チューダー、ロンジン、カール F. ブヘラetc. コスパ満点の新作はコレだ！

『時計ライター髙木教雄が解説！　2021年新作時計レポート』Vol.2

髙木教雄（たかぎ・のりお）
1962年生まれ。1990年代半ばから時計を取材対象の1つとし、『時計Begin』をはじめとする時計専門誌やライフスタイル誌で執筆。

腕時計の価値を決める要素は、数多い。メカニズム、外装素材、仕上げ、デザイン、ブランド力、稀少性などなど。その中で何に重きを置くかは個々の好みによるが、装具的なバランスが良いモデルほど満足度が高く、コストパフォーマンスに秀でるといえよう。これからご紹介するモデルは、いずれも価格以上の価値アリ！の秀作ばかり。

チューダー

50万円台で買える、屈強ムーブ搭載＆200m防水の最強クロノ

チューダーを代表する「ブラックベイ」はトータルバランスに優れたコレクションであり、多くの同業他社から「なぜあの価格で出せるのかが不思議」との声をよく聞く。WATCHES & WONDERS GENEVAで発表された新作では、まず「ブラックベイ クロノ」に注目した。ダイバーズ譲りの優れた防水性能はそのままに、ベゼルにタキメーターを刻んだレーシィなたたずまいに、ブラック×ホワイトのパンダダイヤルが実によく似合う。針やインデックスなどのディテールは、チューダーの歴代ダイバーズから、それぞれに抽出して組み合わせ、絶妙な匙加減のヴィンテージ感を創出している。そしてムーブメントは、ブライトリングのCal.B01をベースであることは時計ビギン読者であれば周知の事実であろう。

搭載キャリバーは、COSC認証で耐磁性シリコンバランススプリングを装備。コラムホイールと垂直クラッチ搭載でパワーリザーブは約70時間を誇る。

元来、耐久性が高い同機を、シリコンひげゼンマイによるフリースプラングにモデファイし、耐磁性をも強化。この外装とスペックで、50万円台半ばという価格に、再び他社は驚くであろう。

カール F. ブヘラ

アニュアルカレンダー搭載＆クロノグラフでU100万円！

カール F. ブヘラは、WATCHES & WONDERS GENEVAに先駆け、「ヘリテージ バイコンパックス アニュアル」の新色ブラックを発表した。1950年代モデルに範を取るバイコンパックス（２カウンター）のクロノグラフに、年に一度、３月１日にだけ調整すれば済むアニュアルカレンダーを搭載。同じ機構を持つクロノグラフは他社にもあるが、ビッグデイトの採用は唯一無二。ムーブメントは自社製ではないが、カール F. ブヘラは欧州で名高い高級時計であり、長い販売実績から信頼の高い汎用機とモジュールとを熟知する。実用性の高い複雑機構を組み合わせた上質なクロノグラフは、アンダー100万円とコストパフォーマンスも極めて高い。

ロンジン

とにかく軽い！　名作クロノグラフがなんとチタンケースでU50万円！！

日本で独自に新作を披露したロンジンからも、魅力的なクロノグラフの新作がお目見えした。「ロンジン アヴィゲーション ビッグアイ」のチタンケース仕様である。30分積算計を大型化した“ビッグアイ”は、1930年代モデルからインスピレーションを得て生まれ、レトロな外観で人気が高い。それがチタンで軽量化されたうえ、ダイヤルもペトロールブルーのグラデーションで一層の上質感を得ている。微粒子を散らしたようなダイヤルのグレイン仕上げも、実に仕上がりがいい。ムーブメントは、コラムホイールにシリコン製ひげゼンマイ、66時間パワーリザーブと、申し分のないスペック。これで45万を切った値付けは、かなり戦略的だ。