2022.08.26

使いこなせなくても欲しくなる「プロ用メモリ」の誘惑 【ザ・ファーストモデル 第4回 ブライトリング「ナビタイマー」】

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ザ・ファーストモデル 第4回 ブライトリング「ナビタイマー」

時計好きなら知らない人はいない大傑作、ブラントリングの「ナビタイマー」。ただ残念なことに、この時計が持つ機能を完璧に使いこなせるユーザーは、ほとんどいないだろう。ナビタイマーに備わる計測機能のほとんどは、プロ用に開発されたもの。つまりパイロットのための機能である。プロ用機能とは、どんな用途のためのものなのか。それを理解するには、ブライトリングのもう一つの傑作、クロノマットについて知る必要がある。

1954年製の初代ナビタイマー。ダイヤルにブランドロゴは入っていない。41㎜ケースにバルジュー72を搭載していた。

クロノマットとナビタイマー、時計業界では聞き慣れたモデル名は、どちらも2つの言葉を組み合わせた造語である。クロノマット(Chronograph for mathematicians=数学者用クロノグラフ)は、回転計算尺を備えた初のクロノグラフとして、1941年に誕生。平均速度の計測など、車のドライバーはもちろん、利回り(金融業)や遠隔測定(軍事)でも、その有効性が証明された。航空業界と太いパイプを持っていた3代目ウィリー・ブライトリングは、1952年にアメリカの国際オーナーパイロット協会(AOPA)から会員向けの新しいクロノグラフの製作を打診される。そこで考案したのが、クロノマットの回転計算尺を「航空用」に転換したナビタイマー(Navigation timer=航空時間)である。1954年7月、最初の100本がAOPA会員向けに販売された。

ブライトリング3代目、ウィリー・ブライトリング。父ガストン・ブライトリングが他界した時、彼はまだ14歳であったが、5年後の19歳の時に、会社を率いることになった。

ナビタイマーの登場によって、パイロットたちは、あらゆる航空計算を腕の上で行うことが可能になった。飛行時間、燃費、上昇率・下降率、そしてキロ、マイル、海里の単位変換など。ブライトリングは、プロのためにプロ用の時計を作ることで、成功を収めてきたブランドなのである。プロ用というと非常に入り口が狭いように聞こえるが、1954年当時のAOPA会員数は、約4万人。ウィリー・ブライトリングは、航空業界の未来に勝算を見いだしていたのだろう。

1963年製のナビタイマー、Ref.806。インダイヤルをホワイトにして視認性を高めている。ベゼルの小さなビーズの数は、初期モデルが125個だったのに対し、1960年代に入ると、93個に減少している。

1960年代に入ると、ナビタイマーは更なる進化を遂げる。宇宙飛行士のスコット・カーペンターは、昼夜の区別のつかない宇宙にも対応できるナビタイマーを依頼。一周12時間表示ではなく、24時間表示の宇宙版ナビタイマー、コスモノートが誕生する。スコット・カーペンターは1962年5月24日の搭乗任務で実際に使用している。これを機に、世界中のセレブリティの熱い視線が、ナビタイマーに注がれる。

NASAのマーキュリー計画において、何百人という候補者の中から、7人の宇宙飛行士の1人に選ばれたスコット・カーペンター。彼はオーストラリア空軍のパイロットが腕につけていたナビタイマーを見て驚き、すぐにブライトリングに連絡を取ったという。

彼らを虜にしたのは、ダイヤルに刻まれた複雑な回転計算尺の目盛りの数々。今も変わらぬナビタイマーのアイコンは、壮大な空のロマンをかき立てて、時代を超えて時計ファンを魅了する。

生誕70周年で、バリエーションを拡大した最新の「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43」。自動巻き。径43㎜。SSケース。アリゲーターストラップ。107万2500円。

問い合わせ:ブライトリング・ジャパン

(文・構成/市塚忠義)

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