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2022.08.22
ザ・ファーストモデル グランドセイコー「初代グランドセイコー」 世界と戦うために生まれた、元祖二刀流?
グランドセイコーの伝説は、この1本から始まった
セイコーの前に「Grand」をつけ、1960年に誕生した初代グランドセイコー。では、それまでの時計はGrand(偉大)では、なかったのか。そんなはずはない。1956年マーベル、1958年ロードマーベル、1959年クラウン。セイコーはグランドセイコー以前から、精度を競う国内コンクールで上位を独占するモデルを、次々と世に送り出している。更なる高みを目指した理由は、果たして。それは、1961年に腕時計の輸入自由化が控えていたからである。
初代グランドセイコーのキャッチフレーズは「世界の最高級品へ挑戦する国産最高級品」。国内では、敵なし。しかし、世界で戦うには圧倒的な精度を誇るスイスの時計軍団に打ち勝つ必要があったのだ。「精度競争」といっても、今どきピンとこないかもしれない。現代において時間が合っていなければ、その時計は「電池が切れている」、そして止まっているという認識になるだろう。若者は、時間が「くるう」とは考えない。しかし、初代グランドセイコーが誕生した当時、1日24時間を、どれだけ正確に刻めるかに時計ブランドは本気で全力を注いでいた。
1分でも1秒でも、正確な腕時計。その世界標準の最高レベルが、スイスのクロノメーター検定基準である。初代グランドセイコーは、クロノメーター優秀級規格に準拠した国産初のモデル。初代モデルのロゴの下には、「Chronometer」が誇らしげに表示され、歩度証明書も発行している。ここまで言うと、精度だけが初代の強みのように聞こえるが「正確で、見やすく、美しい」ことがグランドセイコーの至上命題。中身に負けない、こだわり抜いた外装面でも、更なるステップアップを果たした。
大型の時分針は丁寧にダイヤカットされ、極めてエレガント。分針は、外周目盛りにピッタリと届くように設計されている。また多面カットを施したバーインデックスは、緩やかにカーブするボンベダイヤルに、丁寧に植字(アプライド)されている。6時位置に刻まれた星形マークは、そのインデックスがゴールド製であることを意味している。見た目も美しく、中身も申し分のない腕時計。現在、セイコーが大谷翔平選手を起用しているから言うわけではないが、初代グランドセイコーは、今から60年ほども前に、正確さと美しさで世界と戦った二刀流であった。
問い合わせ:グランドセイコー
(構成・文/市塚忠義)
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