2022.03.20

航空用回転計算尺を搭載したパイロットウォッチの金字塔 ブライトリング「ナビタイマー」【ロングセラー変遷記】

パイロットに必須の回転計算尺を搭載した斬新な姿で、クロノグラフに革命をもたらしたブライトリングの「ナビタイマー」。このモデルの半世紀にわたる変遷を追う。

 

1952年

オリジナルモデル
Original model

飛行に有用な装備をもつ 航空協会公式ウォッチ

速度、飛行時間、燃料などの計算が可能な航空用回転計算尺を搭載して1952年に誕生。インダイヤルともブラックで統一した横並び3カウンターの文字盤を備え、内部には手巻きのヴィーナス178を搭載する。国際パイロット協会(AOPA)の公式時計。

 

“計器”を”デザイン”にした大型で精悍な名作航空時計

ナビタイマーが採用する航空用回転計算尺は、米海軍の「E6Bフライトコンピュータ」に基づいて開発されたものである。これはアルミやプラスティック製の回転スケールで、フライトプランの作成、飛行中の計算に今も使われるアナログ計器。ブライトリングはこれをクロノグラフに組み合わせ、対地速度、到着時間、消費燃料など多くの計算が片手操作で行える画期的な時計を作り上げた。1952年に誕生した初代は国際パイロット協会の公式時計に認定されるとともに、クロノグラフの潜在能力を飛躍的に広げたのだ。

その10年後、ナビタイマーの舞台は宇宙へと展開される。有人宇宙飛行を目指す「マーキュリー計画」に参加したスコット・カーペンターは、時間表示のスペシャルなナビタイマーとともに1962年5月24日宇宙へ飛びたった。その後、縦3つ目の「オールド・ナビタイマー」を経て、91年には搭載ムーブをキャリバーに替え、2000年にはクロノメーター化も果たしている。

文字盤が初代の横3つ目に原点回帰するのは2003年。同時にモデル名も「ナビタイマー」に戻る。そして10年、ついにナビタイマーは限定モデルで自社ムーブ搭載モデルを発表。伝統的かつ先進的な構造、各機構のユニット化でメンテにも優れた本作は、名実ともにパイロットクロノの最高峰に。

ナビタイマーの回転計算尺が実用的なのはもちろんだが、最大の魅力はいかにも計器然としたダイヤルのデザイン。その雄々しい姿が、ファンの心を掴んで離さないのだ。

 

1962年

ナビタイマー・コスモノート

宇宙空間でも昼夜の判別が容易な24時間表示のナビタイマー・スペシャルバージョン。米海軍パイロットであり宇宙飛行士のS.カーペンター少佐のミッション遂行のために制作された。スイス製クロノグラフとして初めて宇宙飛行を成し遂げた。

変更点
視認性に優れた24時間表示

手巻きヴィーナス178をべースに24時間表示用に歯車機構を改良したものを搭載。同年、ナビタイマー・コスモノートRef.809という名で市販化。1969年には自動巻きクロノグラフ・ムーブメント搭載モデルも誕生し、広がりを見せる。

1991年

キャリバー13搭載モデル

現在もブライトリングの基幹ムーブとなる「キャリバー13」をオールド・ナビタイマー に初採用。バルジュー7750をベースに、テンプの片重りを調整するなどチューンナップを施した。これに伴い、より高精度が求められるクロノメーター化を果たした。

変更点
機能と装備をバージョンアップ

縦3つ目は1986年のオールド・ナビタイマーから。サファイアクリスタル風防の採用、防水性の向上、ケース径拡大(41㎜)などフルリニューアル。また、現在まで続くテールにロゴを象った秒針もこのとき初採用されている。

2003年

初代に原点回帰の横並び

バルジュー7753をベースとする「キャリバーB23」を搭載したことで、文字盤のスタイルが初代ナビタイマーと同じ横並びの3カウンターに。また、モデル名からも”オールド”がとれて、ふたたび「ナビタイマー」となった。4-5時位置に日付表示。

変更点
ディテールもマイナーチェンジ

搭載キャリバーの変更により、文字盤の配列が縦3つ目からふたたび横3つ目へ。ただし、初代とは異なる反転色のインダイヤルを採用する。ケース径は41㎜から41.8㎜へとわずかに拡大し、ベゼルの刻み模様も深くなった。

2010年

自社製キャリバー01搭載

2009年にブランド初の自社製クロノグラフキャリバー「01」を開発。翌年、これを搭 載した「ナビタイマー 01」が登場する。コラムホイール、垂直クラッチ、可動式リセッ トハンマーを擁するモダンな設計により、機能性を大幅にアップさせている。

変更点
よりダイナミックな43㎜サイズ

基本的には前作のデザインを踏襲している。その一方でケース径を43㎜に拡大させ、いっそう見栄えのするダイナミックなスタイルへと進化した。翌年からは、レギュラーモデルにもキャリバー01が搭載された。

現行モデル
2018年

実用性に優れた最新モデル

現行の「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43」。搭載する自社製Cal.01は、クロノグラフ機構をユニット化した構造となるため、メンテナンス性にも優れる。自動巻き。径43㎜。SSケース&ブレスレット。106万7000円。
問い合わせ:ブライトリング・ジャパン

変更点
クロノグラフの完成デザイン

航空用計算尺、横並び3カウンターといった伝統意匠を継承しつつ、時代とともに機能性を進化。文字盤12時位置に取り入れたBロゴを除き、2003年以降大幅な変更がないことからも、すでに完成されたデザインといえる。

 

[時計Begin 2022 WINTERの記事を再構成]
文/岡崎隆奈 構成/市塚忠義