2022.02.17

時計ライター髙木教雄が解説！　『ＬＶＭＨウォッチウィーク2022 新作時計レポート：ブルガリ編』

髙木教雄（たかぎ・のりお）
1962年生まれ。1990年代半ばから時計を取材対象の1つとし、『時計Begin』をはじめとする時計専門誌やライフスタイル誌で執筆。

1月24日～28日に開催された「LVMHウォッチウィーク2022」。今年で3回目となるこちらのイベントは、世界の時計業界が注目する場であり、歴史ある時計見本市と並ぶ重要なイベントだ。期間中、タグ・ホイヤー、ゼニス、ウブロ、ブルガリの4社が新作を発表。春に開催される「ウォッチズ＆ワンダーズ」に先駆けて開催された、2022年初の時計見本市。各ブランドの傾向と髙木氏が注目する、おススメの3本をご紹介。

ブルガリ：宝飾技術と時計製作技術とが高次元で融合を果たす

その美しさに目を奪われるグランソヌリ

イタリアを代表するハイジュエラーにして、多様な複雑機構を完全自社製造できる技術と設備とを持つウォッチメーカーでもある。そんなブルガリは、LVMH ウォッチウィークで「TIME IS JEWEL─時は宝石」とのテーマを掲げた。それを象徴するモデルの１つが、「オクトローマエメラルドグランソヌリ」である。毎正時から15分ごとに、音で時の訪れを知らせるチャイミング機構グランソヌリを製作できるメーカーは非常に少ない。ましてやこのモデルのように４つのハンマーとゴングとを備え、ウエストミンスターの鐘の音を奏でる超複雑モデルとなると、極めて稀少な存在である。その技術をブルガリは、2000年に傘下に収めたジェラルドジェンタから受け継ぎ、ル・サンティエの工房で研鑽を重ね、コレクションにラインナップしてきた。そんな複雑機構が潜むケースとダイヤルとが、エメラルドとダイヤモンドをまとい、絢爛豪華に装った。宝飾と時計、それぞれに卓越した技術を持つブルガリならではの、まさに傑作である。

直径わずか12.30mmの極小機械式ムーブにみるメゾンの矜持

さらにヘビを宝飾技術で象ったブランドのアイコン「セルペンティ」にも、優れた時計製作技術が注がれた。口を開くと現れる極小の時計のために、専用の機械式ムーブメントを開発したのだ。新開発のCal.BVL100 ピコリッシモの直径は、わずか12.30mmで厚みも2.5mmと薄い。これほどに小さな機械式ムーブメントは、グランソヌリよりも稀少な存在である。香箱は可能な限り大きくし、30時間駆動を実現。テンワは比重の高いホワイトゴールド製とすることで良好な慣性モーメントを得ているため、精度も期待できそうだ。修理が効き、100年以上使える機械式ムーブメントは、こうした高額なハイジュエリーウォッチにこそふさわしい。セルペンティの価値は、より一層高まった。

オープンワーク・ダイヤルは美観のためだけではない「オクトローマブルーカリヨントゥールビヨン」

また３つのゴングとハンマーを有し、それぞれに異なる音色で、時・15分単位・１分単位とを打ち分けるミニッツリピーターカリヨンとトゥールビヨンとを統合した超複雑モデル「オクトローマブルーカリヨントゥールビヨン」は、爽やかなブルーに新装。格子状にオープンワークされたダイヤルから、音色が広がる仕掛けで、長いチャイミングウォッチ製作の経験から、その音色は完璧にチューニングされている。ウォッチメーカー・ブルガリの技術力の高さが知れる１本である。