりこなれてきた

ブロンズ人気を支える一番のポイントは、やはり経年変化が楽しめること。オーナーの使用環境で変化は異なり、潮風や海水にさらされる使い方だと、あっという間に緑青は厚くなる。また買った当初はYGやPGに似た黄金色を浮かべて豪華な印象だが、それもやがて色変わりして嫌みがない。高額モデルにしかなったブロンズケースは、エントリークラスにも登場。自分だけの1 本に育てる楽しみがグッと身近になったことも、ブロンズ時計人気を牽引する。

 

[時計Begin 2020 autumnの記事を再構成]