【CEOに伺った！】ジャケ・ドローが「1000万円以上の時計」しか作らないのはどうしてですか？

来日したジャケ・ドローCEOのアラン・デラムラ氏を直撃取材。2021年に就任したばかりの新CEOは、18世紀天才時計師の歴史を受け継ぐブランドをどこに導こうとしているのか？

アラン・デラムラ／ジャケ・ドローCEO／1964年、スイス生まれ。12年にわたりボーリヴァージュ・パレス ローザンヌでジェネラルマネージャーとしてなど、スイスを中心とした世界中のホテル業界で勤務した後、2001年ブランパンに入社。同社副社長・マーケティング責任者在任時代に打ち出したモノブランドブティックのコンセプト構築などのマーケティング戦略や新作の成功によって売り上げを15倍に拡大させることに貢献した。その業績を買われ、2021年にジャケ・ドローCEOに就任。富裕層をターゲットとした新戦略「ジャケ・ドロー8.0、ディスラプティブ・レガシー」を打ち出す。

創業時の原点に立ち返ったオーダーメイドのラグジュアリー時計が作りたかった

時計Begin：あなたがCEOに就任してからブランドが大きく様変わりしたと伺っています。どのような考えのもとに変革を行っているのですか？

デラムラCEO：わが社が所属するスウォッチ グループとの共同認識のもと進めています。ジャケ・ドローにはブランドの基盤となるレガシーがいくつも受け継がれていますが、他のブランドに比べると多少大人しいイメージです。ですから、こうしたレガシーを大事にしつつも、新しいコンセプトを注入していかなければなりません。今という時代の多様性に対応していくことが必要だと考えています。

時計Begin：具体的にどのようなコンセプト・戦略を考えているのですか？

デラムラCEO：ジャケ・ドローは1738年の創業当時、ヨーロッパや中国の王族や皇族のために時計を製作していました。今その原点に立ち返り、富裕層のための高額時計を作るべきではないかと考え、「ジャケ・ドロー8.0、ディスラプティブ・レガシー」という新戦略を打ち出しました。これまでは100万円から億単位までの時計を製作していましたが、わが社の規模で異なるサービスを提供することは難しい。そこで、今後は完全に1000万円以上の高額時計にターゲットを絞ります。これは店頭に並ぶ商品ではありません。すでに1000万円未満の時計の生産は終了し、今後は製作しない予定です。

時計Begin：店頭に並ばないとすると、どうやって商品をユーザーのもとに届けるのですか？

デラムラCEO：基本的に販売拠点は必要ないと考えています。すべてダイレクトでお客様のお一人おひとりと工房を「フィジタル(PHYSITAL)」を活用して結びます。ラ・ショー・ド・フォンの工房内にカメラを導入し、専用のスタジオを開設しました。オンラインで本国と各国を結ぶことで、顧客の方々は実際に時計を作っているところを見学することができます。

また、「E-ブティック」で顧客と職人・デザイナーがオンラインでミーティングしながら時計を作り上げることが可能です。そして出来上がった商品は、代理店を通してお客様のお手元に直接お届けするのです。

時計Begin：つまり、カスタマイズ可能なオーダーメイドということですね？

デラムラCEO：通常、他社ではエナメルやオートマタは外注となりますが、わが社には彫金・オートマタの専門職人がいますので、それも含めたすべての希望に沿うことができます。さらに、ネット上で針の形や素材といったディテールを自由にカスタマイズすることも可能です。オーダーメイドですので年間の製作本数は50本程度のみ。製作には通常2〜3ヵ月かかります。

時計Begin：実際に商品のサンプルを見ることはできないのですか？

デラムラCEO：日本だけは例外で、銀座のニコラス・G・ハイエックセンターのジャケ・ドロー ブティック銀座で見ていただくことが可能です。そこにサンプルをご用意し、その後、スイス本国とのオンラインのやりとりでご注文していただきます。

時計Begin：今後展開する予定のモデルの特徴を教えてください。

デラムラCEO：デザインはスケルトンモデルをベースに展開していきます。ブランド初のサファイアクリスタルケースを含みます。これはネジを一切使わず、特別なプレスマシンによって接合されています。

また機能性はこれまで通り、トゥールビヨンやオートマタといったコンプリケーションがメインです。

ぜひ一度、銀座のニコラス・G・ハイエックセンターのジャケ・ドローブティックを訪れて、サンプルをご覧になってみてください。

「世界限定各1本」の新作はコチラです！

お問い合わせ：ジャケ・ドローブティック銀座
電話：03-6254-7288

取材・文／岡崎隆奈　構成／ＴＡＹＡ